癒しのドヴォルザーク

dvorak_51_105_abq.jpg日々のルーティンワークに埋没し、目の前の仕事が何のためにあるのかわからなくなり、途中で投げ出したくなることは誰にでもよくある話だろう。自分が一介の歯車になってしまったようで、意味が汲み取れず、時に考え込み、行動を止めてしまうこともある。
しかしながら、よくよく考えてみると、人生そのものが考えようによってはルーティンワークなのである。目標を持たず、今この瞬間を生きる喜びを謳歌できない、そう過去にくよくよしたり未来の心配をしたりなど、そういう思考が始まると人生は一気につまらないものになってしまう。すべての起こる事実には実は意味があり、どんな些細なことでも楽しめる、そして自ら意味づけできる、そんな生き方をしたいものである。

一昨日から「エントリーシート攻略テスト」の添削業務を始めた。労力がどの程度のものかわからなかったので、まずは体感してみようと相当数を引き受けたが、これがまた手強い。1枚のチェック量が多いのに加え、当然ながら適当に見て済ますというわけにもいかず、ひとつひとつを念入りにチェックし始めると結構な時間を要するのだ。一般的な観点からいうと、僕がやるべき作業ではない地道な「労働」なのだが、それでも今の学生の動向、考え方、状況などを手に取るように感じとれるという意味では、大変に意義深く素晴らしい体験だと思える。長い間学生の就職支援業に携わってきたという経緯ももちろんあろうが、一方で病みつきになりそうな魅力がこの仕事にはあるのだから面白いものだ。添削業務然り、教室での講義然り。単なるルーティン作業と捉えたらやってられない。がしかし、少しでも学生諸君の役に立てるなら一肌脱ごうではないか、今はそんなような気持ちである。

ところで、エリック・ハイドシェックがまだ日本に滞在しているようだ。先月、国内をいくつか回りコンサート巡業をしていたのはもちろん知っていたし、17日の紀尾井ホールでのリサイタルにはいつものように感銘を受けた。ただし、あれから1ヶ月以上経つのにまだいらっしゃることを知り、余程日本が好きなのかと少々驚いた。11月1日(日)には国立楽器でのイベントにゲスト出演するようだが、仕事があり残念ながら行けないと地団太を踏んでいたところ、昨晩ネットサーフィンをしていて、10月30日(金)にも東京日仏学院にてリサイタルが開かれることを知り、急遽チケットを手に入れた。紀尾井ホールのものとはまた別のプログラムゆえ楽しみである。

ここ数日、熱を帯びた太陽の光が眩しい。秋深まるこんな日にはどんな音楽が相応しいのだろうか。

ドヴォルザーク:
弦楽四重奏曲第10番変ホ長調作品51(1878/79)
弦楽四重奏曲第14番変イ長調作品105(1895)
アルバン・ベルク四重奏団

稀代のメロディスト、ドヴォルザークの音楽はいつの時期のものでも美しい。スラヴ舞曲で人気作曲家の仲間入りをした作曲家が、続いて創作した変ホ長調の四重奏曲も、アメリカ滞在中に着手され、チェコに帰国後完成した変イ長調のそれも、いずれも名アンサンブルABQの手にかかると一層の輝きを増す。それにしても何なんだろう、この心にぐっと染み入る調べ、律動は。

疲れた脳みそに癒しのドヴォルザークといったところか・・・。ただし、ドヴォルザークなら何でも良いというわけではない。弦楽ものでなければならぬ。眠りを誘うような旋律と心躍るような音楽が入り混じる・・・。


4 COMMENTS

もっち

〉 添削業務然り、教室での講義然り。単なるルーティン作業と捉えたらやってられない。がしかし、少しでも学生諸君の役に立てるなら一肌脱ごうではないか、今はそんなような気持ちである。
そんな考え方の先生なら学生もじゅぎょうが楽しくなると思います。

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雅之

おはようございます。
ドヴォルザークは、弦の心をよく解って曲を書いていますよね。ご紹介の曲など弦楽四重奏曲のジャンルでも、確かに心が癒される、旋律も美しい素晴らしい曲揃いだと私も思っています。特に8番から14番までは、どの曲も好きです。
>名アンサンブルABQの手にかかると一層の輝きを増す
同感です。
ところで、ドヴォルザークは若い頃腕の立つヴィオラ奏者だった割には、ヴィオラの名曲を書いていないんですよね。また、彼の曲は交響曲でも弦楽四重奏曲でもそうですが、楽譜でチェックすると、意外にヴィオラ・パートの満足感が少ないんです・・・。そこがヴィオラ愛好家の私としては昔から物足りないところだと思っておりまして・・・。
欲求不満の私でしたが、先日、そんな渇をいやす楽譜を入手しました。
「チェロ協奏曲のヴィオラ編曲版」
Dvorak (Antonin) Concerto b-moll Op.104 for Viola and Piano (Joseph Vieland)
http://repertory.jp/item/score/IMC1798/
ざっと眺める限りJoseph Vielandによるこの編曲、とてもよい出来だと思いますので、誰か演奏会で取り上げてくれないかなあ、と念願している今日このごろです(自分でも人前で弾けるくらい上手けりゃなあ・・・)。
ハイドシェックなど他の話題につきましては、もっと適任の方のコメントで学ばせていただきたいところです。

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岡本 浩和

>もっち
おはよう。
お蔭様で学生や職員の方々にも好評だったみたいでよかったよ。
ところで、東京転勤はその後いかが?

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>ドヴォルザークは若い頃腕の立つヴィオラ奏者だった
へぇ、そうだったんですか。ドヴォルザークのことはあまり詳しくないので知りませんでした。なるほど、ヴィオラ愛好家の方には物足りないのですか・・・。勉強になります。
>「チェロ協奏曲のヴィオラ編曲版」
これはなかなか面白そうですね。スコアは読めないので、ぜひ音を聴いてみたいところです。
>自分でも人前で弾けるくらい上手けりゃなあ・・・
公開演奏が難しければ、せめて数人の友人愛好家を集めて演ってみてください!この曲じゃないにしてもいつか一度雅之さんのヴィオラを聴いてみたいと思っております。

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