クレンペラーのベートーヴェン

beethoven_overtures_klemperer.jpg僕が初めてCDを購入したのは1984年5月。ちょうど大学生協のセールか何かでプレーヤーが学生でも手の届く価格に落ち着き始めた頃で、TechnicsのSL-P7(当時はPanasonicではなかった)のB級品を手にしたときは嬉しくてしょうがなかった。
最初に購入した音盤が、当時話題になっていたジョン・マックルーアがリマスターしたというブルーノ・ワルターの晩年のステレオ録音からマーラーの「大地の歌」(このことはだいぶ前ブログにも書いたと記憶する)。
初めて聴いたCDの音は、針音もなく最後まで音の歪もなく、20歳の僕の耳に新鮮であると同時に、ワルターの音楽の本来の「深み」がやっとわかったような気がした。本当は当時発売されたすべての音盤を手に入れて聴いてみたかったのだが・・・。値段が通常1枚¥4,200で、ワルターやフルトヴェングラーなど旧録音の復刻でも¥3,500もした時代だから、そう易々とは手に入れられないのが悩みではあったが。
そんな中、忘れもしない吉祥寺ロンロンの中に入っていたレコード店で2枚目を購入。それがクレンペラー指揮するベートーヴェンの「序曲集」だった。

ベートーヴェン:序曲集
・ 「レオノーレ」序曲第1番作品138、第2番作品72a&第3番作品72a
・ 歌劇「フィデリオ」序曲作品72b
・ 「献堂式」序曲作品124
・ 「コリオラン」序曲作品62
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団

090814yokohama.jpg

収録曲の中で「コリオラン」が1957年10月の録音で一番古く(クレンペラー72歳)、「レオノーレ」が1963年11月4日~7日の録音で最も新しい(78歳!)。この6年間の差がクレンペラーの解釈に大きな差をもたらしているように僕には感じられる。もちろん録音技術の差も反映されているのだろうが、「レオノーレ」の神々しさはいかばかりか。身震いするほどの見事さ!
個人差はあるかもしれないが、70代後半の時期は指揮者にとってさらなる高みへと登り詰められるか否かの分岐点なのではないかと僕は感じるのである。

久しぶりに聴いたが、未だに色褪せないどころか、いずれも普遍性のある永遠のベートーヴェン。ただし、「レオノーレ」と「コリオラン」の解釈の間にある「精神性」の差はこの間の指揮者の「ステージアップ」を象徴するようで面白い。

ところで、今夕、横浜市イギリス館での「夏の宵のコンサート2009」を訪れた。
ムーンライト・セレナードに始まり、「Newのだめメドレー」など、高橋卓也さんお得意のプログラムはその場に居合わせたお客様に大変喜ばれたようでよかった。夏の暑さをふと忘れさせてくれるお洒落な西洋館でのひとときであった。


2 COMMENTS

雅之

昨夜、クレンペラーのベートーヴェンについて絶賛したコメントを書き込みしたのですが残念ながら消えてしまいまして・・・。
同じことを二度書く気にはなれませんので・・・。
オットー・クレンペラー⇒(1885年5月14日 – 1973年7月6日)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%A9%E3%83%BC
今月岡本さんが「早わかりクラシック音楽講座」で取り上げられる、ホアキン・ロドリーゴ・ビドレ⇒(1901年11月22日-1999年7月6日)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%A2%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B4
大変だぁ、俺の結婚記念日も7月6日だぁ!

返信する
岡本 浩和

>雅之様
7月6日というのは、なんと「凄い」日なんでしょう!!
ところで、クレンペラーのベートーヴェン絶賛コメント、ぜひ読んでみたかったです。

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