《第4交響曲》の作曲家として、シベリウスはモダニストで、聴衆に理解されない作者がどんなものであるかを味わった。ヘルシンキ大学の大講堂における初演で、聴衆は惜しみなく拍手を送ったが、それは高名な作曲家に対する敬意の表れでしかなかった。大部分の聴き手にとって作品はまったく不可解であり、一部には不信のためにかぶりを振ったり、皮肉な笑いを浮かべる者さえ見られた。
~マッティ・フットゥネン著/舘野泉日本語版監修/菅野浩和訳「シベリウス―写真でたとる生涯」(音楽之友社)P60
燦然と輝く月輪に跪いた。何て強烈なパワーとエネルギー。
果たして暗黒の真冬の表象なのか。
真黒なキャンバスに閃光が走る。そして、その光は何だかとても眩しくて熱い。
それにしても、乾いた空気の崇高な響き。
ジャン・シベリウスの交響曲第4番イ短調。
不思議に明朗な演奏で、通常感じる暗澹たる雰囲気がない。
おそらくこれがサー・コリン・デイヴィスならではの表現なのだと思う。そういえば、2002年6月にロンドンはバービカン・センターで聴いたロンドン交響楽団のホルスト「惑星」も、アンサンブルに一切の乱れのない、美しくも楽観的な演奏だった。あの時は、前プロがサラ・チャンを独奏者に迎えてのブラームスだった。いずれも15年を経た今でも鮮明に心に残る素晴らしい演奏。
第1楽章冒頭に不気味さはない。その上、とても見通しの良い、透明感のある優れた演奏。
前進と共に高揚する音楽に、僕はとてもポジティブな希望を見た。
シベリウス:交響曲全集
・交響曲第1番ホ短調作品39(1899)(2006.9.23&24Live)
・交響曲第4番イ短調作品63(1910-11)(2008.6.29&7.2Live)
サー・コリン・デイヴィス指揮ロンドン交響楽団
第2楽章アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェの軽妙な快活さ。オーボエによる主題の洒脱。やっぱりここには生への希望しかない。また、第3楽章イル・テンポ・ラルゴのあまりの美しさ(特に、中間の弦楽器のよる息の長い旋律)。物憂げに沈むような音調を醸しながら、その実、内側で相当な熱を帯びるこの音楽こそコリン・デイヴィスの真骨頂。そして、第4楽章アレグロの解放!鷹揚なテンポで繰り広げられる余裕の音宇宙。各楽器は巧みで、アンサンブルは融け合い、一部の隙もない音楽が奏でられる。
「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだらうか。」
いきなり、カムパネルラが、思ひ切ったというやうに、少しどもりながら、急きこんで云ひました。
ジョバンニは、
(あゝ、さうだ、ぼくのおっかさんは、あの遠い一つのちりのやうに見える橙いろの三角標のあたりにいらっしゃって、いまぼくのことを考へてゐるんだった。)と思ひながら、ぼんやりしてだまってゐました。
「ぼくはおっかさんが、ほんたうに幸になるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸なんだらう。」カムパネルラは、なんだか、泣きだしたいのを、一生けん命こらへてゐるやうでした。
「きみのおっかさんは、なんにもひどいことないぢゃないの。」ジョバンニはびっくりして叫びました。
「ぼくわからない。けれども、誰だって、ほんたうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるして下さると思ふ。」カムパネルラは、なにかほんたうに決心してゐるやうに見えました。
「銀河鉄道の夜」
~宮沢賢治全集7(ちくま文庫)P253-254
ホ短調交響曲終楽章クワジ・ウナ・ファンタジアの意味深さ。
土と水と空気と。北の大地の雄大さ。洗練された土俗性こそがジャン・シベリウスの真髄。
あるいは、サー・コリン・デイヴィスの堂々たる風格。
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コリン・デイヴィス指揮の新録音のほうは、聴きたいと思い続けながらも未聴ですが、古いボストンSOの録音を、車の中でよく聴いています。
リントゥ&フィンランドRSOの全集は、個人的に昨年買った全ジャンルのBDな中で、個人的には最高に満喫、満足しています。
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そして、フィンランドに、ただ「石ころ」を採りにいきたいです(笑)。
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>雅之様
リントゥのシベリウスは残念ながら未聴です。
