ロメオとジュリエット

ゆうたろうが空き巣とカード詐欺で300万円の被害に遭ったというニュースを読んで、10年前のある忌々しい事件を思い出した。ピッキングにより自動車から通帳を盗まれ、まんまと60万円近くを引き出され、後日某F銀行に抗議に出向くが、まったく相手にしてもらえず泣き寝入りしたという事件。

1998年6月4日。その日の夜、サントリーホールにて朝比奈隆指揮新日本フィルハーモニー交響楽団の2度目のツィクルスにてベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付」を聴く。圧倒的な名演奏に酔いしれ、良い気分で帰途につき、車を路上パーキングに止め、広尾の日本食屋に入った。おそらく1時間半ほどの滞在だったか。車に戻り、普通に帰宅。実はその時既にピッキングに遭っていたのだが、全く気づかず、その後1週間近く経ってからから通帳の紛失を知ることになるのである。

6月9日、久しぶりに銀行に寄り、1万円をおろしたところ残金が10数円という表示。「えっ！」と一瞬目を疑った。何かの間違いだろうともう一度残高を確認するも、やっぱり10数円・・・。即刻窓口に行き、通帳の残高を確認することをお願いした。待つこと10数分。調べてもらったら、6月5日の朝一番に荻窪支店と新高円寺支店のCDから2回に分けて56万円が引き出されているとのこと。すぐに抗議するも、実際に銀行印を押された書類を見せられ、またまた吃驚。ともかくバッグから盗まれたことは間違いなかった。いつどこでどのように盗まれたのか見当がつかない。まさか印鑑までバッグに入れていたのかと反省した。しかし、その日自宅に帰ってチェックすると銀行印は引き出しの中にきちんとしまわれていた。

その日以降、もちろんF銀行荻窪支店にも新高円寺支店にも日参した。本店にも掛け合った。残された書類の印影と実際の印鑑を重ね合わせるとわずかに、ほんのわずかに大きさが違うのだ。窓口業務の行員のミスだろうと責任を追及するものの、まったく埒開かず。挙句は出るところに出ても良いですよという。裁判沙汰にするまでの金額ではなかったので、結局泣き寝入りしたが、過去のこういう事件を掘り起こして弁償を求めることってできるのだろうか？（最近の盗難だと保障されるように聞くが）

2月の杉並公会堂での愛知とし子リサイタルのプログラムを決めるのに朝から音盤を聴きながらあぁだこうだ。ロシアン・ファンタジーと題して、グリンカやバラキレフ、プロコフィエフにムソルグスキーという構成。なかなか重量級の選曲だ。

プロコフィエフ：バレエ音楽「ロメオとジュリエット」作品64
シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団

全52曲の中からデュトワが任意で24曲を選び、多少楽曲の一部を削除してのハイライト版での収録（バレエ音楽を映像なしで全曲通すのはなかなかしんどいが、このくらいのヴォリュームならちょうど良い）。15年に及ぶ亡命生活に終止符を打ったプロコフィエフが1935年に発表したシェイクスピアの傑作戯曲をもとにしたこのバレエ音楽は、映画音楽さながらロマンティシズム溢れ、主人公2人の心の動きだけでなく、両家の争いの隅々にわたるまで音化された傑作である。デュトワの棒ももちろん秀逸。

ところで、前述の通帳盗難事件のこと。1ヶ月後くらいに、ふと自動車の掃除をしていた時、運転席のドアの窓ガラスを保護するゴムに穴が開いているのを発見した。同時に、ドア外側にもドライバーか何かを使ってこじ開けたような微かな瑕が・・・。この時ようやくピッキングに遭ったということが判明。周囲の関わりのある人間を疑いたくなくても多少疑いの目で見ていた自分を反省した。

Tweet