「動物の謝肉祭」を聴きながら思うこと

mussorgsky_picture_stokowski.jpgここのところ毎日のように「動物の謝肉祭」が流れている。
9月5日(土)に多治見市文化会館で開催される「愛知とし子ファミリーコンサート」のメイン・プログラムゆえ、ピアニスト本人が日々研鑽を積んでいるのである。
それにしても元々管弦楽で演奏されるべき楽曲を1台のピアノで奏することは表現の幅という観点から言っても非常に難しかろう。
ともかく5日のコンサートでは、この「動物の謝肉祭」に創作物語がつく予定なので、当日ご来場いただいた皆様(大人も子どもも)には充分楽しんでいただけるであろうと期待している。

カミーユ・サン=サーンス作曲の組曲「動物の謝肉祭」は、1881年に作曲された。しかしながら、楽曲の随所に先人の音楽を拝借しつつパロディ的に作ったものだから、有名な「白鳥」を除いて、作曲者の生前には出版どころか公で演奏することすら禁じられてしまった。作曲者死後、至る所で演奏機会を得るにつれ、どこでも絶賛を博し、今ではサン=サーンスと言えば「動物の謝肉祭」というほどの代表作になっている。組曲には「ピアニスト」や「化石」までもが登場するのだから、洒落だろうと皮肉だろうと面白いし、音楽としても充分に楽しめる。

ところで、この音楽が作曲された同じ頃、ロシアではムソルグスキーが狂死している。この天才の音楽は、おそらく当時の一般聴衆には理解し得なかったのだろう、彼は芸術家としては一流と認知されず、まったくもって不遇な死を遂げた。もちろん「時代の先を行き過ぎた」ということもある。今となっては歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」も、有名な組曲「展覧会の絵」も古今のクラシック音楽を代表する屈指の名作として指折られる存在となっており、ムソルグスキーなくしてクラシック音楽は語れないほどになっているのではと僕は思うのだ(ほんとかぁ?!)
特に、組曲「展覧会の絵」に関しては滅法好きで、僕も時折実演を聴きに出掛けるし、音盤でも愛聴し、その都度感動させていただいている(感動できないときもあるが・・・)。

・組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)、チョン・ミョンフン指揮東京フィルハーモニー
・組曲「展覧会の絵」、ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ)
・組曲「展覧会の絵」~カタコンブ・バーバ・ヤーガ・キエフの大門、ファジル・サイ(ピアノ)
組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)、宇宿允人指揮フロイデ・フィルハーモニー

この音楽の持つ「魔性」やいかに・・・。
ところで、今日は「動物の謝肉祭」作曲の翌年、そしてムソルグスキーの死の翌年に生まれたストコフスキーの編曲による「展覧会の絵」を取り出してみる。

ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(ストコフスキー編曲)
レオポルド・ストコフスキー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1965.9録音)

ストコフスキー版は第3曲「チュイルリーの庭」と第7曲「リモージュの市場」がカットされているので、ラヴェル版に慣れた耳には多少の違和感を覚える。それにプロムナードもラヴェル盤は金管主体でメロディが奏されるのに対して弦楽器主体であるところも同じくしっくりこない。そう、たとえるならラヴェル版がカラーであるのに対してストコフスキー版はモノクロといった印象(逆にそれがロシア的な雰囲気満点でいいといえばいい)。まぁ、こういうのは一種の習慣だから、別の曲として聴いてしまえばそれはそれで楽しめるのだが・・・。それにしても人間の慣れというのは怖ろしい、ラヴェル版があまりに普及しているゆえ、冷静に中庸で聴き、良し悪し(好き嫌い)を判断できなくなっている。
ただし、好き嫌いは別にして、僕が一番面白いなと思ったのは、第4曲「ヴィドロ」。一層ロシア的土俗的なところがある意味的を射ている。

いずれにせよ日常的に聴くのはやっぱりラヴェル編曲版かな。さすが音の魔術師!


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。
ラヴェル編曲の「展覧会の絵」は、2人の独身男「ムソルグスキーとラヴェル」の時空を超えた対話ですね。
楽譜のこと、様々の編曲のこと、演奏のこと、ムソルグスキー「展覧会の絵」の魅力について書くと際限がありませんね。
この曲をこよなく愛する、休八さんの有名なホームページがありますよね。
http://www.geocities.jp/qqbjj485/XPX/
私は楽しくて楽しくて、ここ数年、週に一度くらいは訪れています。訪れるたびに、ただ一曲についてとことん極めるって素晴らしいことだなあと思います。私はこういう音楽へのアプローチ、好きです。
今月は「アランフェス協奏曲」を早わかりクラシック音楽講座で取り上げられるので、今夜の私のおすすめも超有名なコレ↓
山下和仁(ギター・編曲)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2598661
ギター1本でよくぞここまで!・・・、いつ聴いても、偉大な編曲であり演奏で、これは学生のころからの愛聴盤です。
※9月5日(土)の愛知とし子さんの「動物の謝肉祭」他のコンサート、だんだん近づいてきました。早くチケットを買わなきゃ!

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>2人の独身男「ムソルグスキーとラヴェル」の時空を超えた対話ですね。
確かに!うまいことおっしゃいますね。
>休八さんの有名なホームページ
これはまた凄いですね!素晴らしいです。僕も勉強させていただきます。
>ただ一曲についてとことん極めるって素晴らしいことだなあと思います
同感です!
山下和仁氏編曲のギター版「展覧会」、実は僕はまともに聴いてないんです。随分昔にFM放送で聴いたきりで・・・。でも、これを機に買ってゆっくり聴いてみます。
>早くチケットを買わなきゃ!
早くしないと完売になってしまいますよ(笑)!

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