人の個性というのは面白い。個々が強烈であればあるほどチームとしての機能は困難になる。ならばと、逆に主張がない人間が集まったところで「予定調和」的な、極めてありきたりな結果しか生まないというのも事実。その点から考えると、音楽の世界におけるスーパーグループは得てして寿命が短い。そして、メンバーの組み合わせの変遷というのも、それが天才の集団ともなれば凡人には想像もできないほど激しい。
誰にも悩みがあり、そして誰にも幸せがある。それらは表裏。問題を抱えること自体が「人生」。何もない「生き方」なんてつまらないものだと・・・。
30余年前、「いとしのレイラ」を聴いて、感激した。恋する人への想いを歌うハードな前半と、インストゥルメンタルによる哀感に満ちる後半の対比に僕は「芸術」を感じた。そして、音楽的内容よりも、この楽曲が親友ジョージ・ハリスンの妻であったパティ・ボイドに捧げられた、ある意味「不実」の作品であったことが一層興味を引いた。
デレク・アンド・ドミノスもたった1枚のアルバムしか残さなかった。セカンド・アルバムのレコーディング中、エリック・クラプトンとジム・ゴードンが些細なことをきっかけに大喧嘩をしたことでグループはあっけなく解散してしまったからだが、それこそ宿命だったということであり、その1枚が「永遠の名盤」のひとつとして必ず挙がる傑作であることを考えると、そのために人生のある時期彼らは「集まる」ことを義務付けられていたのだと考えられなくもない(ましてや翌年急逝するデュアン・オールマンも参加しているのだ)。1970年の奇蹟。
Derek and the Dominos:Layla and other assorted love songs
Personnel
Eric Clapton (lead, rhythm, slide & acoustic guitars, lead vocals)
Duane Allman (slide and acoustic guitars)
Jim Gordon (drums, percussion, piano)
Carl Radle (bass guitar, percussion)
Bobby Whitlock (organ, piano, vocals, acoustic guitar)
Layla,
you got me on my knees
嗚呼、切実な想いがこの何気ないひとつのフレーズに慟哭とともに刻まれる。そしてクラプトンは告白する。
Tried to give you consolation
Your old man let you down
Like a fool,
I fell in love with you
You turned
my whole world upside down
男は弱い生き物だ・・・。
あまりに有名な「いとしのレイラ」以外の、このアルバムに収められる14曲はいずれも優れもの。それこそクラプトンのルーツであるブルースを基調にした傑作揃い。ビリー・マイルズ作のブルース”Have You Ever Loved A Woman?”(愛の経験)のソリッドでヘヴィーな響きに翻弄され、ジミ・ヘンドリクスの”Little Wing”(リトル・ウィング)に心奪われる。かっこ良すぎる・・・。
この録音とほぼ同時期にクラプトンは心から尊敬するジミ・ヘンドリクスを亡くし、翌年には交通事故により盟友デュアン・オールマンをも亡くしてしまうという悲劇に遭い、結果行き場所のない哀しみを慰めるために自身もドラッグの世界にはまりこんでゆく。何という生き様・・・。
音楽には「感情」がある。そして、アルバムには「歴史」がある。
久しぶりに「レイラ」を通して聴いて・・・。