しかし、明らかにこのblu-rayは買いだとわかりますので、いずれ仕入れてじっくり鑑賞したいと思います。
ちなみに、リントゥは今年の11月に都響に客演して「クレルヴォ」を演奏することになっています。
もちろん僕は聴きに行くのですが、実に楽しみなのです。
>ただ「石ころ」を採りにいきたいです
「石ころ」についてはゼロからの勉強になりますので、コメントができません。
とはいえ、素晴らしい趣味だと思います。
>とはいえ、素晴らしい趣味だと思います。
全然無理しなくっていいですよ(笑)。本音で語りましょう。
・・・・・・私が最近石拾いにハマっているというと、人はたいていの場合、
「石?」
と怪訝な顔をする。
そしてあからさまに興味のなさそうな、どうでもいいと言いたげな表情になって、「面白いんですか」などと聞いてくれればまだいいほうで、即座に「そうなんですかー。私が最近ハマってるものといえば、タイ料理かなあ」って、こらこら、石スルーすんな! 最近ハマってるものトークしてんじゃないぞ。話すりかえようって魂胆みえみえじゃないか。
そこまでじゃなく、少しは石トークに付き合ってくれた場合でも、まあ5分ももてばいいほうで、それも最後は決まって、まだ早いんじゃないか、とか、ついに石に行ってしまいましたか、と、まるで私が人生の終焉を迎えたみたいな憐憫の情を示されたりして、どうやら人は、石といえば自分に一切無縁な老人趣味と思っているようなのであった。・・・・・・「いい感じの石ころを拾いに」宮田 珠己 (著) (著者は1964年 兵庫県生まれ)河出書房新社 P61
https://www.amazon.co.jp/%E3%81%84%E3%81%84%E6%84%9F%E3%81%98%E3%81%AE%E7%9F%B3%E3%81%93%E3%82%8D%E3%82%92%E6%8B%BE%E3%81%84%E3%81%AB-%E5%AE%AE%E7%94%B0-%E7%8F%A0%E5%B7%B1/dp/430902291X/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1499771702&sr=1-1&keywords=%E3%81%84%E3%81%84%E6%84%9F%E3%81%98%E3%81%AE%E7%9F%B3%E3%81%93%E3%82%8D%E3%82%92%E6%8B%BE%E3%81%84%E3%81%AB
ちなみに、宮澤賢治は「石っこ賢さん」とあだ名されるほど、幼い頃から石に興味を持っていたことが知られています。彼の作品を読むと、鉱物への造詣の深さが、あちこちに頻繁にうかがえます。
以前にもご紹介した美しい学術本
「賢治と鉱物」 加藤碵一 青木正博 (著) 工作舎
https://www.amazon.co.jp/%E8%B3%A2%E6%B2%BB%E3%81%A8%E9%89%B1%E7%89%A9-%E5%8A%A0%E8%97%A4%E7%A2%B5%E4%B8%80/dp/487502438X/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1499772326&sr=1-1&keywords=%E8%B3%A2%E6%B2%BB%E3%81%A8%E9%89%B1%E7%89%A9
なお、リントゥ&フィンランドRSOのBD全集全体から漂う北欧そのものの空気は、たとえ名指揮者リントゥでも東京のホールでは再現不可能だと思っています(無論、名古屋や大阪は論外)。札幌のKitaraくらいなら、かろうじていけるかも。
>雅之様
アルフレッド・アドラーが言っております。
「他人の関心に関心を持て」と。
「石ころ」そのものよりも、それだけ雅之さんを熱くさせる「石ころ」とは何ぞやを知りたいわけです。
>たとえ名指揮者リントゥでも東京のホールでは再現不可能だと思っています
実際、季節や場というのは音楽を享受する上で重要な要素なのでしょうが、それを言ってしまえば元も子もないので、とりあえず11月は上野でリントゥのシベリウスを堪能させていただきます。(笑)
>「石ころ」そのものよりも、それだけ雅之さんを熱くさせる「石ころ」とは何ぞやを知りたいわけです。
誤解を恐れず言えば、理系分野にロマンを持てる人かどうかの違いでしょうね。
「月の石」とか「はやぶさの持ち帰ったサンプル」とか、ねっ、興味ないでしょ(笑)。
>雅之様
いや、そうでもないですよ。本当に。
理系分野は若い頃苦手意識を持っていましたが、今ではとても興味があるのです。
ですから、石ころの講釈を雅之さんにお願いしたいのです。(笑)