プロゲット・アヴァンティのオーケストラル・イリュージョン(1996録音)ほかを聴いて思ふ

共生とはすべて、すなわち是非善悪、吉凶禍福、成敗得失という相対のもの同士が調和している姿をいうのだと教わった。実践は相当難しい。

イエスが1978年にリリースした”Tormato”を聴いた。何十年ぶりだろう?
それは、イエスの新たな挑戦であり、また(商業的に成功したかどうかは別にして)ある意味完成形だったといえまいか。

表現を変えれば、スティーヴ・ハウとリック・ウェイクマンの2頭の馬、クリス・スクワイアとアラン・ホワイトの両車輪、それを走らせる馭者がジョン・アンダースンである。こうしたメンバーの音楽的な配置構造が、実は本アルバムにおいてサウンドのタイプは異なっても、パワーとバランスの均整を保ち、安定したなかにドラマを含んだ成果を生んだのである。本アルバムはサウンドの変化を評価の対象にすべきではなく、その根底に横たわるイエス音楽の基本構造の改善と成果を評価すべきなのである。イエスは花形アーティストをフィーチャリングするバンドではない。チーム・プレイでしかポリシィを貫けない集合体なのである。
黒田史朗「イエス」(音楽之友社)P281-282

“Tormato”リリース直後に上梓されたこの書籍の最後の言葉は、その後のイエスの活動遍歴を鑑みるに、今となっては言い当てているように僕は思う。

ポップなセンスに彩られつつ、アグレッシブでプログレッシブな側面が押し出された“Don’t Kill The Whale”の、後半、転調によって得られる不思議な感覚と、そこでのジョン・アンダースンのヴォカリーズとスティーヴ・ハウのギター、リック・ウェイクマンのキーボードの絡みが見事に統一される様はそれまでのイエスにない姿。また、いかにもハウらしいアコースティックな響きとウェイクマンのバロック調のキーボードが美しい”Madrigal”の、明朗かつ清澄な音楽に唸る。そして、前のめりのスピード感がいかす”Release, Release”は、まさにチーム・プレイの集合体であるイエスの最終形。

・Yes:Tormato (1978)

Personnel
Jon Anderson (vocals, percussion, 10-string Alvarez guitar, Puerto Rican cuatro)
Steve Howe (Gibson Les Paul Custom guitar, Martin 000-45, Fender Broadcaster, Gibson ES-175, Gibson acoustic guitar, mandolin, Spanish guitar, vocals)
Chris Squire (harmonised Rickenbacker bass guitar, bass pedals, Gibson Thunderbird bass guitar, piano, vocals)
Rick Wakeman (Birotron, Hammond organ, Polymoog synthesizer, piano, harpsichord, RMI Electra Piano)
Alan White (drums, military snare drum, glockenspiel, crotales, cymbals, bell tree, drum synthesizer, gongs, vibraphone, vocals)

あの日、あの時の僕にはこのアルバムの素晴らしさはいまひとつわからなかったように思う。「チーム・プレイでしか」ではない。当時のイエスは、清濁すべて活かすチーム・プレイが可能だったということだ。生み出されたものが悪かろうはずがない。

続いて、プロゲット・アヴァンティという名のギター・デュオの”Orchestral Illusions”を聴いた。そこにあるのは、たった2本のギターで奏しているとは思えない、文字通り「奇術」!

オーケストラル・イリュージョン
・ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
・グリーグ:「ペール・ギュント」組曲第1番作品46
・モーツァルト:セレナーデト長調K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
・ヴィヴァルディ:弦楽器、リュートと通奏低音のための協奏曲ニ長調
プロゲット・アヴァンティ
ホーカン・フレンネソン(ギター)
マックス・ゴッセル(ギター)(1996録音)

例えば、ヴィヴァルディの協奏曲の、スペイン風に味付けされた情熱の終楽章アレグロは、どんな形も受け入れる(どんな編曲もそれが原曲であったのではないかと思わせる)ヴィヴァルディ作品の器の大きさを示すよう。何より2人の性質の異なるギター・サウンドが、一点で調和する際のエネルギーが強烈。あるいは、「ペール・ギュント」組曲の第1曲「朝」の可憐な音調に涙を誘われ、終曲「山の魔王の宮殿にて」での高速奏法に吃驚仰天、舌を巻く。

人生における人間の価値はどれだけ成功したかではなく、どれだけ失敗、過ち、逆境から立ち上がったかに在るそうだ。天才はあらゆる逆境を味方にする。

 

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