スコット・ラファロ没後50年命日の2日前に・・・

半世紀前の6月、ニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードではビル・エヴァンス率いる黄金のトリオが、驚くべき集中力で見事なパフォーマンスを披露した。伝説のヴァンガード・ライブ。昼2回、夜3回に分けての公演はそのどれもが抜群の「間」と「呼吸」に満ち溢れており、クラシック音楽に限らず世の音楽ファンにはぜひとも繰り返し耳にしていただきたい記録である(それにしてもこの日の幸運な聴衆は一体何人くらいなのだろう?拍手や演奏中のおしゃべりの様子から想像するに多くても多くても30人ほどか・・・)。

クラブでのライブ録音故、グラスのぶつかる音、聴衆のささやきなど、その臨場感までをも追体験できる素晴らしさよ。特に、先年発売されたコンプリート盤は、機器の不調による欠落部分があるものの、実に完璧な出来で、特に音量を相当上げて聴くと、当日その場に居合わせているかのような錯覚に陥るほど。

3枚組から2枚目と3枚目を取り出す。夜公演の3セットを一気に。
それにしても、”Gloria’s Step”や”Alice in Wonderland”におけるスコット・ラファロの深く芯のしっかりした重量感のあるベース・ソロのパートは、数週間後の自身の突然の死を予見しているかの如く悲しく響く。エヴァンスの各楽曲におけるリーダーシップも見事なもの。青年エヴァンスの、ソロのときの澄んだピアノの音と、2人の盟友と絡むときの激しくも緻密な打鍵と、後年のビルとはまた違った、落ち着きのある若々しい自信に満ちたプレイが堪らない。

Bill Evans:The Complete Live At The Village Vanguard 1961(1961.6.25Live)

Personnel
Bill Evans(piano)
Scott LaFaro(bass)
Paul Motian(drums)

気のせいか、録音を聴く限りにおいて、夜が更けるにつれ、疲れを見せるどころか、3人の絆がますます深まっていくよう。こんなアンサンブルを経験してしまった後、そのうちの一人がかけてしまったときの焦燥感や絶望感というのはいかばかりだったか・・・。

ところで、先日来胃の調子が悪く、本日胃カメラを飲んだ(人生初)。十二指腸にちょっとした潰瘍があるようで(22年前にもなってますが・・・汗)、しばらく断酒及び食餌療法。呑気に生きているはずなのだが意外にストレスがあるのかな(苦笑)。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。

前にも似たようなコメントをしたことがありますが、ビル・エヴァンス(1929年8月16日 – 1980年9月15日)は、私の父(1929年7月7日 –  明後日の新暦七夕が誕生日!)と同年生まれです。他に音楽界で1929年生まれは、プレヴィン、ハイティンク、アーノンクール、ドホナーニ、ベルグルンド、スークなどがいますが、皆さん長寿でお元気なので、ビル・エヴァンス51歳になって1ヶ月での死は、余計に早く感じます。

ご紹介の伝説のヴァンガード・ライブが行われた1961年6月25日は、私の妻が生まれたぴったり1ヶ月後(私は翌1962年1月生まれ)です。おっしょるように、今はちょうど50年後です。もうエヴァンスの人生と同じくらいの時が経過したことになります。

・・・・・・死因は肝硬変ならびに出血性潰瘍による失血性ショック死であった。永年の飲酒・薬物使用で、人体の薬物・異物分解処理を司る肝臓に過剰な負担をかけ続けた結末で、疫学的には周知されている結果であった。肝臓疾患はエヴァンス自身も自覚していた長年の持病と言うべきものであったが、ことに晩年数年間は必要な療養を採ろうともせず、死の間際に至るまで頑なに治療を拒み続けた事実がある。結果病状を悪化させ、死を早めた。・・・・・・ウィキペディア 「ビル・エヴァンス」より
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B9

人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり・・・  織田信長(1534年 – 1582年 49歳で没)

>ところで、先日来胃の調子が悪く

夏目漱石は、1915年(大正4年)3月に京都を旅行し、そこで5度目の胃潰瘍で倒れ、6月より『吾輩は猫である』執筆当時の環境に回顧し、「道草」の連載を開始。1916年(大正5年)には糖尿病にも悩まされ、その年、辰野隆の結婚式に出席して後の12月9日、大内出血を起こし「明暗」執筆途中に死去(49歳10ヶ月)したといいます。最期の言葉は、寝間着の胸をはだけながら叫んだ「ここにみずをかけてくれ、死ぬと困るから」だったそうです。

お互い、体の調子を気にしなければならない年齢に差し掛かろうとしています。
くれぐれも、ご無理をなさらず、ご自愛ください。

返信する
雅之

そういえば、スコット・ラファロの命日7月6日は、私達夫婦の結婚記念日でした(今年は20周年)。
何だか因縁を感じます。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
ビル・エヴァンスの51歳での死はやっぱり早すぎますよね。本当に1度でいいから生に触れてみたかったと思います。

ところで、僕の潰瘍はどうやら遺伝のようです。父も祖父も曾祖父も潰瘍の気がありますので。
それにしても漱石の場合は現代だったら助かった病でしょうね。
エヴァンスの場合は、アーティスト独特の自虐性と言いたいところですが、ナイーブで繊細な彼としては怖かったんじゃないかと想像します。
いずれにせよ、50歳前後というのは体に気をつけなきゃいけない年齢ですね。

明日は20年目の結婚記念日ですね。おめでとうございます。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む