愚か者

週末の選挙はどうすればいいのだろう?
この世は茶番だとあらためて思う。しかし、まさにこれから「嘘」がバレる時が来る、否、もうとっくにそういう時代は到来している。「真実」がいよいよ現出する。その時が来たようだ。

来年4月にイアン・アンダースンが来日し、何と「ジェラルドの汚れなき世界」を完全再現するという。しかも、第2部には続編の「人生のもしも」をテーマにした「ジェラルドのその後」が据えられているのだからこれは何としても、という感じ(続編は未聴)。僕はこういうアンソロジー的再演ものに目がない。フロイドの「狂気」は聴けなかったけれど、マッカートニーの「アビー・ロード」B面メドレーも聴かなかったけれど、ブライアン・ウィルソンの「スマイル」、あるいは少しニュアンスは異なるがルー・リードとジョン・ケイルが演った「ソングス・フォー・ドレラ」などには実際に触れ、狂喜乱舞した。すべてが貴重な体験だった。

ところで、「ジェラルド」。40年前にリリースされたこの作品はいろいろと曰くつき。そもそもイギリスの文学推進協会が主催したコンテストで優勝をさらった、ジェラルド・ボストックという8歳の少年が書いた叙事詩をもとに、アンダースンが作曲を試みたという「設定」が興味深い。そう、すべてがあくまで大衆を騙す「設定」なのである。当時の人々の多くはまんまと騙されたという。しかし、この英国的アイロニーに満ちたユーモアが何とも素敵。

人生とはおおよそそういうようなもの。現実だと思っていることが仮想だったり、夢のようなことが現実だったり。いかに自身を客観的に捉えることができるか、そういう視点は決して忘れてはならない。

Jethro Tull:Thick As A Brick

Personnel
Ian Anderson (lead vocals, acoustic guitar, flute, violin, trumpet, saxophone)
Martin Barre (electric guitar, lute)
John Evan ( piano, organ, harpsichord)
Jeffrey Hammond-Hammond (bass guitar, vocals)
Barriemore Barlow (drums, percussion, timpani)
David Palmer (brass and string arrangements)

このアルバムにはジェスロ・タルのメンバーへのインタビューがボーナス・トラックで収録されているが、その話が実に興味深い。「ジェラルド」は何とほとんど偶発的に、何も決めないまま何となく生まれ出た作品のよう。そのこと自体が既に「世界が茶番である」ことを物語る。
LPにしてA&B面を使い1曲というこの長尺音楽は、2012年の今も輝きを放つ。それどころか聴けば聴くほど発見がある。そもそも彼らが当時発表した作品たちは本人たちは無意識だろうが「偉大なるものへの信仰」のもとに作られていただろうことが何よりすごい。
ところで、原題の”Thick as a brick”の意味は、「愚か者」。人間とは愚かな生き物だというアンダースンの自己批判も含めた揶揄だろうか。

I’ve come down from the upper class to mend your rotten ways. My father was a man of power whom everyone obeyed. So come on all you criminals! I’ve got to put you straight just like I did with my old man twenty years too late. Your bread and water’s going cold. Your hair is short and neat. I’ll judge you all and make damn sure that no one judges me.

アッパークラスとはいかにも高飛車だけれど、それでも上から全体を俯瞰して8歳の少年に語らせている点が素晴らしい。寸劇を借りながら、ここでは「真実」が語られる。
嗚呼、やっぱり4月の公演には足を運びたい。


2 COMMENTS

みどり

ジェスロ・タル! すごいの聴いてますね、岡本さん。

なるほど、“Stand Up”が既出なんですね。
イエスの「海洋」でも思ったのですが、読者の皆様の中でこの時代の
洋楽をご存じの方って、どのくらいいらっしゃるのか興味深いです。
岡本さんや私などの世代は、洋楽でオンタイムっていうと70年代半ば
以降が殆どだと思うので、自分が長子だとまず知らないですよね。
年長の知人や兄姉のいる同級生を通じてという経路がないと
出遭う機会が得づらいバンドの一つなのではないかと思います。

いかにもイギリスのバンドらしい音作りがされていると思いますが
第31回グラミーのHR/HM部門で受賞した時は驚きました。
メタリカやAC/DCとノミネートというのが、そもそも理解し難いところ。
イアン・アンダーソンご自身が一番困惑していらっしゃったかも。

それにしても、5大バンドから入ってジェスロ・タルに至るとは
なんと真面目にプログレ道を歩んでいらっしゃることでしょう!
ご尊敬申し上げます…(笑)
来週末からの発売でしたっけ?
良い席が取れますように、お祈りしております!

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岡本 浩和

>みどり様
正確には覚えておりませんが、大学生の頃イエス、クリムゾン、フロイド、EL&Pと順番に嵌っていき、ジェスロ・タルに行き着いたのはだいぶ後でした。
グラミーの話もよく覚えております。不思議ですよね。
イアンがあれについて語る記事がありますが、グラミー側の真相はわかりません。
http://metallica.livedoor.biz/archives/51802692.html

しかし、尊敬ですか!?
どんな音楽が来てもきちんと解説いただけるみどりさんの方が余程尊敬に値します。
今後ともよろしくお願いいたします。

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