Chick Corea and Return To Forever “Light As A Feather” (1973)を聴いて思ふ

今、世界には73億人余りの人がいて、73億通りの人生がある。
そして、その人生にはひとつとして同じものがない。
人間の力は無限だ。僕たちが生み出すものにもひとつとして同じものはない。完全コピーが不可能なところが自然の揺らぎ。時間と空間の芸術である音楽然り。

チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァーの「ライト・アズ・ア・フェザー(完全盤)」には未発表テイクが収められている。例えば、”Spain”の2種の別テイクや”What Games Shall We Play Today?”の4種の別テイクを聴きながら、それぞれに個性があり、ひとつも無駄のない事実と内側にある自然のパッションに驚愕する。

バンド名の由来となった楽曲のタイトルについてチックは次のように語る。

リターン・トゥ・フォーエヴァーという名前は、曲のアイディアが最初に溢れ出てきたときに、いちばん気に入ったタイトルだった。ある意味では、純粋であれという、この音楽の精神的な内容を捉えた言葉だね。アーティストはみんな、自分自身の中から抵抗や障害なく作品を生み出す方法を知りたがるものだと思う。内面にあるものを表現したいんだ。それを詩的に解釈したのがこの名前というわけさ。人間の持つ純粋さに触れるという意味のね。上に積み重なったものをすべて取り払ってみると、それが見えてくるんだ。
(ポール・デバロス1998年4月/坂本信訳)
POCJ-2677/8ライナーノーツ

すべては永遠の中にあり、永遠とはゼロのことだと思った。
原点に戻るべし。

・Chick Corea and Return To Forever:Light As A Feather (1973)

Personnel
Flora Purim (vocals, percussion)
Joe Farrell (tenor saxophone, flute)
Chick Corea (electric piano)
Stanley Clarke (double bass)
Airto Moreira (drums)

時は1972年10月8日日曜日。
チックを中心としたリターン・トゥ・フォーエヴァーによるレコーディング・セッション。おそらく、そこではメンバー各々の想いが錯綜し、それぞれにありったけの力を出し切りながらの新しい音楽があった。

ホアキン・ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」に触発された”Spain”は、チックのエレクトリック・ピアノをフューチャーした永遠の名曲だが、1998年完全盤のボーナス・ディスクを聴きながら、ひとつとして同じものの存在しない「永遠」を思った。
あるいは、前作における出色のナンバーであった”What Games Shall We Play Today?”についても、フローラ・プリムの変幻自在の、色香豊かなヴォーカルの魅力が堪らない。そして、”Light As A Feather”の別テイクには、もっと赤裸々な、ありのままの音が刻まれる。ジョー・ファレルのテナーが咆え、うねり、フローラ・プリムの絶唱が弾ける。

彼女の歌い方が気に入ってね。彼女の心意気が気に入った―しかも、ブラジルの感覚がぼくの書いていた曲にぴったりだったんだ。
POCJ-2677/8ライナーノーツ

その歌は、録音から45年という年月を経ても決して色褪せない。

 

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