チョン・デュオ・ライブ1993

chung_duo_live_1993.jpg10月だというのに近年にない大型台風が上陸、列島を直撃するという。毎日陰鬱な日が続き、気が滅入るが、これを抜けるとだいぶ浄化されて落ち着くのだろう。

いつどこで手に入れたCDだったか記憶は定かでない。10何年前正月に帰省した際、大津の西武に入っていたディスクポート(懐かしい!)か、あるいはその隣のPARCOにあるタワーレコードだったか、微かな記憶を辿ってみても明快に思い出せない。ことによるとまったくの思い違いかもしれない。昨日、棚の隅っこに立てかけられた音盤の背ラベルを眺めていて、何年ぶりかにこの音盤の存在に気づき、取り出してみた。1993年の韓国でのライブ。とすると、それからすぐに発売されたとは考えにくい。きっともっと後に東京のどこかのCDショップで見かけ、思わず購入したものの、そのままほとんど聴かず仕舞いで忘れ去っていた音盤なのだろう(ブックレットをひっくり返して見てみると2000という文字が目に留まった。ということは2000年の発売ということか・・・)。

Wo Musicという聞き慣れないレーベル。しかもMade in China。怪しい。間違いなく海賊盤である。それにしても1曲目に音揺れや途切れがみられるものの、以降の音質は鑑賞に耐えうるどころか抜群で、円熟のチョンのヴァイオリンが見事に堪能できる代物。何しろ、故国韓国ソウルでの弟ミョンフン氏との凱旋デュオ・リサイタルの実況録音。聴衆の怒涛のような拍手喝采もしっかり収録されており、オーディオ装置の前に陣取って聴いていると、まるでその当日その場に居合わせているかのような錯覚を覚えるほどの生々しさ
で、オーディエンスの熱狂の程が思い知らされる。それに、肝心の演奏の凄いことは言うまでもない。

このいわくつきであろう音盤のことを少しでも探ってみようとネットで検索したところ、面白い記事を見つけた。
http://www.sun-inet.or.jp/~tchujoh/chung.htm

なるほど、そういうことか。確かにいつぞやの「レコード芸術」の記事にそんなことが書かれてあったような気がする・・・。

チョン・デュオ・ライヴ1993
・ヴィヴァルディ:ヴァイオリン・ソナタイ長調
・ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調作品108
・グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調作品45
・ラフマニノフ:ヴァイオリンとピアノのための2つの小品作品6~「ロマンス」、「ハンガリー舞曲」
~アンコール
・ラフマニノフ:ヴォカリーズ作品34-14
・シャミナード(クライスラー編):スペインのセレナード
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
チョン・ミョンフン(ピアノ)
(1993.8.16、ソウル・アートセンター)

ヴィヴァルディの珍しいソナタに始まり、ブラームス、グリーグと、必ずしもポピュラーとはいえないプログラム構成だが(僕にとっては大好物)、チョン姉弟の演奏はまったく飽きさせないどころか、聴衆の心を鷲掴みにし、ぐいぐいと引っ張ってゆく、そんなことが音を聴くだけで手に取るようにわかる。時間が経過するにつれ、会場全体は次第に高潮。最後のアンコールでの「ヴォカリーズ」、涙なくしては聴けまい。

荒れた空模様の今宵、独り静かに耳を傾けるに相応しい・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
今朝の当地は凄い風雨でした。被害が心配です。ただ、台風も決して異常気象ではなく、有史以前より厳然とあり、我々がこの国土に住む限り、付き合わざるを得ない普通の自然現象の1コマに過ぎませんよね。
また、自然は(神様も?)、もともと勝手気ままにブレまくる性質があり、私達人間がいくら健全な社会生活でブレなくても自然の一員である以上、結局は自然に翻弄されざるを得ないということを、我々はこの地球に生きていく以上、きちんと認識するべきでしょうね。
チョン姉弟の盤は、さぞかし名演が聴けるのでしょうね!
しかし私は、多分大方のクラシック・マニアの方と異なるところだと思いますが、昔からエア・チェックはしても、海賊盤に手を出すことはほとんど有りませんでした。
基本的に、演奏者に非礼・失礼ですし、演奏者名、日付などのデータの捏造、改竄、粗悪な盤質など茶飯事で、危険が多いものには手を出したくないという意識が働いています。
それ以上に、近頃は、ある日の演奏会を録音で「のぞき見」したって、所詮は実演体験の情報量に比べれば大したことは無くて、情報不足分を妄想で補わざるを得ず不健全な行為だし、その演奏会についての誤解や勘違いを招きやすいと思うのです。
以上、ご紹介の盤を所有していない敗者の弁?でした(笑)。
・・・素直に認めましょう・・・負けました・・・(涙)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
東京はものすごい風が今吹いております。自然に翻弄されざるを得ない、おっしゃるとおりです。生きとし生けるものすべて共存共栄ですね。
>昔からエア・チェックはしても、海賊盤に手を出すことはほとんど有りませんでした。
これは僕も同じ見解で、正規ルートの音盤でない限り基本的に買わない主義です。じゃあ、どうしてこの音盤が手元にあるのか?ということですが、ショップで手にした瞬間はまったく「海賊盤」だとは思わず、即購入してしまったのです。魔が差したんでしょうか(笑)。
>・・・素直に認めましょう・・・負けました・・・(涙)。

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