フィルハーモニア・アンサンブル・ベルリンのボッケリーニ五重奏曲集(1989.6録音)を聴いて思ふ

boccherini_philharmonia_ensemble_berlin懐かしい歌。
自然と人が響き合う。
音楽は、ある時、ある場所を喚起する。
5つの弦楽器が奏でるどこまでも柔らかく、そして愛らしい旋律。そこには喜びがあり、時に哀しみもある。

ベルリン・フィルの名手たちの創造する音楽は、抜群のアンサンブルで、しかも決して機械的にならず温かい音調を醸す。
ルイジ・ボッケリーニの弦楽五重奏曲集。このアルバムが録音された頃、帝王カラヤンとオーケストラとの関係は崩壊寸前・・・。

1988年のジルベスターの頃のカラヤンの言葉が痛い。

私は音楽家というものを知っているし、この世のオーケストラのメンバーがいかに恩知らずなものかもわかっている。ベルリン・フィルはその恩知らずな点では最たるものだった。彼らはリハーサル、演奏会、ザルツブルクや数百万の利益を私から得たのに、彼らは決してただでは演奏しない。彼らは私の力が衰えたことを認めたくない、これからも何でも欲しいのだ。最も欲しいのは私の首だろう。
ヘルベルト・ハフナー著/市原和子訳「ベルリン・フィル あるオーケストラの自伝」(春秋社)P335

「帝王」らしからぬ、何という被害者意識。少なくともオーケストラのメンバーが一方的に問題提起をしたのではないだろうに。

名盤、フィルハーモニア・アンサンブル・ベルリンのボッケリーニ。
実に穏やかで雅な音楽たち。(あくまで勝手な想像だが)こういう音楽を作り出すメンバーたちが、カラヤンの言うように「恩知らず」だとは到底思えない。

ボッケリーニ:
・弦楽五重奏曲ホ長調作品13(11)-5, G.275
・弦楽五重奏曲ニ短調作品20(13)-4, G.280
・弦楽五重奏曲ハ短調作品37-1(51-2), G.377
・弦楽五重奏曲ニ長調作品37-2(39-3), G.339
フィルハーモニア・アンサンブル・ベルリン
エドワルド・ジェンコフスキー(第1ヴァイオリン)
ハインツ=ヘニング・ペルシェル(第2ヴァイオリン)
土屋邦雄(ヴィオラ)
エーバーハルト・フィンケ(第1チェロ)
ネラ・ハンキンス(第2チェロ)(1987.6.16-19録音)

ニ短調作品20終楽章フーガの水も滴るような瑞々しい響き。
ホ長調作品13の、有名な第3楽章メヌエットについては言わずもがな。
そして何より、ハ短調作品37-1第1楽章導入モルト・レントの悲劇的な音調が素晴らしく、続く主部アレグロ・アッサイでの解放に心揺れる。また、第2楽章アンダンティーノ・コン・イノセンツァの主題の美しさは筆舌に尽くしがたい。安定したチェロをベースにしてのヴァイオリンの泣きの旋律に息を飲む。

春爛漫。
春雨がまた闇夜に映える。
ルイジ・ボッケリーニが懐かしい。

 

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