イエペスの弾くバッハの音楽を聴きながら、たとえバッハといえどもかの巨匠の下ではスペイン音楽風になってしまうものなんだとあらためて思った。J.S.バッハの音楽を聴くというよりナルシソ・イエペスを聴くことにどうしてもなってしまう。
今朝の静岡・駿河湾沖での地震は、思った以上に大事に至らなくてよかった。それでも東名高速道が通行止めになったり、新幹線が大幅な遅れをみせているわけだし、お盆の帰省ラッシュと重なり、東京駅などは人でごった返し、大混乱だったというから、自然の前にするといかに人間がちっぽけな存在なのかということをあらためて教わった。謙虚が大事。
「濱田滋郎の本~ギターとスペイン音楽への道」を斜め読みしていて、前述のイエペスが1975年に来日した際のインタビュー記事に目が入った。
師であるジョルジュ・エネスコが若きイエペスに最初に語った言葉。「音楽というものは音符の中にはない、音符と音符のあいだにこそあるのだ」
イエペスはこの言葉を常に最も大切にしていたという。譜面には書いていないものを十分に含んでこそ価値があるのだと。
実際、音でも言葉でも「想い」の全てを形にし、書き留めることは難しい。もちろん聴き手や読み手の感性も相当に問われることになるが、少なくとも作曲家の意思をきっちりと汲み取り、それがたとえ自分流であったにしても、我々聴く側が納得のゆく、あるいは感動する音楽を再現することこそが、演奏家の使命であるんだということを実感した。プロはプロとしての仕事を全うするべきなのである。
J.S.バッハ:リュート組曲第1集&第2集
ナルシソ・イエペス(ギター)
(1973.9&12録音)
この音盤は、濱田氏とのインタビューにて語られていた、イエペスがリュートで録音したアルヒーフ・レーベルの「バッハ:リュート作品全集」ではない。ここでもイエペスは明確に語っているが、リュートはあくまで趣味であり、演奏会で披露することは一切ない、と。あくまで自分はギター弾きであり、ギターが好きなんだと。大衆に迎合しないという断固とした姿勢も気持ちよい。うん、そう、好きなことを突き詰めればそれで良いのである。
バッハの音楽もイエペスの手に落ちるとバッハでなく、イエペスの音楽になる。しつこいようだが・・・、それで良いのである。
こんばんは。
>今朝の静岡・駿河湾沖での地震は、思った以上に大事に至らなくてよかった。
本当ですよね。震源の場所が場所だけに、まさか!とびっくりしました。
>それでも東名高速道が通行止めになったり、新幹線が大幅な遅れをみせているわけだし、
愛知とし子さんの新譜CDの、我が家への到着が遅れることも心配です(笑)。
>「音楽というものは音符の中にはない、音符と音符のあいだにこそあるのだ」
まさにシンクロニシティ!!
昨夜、先日亡くなられた指揮者の若杉弘さんを偲んで、東京都響と入れた武満徹作品の例のCDを聴いていたんですよ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/125015
そのCDの、武満自身が書いた「ノヴェンバー・ステップス」の解説の中で、昨夜私が読んで一番印象に残った箇所は以下の部分だったんです。
「イルカの交信がかれらのなき声によってはなされないで、音と音の無音の間の長さによってなされるという生物学者の発表は暗示的だ」
ねっ!まさに同じこといってるでしょ(笑)。
イエペスのご紹介の盤については、聴いていないので残念ながら語れません。
※荘村清志の弾く、「アランフェス協奏曲他」のCDを買ってみました。
まだ未聴ですが・・・。武満徹の「夢の縁へ」も入っています。
許光俊氏の下の文章を読んだから・・・。
http://www.hmv.co.jp/news/article/908030135/
また、いつもの彼のうまい言葉に、まんまと騙されたかな?(笑)
>雅之様
こんばんは。
>愛知とし子さんの新譜CDの、我が家への到着が遅れることも心配です(笑)。
ですよねぇ。間もなく届くと思いますので、もう少々お待ちを。
>「イルカの交信がかれらのなき声によってはなされないで、音と音の無音の間の長さによってなされるという生物学者の発表は暗示的だ」
これは!シンクロです。
>荘村清志の弾く、「アランフェス協奏曲他」のCD
これ今話題になってますよね。許さんの文章を見たら僕も欲しくなりました。恐縮ですが、買いか否かご報告お待ちしております(笑)。
ちょっと違うかもしれないですが。
私が天才だと思っている女優の師匠が
「台詞をしゃべるのがお芝居ではない。台詞のないところこそがお芝居なのだ。台詞は作家が命がけでつづった言葉たちだから間違えてはいけない。でも、台詞にとらわれるのは芝居ではない」
とよく言ってました。
ほんの少し違うかもしれないけど。
言葉が演劇の音符だとしたら・・・って思って読んでしまいました。
>ほんだぱん
おっ、珍しく「邦楽」以外でのコメント!
>「台詞をしゃべるのがお芝居ではない。台詞のないところこそがお芝居なのだ。台詞は作家が命がけでつづった言葉たちだから間違えてはいけない。でも、台詞にとらわれるのは芝居ではない」
うん、同じような意味合いだね。音楽も演劇も根底に通じるものは同じだということね。