グールドのバッハ「平均律クラヴィーア曲集第2巻Vol.1」(1966-67録音)を聴いて思ふ

ホンマ陽大は詮索してこーへんなー
もうなんやかんやずっと一緒にいんのにさー

・・・
なにを

えーの、えーの、それがえーの
お互い楽やもんなー

・・・
きみとは距離をおきたいから
知りたくもない

(複雑に絡み合う根からは
力を感じる
その息吹く先端は吸い取る
養分を、水分を、空気を、
微生物の数々や
理由あってそこに辿り着き細胞分裂した有機物
そして、それらに染みついた想い達

森羅万象、それらすべて
流れ込んで力をくれる
そう考えるようにする
人の思考はそういうことの為にもあるんだ

もっと、もっと強くならないと)
くらもちふさこ作「花に染む⑤」(集英社)P90-94

圓城陽大の思考から、彼はまるでグレン・グールドのようだと僕は思った。
他人には容易に心を開かずとも、大自然と一体になる方法を彼は知っている。だからこそ和弓の腕前も確かなのだ。

幼少からグレン・グールドを尊敬し、ある意味好きが高じて、グールド追悼のために「ゴルトベルク変奏曲」の弦楽三重奏版を編曲したドミトリー・シトコヴェツキーの実演を聴いて、何よりバッハの原曲の一部の隙もない完璧さと、グールドが人生の最初と最後に偶然にもこの作品を選んだ意志というものの偉大さを思った。
特に、3声の弦楽器によって紡がれた音楽の美しさはもちろんのこと、同時にその視覚的美しさに僕は惚れた。他人に影響を与えるというのはこういうことを指すのだ。逝って35年が経過する稀代の偏屈ピアニストの本領。実に恐れ入る。

昨夜の名演奏に触発され、グレン・グールドの弾くバッハの「平均律クラヴィーア曲集第2巻」。

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻
・前奏曲とフーガ第1番ハ長調BWV870(1966.8.8&1967.2.20録音)
・前奏曲とフーガ第2番ハ短調BWV871(1966.8.8&1967.2.20録音)
・前奏曲とフーガ第3番嬰ハ長調BWV872(1966.8.8&1967.2.20録音)
・前奏曲とフーガ第4番嬰ハ短調BWV873(1967.1.24録音)
・前奏曲とフーガ第5番ニ長調BWV874(1967.1.24録音)
・前奏曲とフーガ第6番ニ短調BWV875(1966.8.8録音)
・前奏曲とフーガ第7番変ホ長調BWV876(1966.8.8&1967.1.20/24録音)
・前奏曲とフーガ第8番嬰ニ短調BWV877(1967.2.20録音)
グレン・グールド(ピアノ)

外見はいかにも機械仕掛けのよう。
しかし、これほど長い期間にわたって好楽家の支持を獲得するには内容がよほど優れていないとそうはならない。その鍵は左手と右手を同等に扱う、否、どちらかというと左手を強調するその方法にあるのだろうと僕は想像する。そのくらい瞬間的に刺激され、惹き込まれるあの見事な左手。
例えば第5番ニ長調BWV874のフーガには、ベートーヴェンの傑作ハ短調交響曲のあの有名なモチーフが木霊するけれど、ベートーヴェンのインスピレーションの源はこの曲ではなかったのかと思わせるほど音楽的で、また魅力的なのである。もちろんそれはグールドの演奏の素晴らしさによるところが大きい。
ハンス・フォン・ビューローをして「旧約聖書」といわしめた「平均律クラヴィーア曲集」の、それも第2巻の崇高さと完璧さをあらためて知り得る名盤だと今さらながら思う。

 

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2 COMMENTS

雅之

ピアノの演奏、とりわけグールドのような演奏は、一番最初にAIが追いつきそうな領域ではないでしょうか。

将棋や囲碁では、世界のトップ棋士でも歯が立たない、AIが神のような存在になってしまいましたが、ソフトの開発者自身が、AIが何故そんな手を指したり打ったりするのか理解できないという不思議な黒魔術のようなシンギュラリティ(技術的特異点)を超える時代になっています。そして、次にシンギュラリティを迎えるのは、AI独自の解釈を伴ったピアノ演奏だと思っています。

ピアノは産業革命で劇的に進歩した楽器であり、「平均律」という「制度」はデジタルと相性がよくて、それもこれも含めて大自然の一部なんですよね(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様

>不思議な黒魔術のようなシンギュラリティ(技術的特異点)を超える時代

ウルトラセブンに実相寺昭雄監督による「第四惑星の悪夢」という回がありましたが、まさに50年前の予言が現実化するような様子ですね。
次はピアノですか・・・。

ロボット長官「コンピューターは間違いはしない、そしていつも冷静だ。」

https://www.youtube.com/watch?v=IP0GeYD9DRc

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