ヴェルディ人気、ヘンデル人気

handel_water_music_mackerras.jpg長年クラシック音楽に親しんできたものの、歌もの、特にイタリア歌劇については苦手意識をもっていた。齢を重ねるにつれ少しずつではあるが随分と親しめるようになった。それでもドイツもの、せいぜいロシアものというのが精いっぱいで、ラテン系のオペラや歌曲については残念ながら共感が薄く、のめり込んで聴くという機会をほぼ持たなかった。だから、多少、本日の講座でご参加いただいた方々に迎合してしまった感も否めない(笑)。もちろんそんなことなど露ほども感じさせなかったと思うのだが、僕的には何だか不完全燃焼なのである。

ヴェルディは、作品は大衆に受容されない限りまったく価値はないと考え、寸暇を惜しんで働いた。そして、結果常に人気を誇るオペラ作曲家として君臨し続ける。そう、少なくとも壮年期のヴェルディは「国民皆から愛される」流行作曲家にならんと努力し、奔走したのである。「わかってもらって」なんぼ、「必要とされて」なんぼということ。

ヴェルディの音楽には人の「やる気」を鼓舞する勢いと愛がある。物語の内容の中心が「憎悪」や「悲哀」であっても、彼の音楽のもつパワーは底なしに明るく、深く、人間の深層にまで届く力を秘めている。それはイタリア語の歌詞が全く理解できなかったとしても「感じられる音楽」なのである。根底に「愛」があるということだ。

人間の感性について。
歌われている内容がわからないと楽しめないという「歌詞」重要派。一方で、歌の内容がわからなくても音楽が楽しめればそれで良いという「音楽」重視派。オペラひとつとってみてもいろいろな聴き方があるし、いろいろな感じ方がある。それはクラシック音楽に限らずロックやポピュラーものについても同じこと。僕は若い頃から、どういうわけか歌詞の内容をあまり重視してこなかった(というと語弊があ
るが、音楽が格好良ければすべて良しとするタイプなのかな・・・)。しかしながら、「内容が理解できないと楽しめない」という人の気持ちもよくわかる(実際、オペラでも何でも歌われる内容が把握できてより一層理解が深まる場合も多々あるし)。

ヘンデル:
水上の音楽
・第1組曲 ヘ長調 HWV 348
・第2組曲 ニ長調 HWV 349
・第3組曲 ト長調 HWV 350
サー・チャールズ・マッケラス指揮セント・ルークス管弦楽団

「水上の音楽」は人を元気にしてくれる。
同時代に生きたJ.S.バッハの音楽が峻厳で内省的、内側に沈んでゆくタイプであるのに対して、ヘンデルの音楽は正反対、底なしに明るく、深い。バッハの音楽が内向きネクラなのに対してヘンデルのは外向きネアカである。僕の趣味志向からいえば圧倒的にバッハの音楽に軍配が挙がるが、とはいえヘンデルの音楽も捨てがたい。

バッハにとって「大衆の人気を得ること」は必ずしも重要ではなかったのではないだろうか・・・、一方のヘンデルにとっては、ヴェルディ同様「人気音楽家になること」こそが最大の生きがいだったのでは・・・?何だかそんな気がする。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>バッハの音楽が内向きネクラなのに対してヘンデルのは外向きネアカである。
私に言わせれば、人間をネアカ、ネクラで分類すること自体、バブル期以降の20世紀の古色蒼然とした価値観でまったくナンセンス、愚の骨頂(笑)。ちなみに、近年流行っている言葉、「草食系」「肉食系」も一面的な浅はかな物の見方だと思います。
ネアカ族→ヴィバルディ、ヘンデル、テレマン、ハイドン、モーツァルト(?)、リスト、ドヴォルザーク、ヴェルディ、ワーグナー、プロコフィエフ、バルトーク(?)他
ネクラ族→バッハ、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナー(のマニア含む・・・笑)、チャイコフスキー、ショスタコ他
?????果たしてこんな分類をしていいのでしょうか?
ジャズファンからすれば、クラシックファンはみんなネクラ、Jポップのファンからすれば、ジャズファンはみんなネクラ。ラテン系の人からすれば日本人はネクラ。縄文人から見れば、現代人はみんなネクラ。
ヴェルディの話に戻れば、彼はドロドロとした男の権力闘争の題材が本当に好きですよね。では、日本のドロドロとした男の権力闘争の権化である歴史上の人物、例えば源頼朝、足利尊氏、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、彼等を単純にネアカ、ネクラで分類できるのでしょうか?
ネアカであれ!というのは、時の権力者が配下に対して「余計なことは考えるな」という、自分に都合のいい口実に過ぎないのでは・・・。明智光秀のように謀反を起こされてはかなわんですからね(笑)。
大きな歴史の変転期には、「草食系」だのネクラだの、いっさい関係ない!!(旧来の固定観念はむしろ邪魔) 外野の意見は無視して、自分の信じる道を行きましょう(笑)。
>「ありのままの自分」に戻り、「自分らしく」行きよう。
http://classic.opus-3.net/blog/cat49/the-young-persons-guide-to/

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>バブル期以降の20世紀の古色蒼然とした価値観でまったくナンセンス、愚の骨頂(笑)。ちなみに、近年流行っている言葉、「草食系」「肉食系」も一面的な浅はかな物の見方だと思います。
「ネクラ」「ネアカ」は分かりやすく説明するための一種の記号のようなものです。まぁ、そうだとしても、おっしゃるとおり!(笑)浅はかですね。
>大きな歴史の変転期には、「草食系」だのネクラだの、いっさい関係ない!!(旧来の固定観念はむしろ邪魔) 外野の意見は無視して、自分の信じる道を行きましょう(笑)。
賛成!!(笑)
>>>「ありのままの自分」に戻り、「自分らしく」行きよう。
われながら矛盾したような書き方でした。いつも貴重なご意見、コメントありがとうございます。

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