ブーレーズ指揮BBC響のシェーンベルク「期待」(1977.4録音)ほかを聴いて思ふ

人間の深層にある漠とした不安を指して「悪魔」と定義するのだろうと思った。
不安とはそもそも実体がなく、人間の意識が作り出した幻。
しかし、そこに創造者の空想が絡み芸術が生まれたとするのなら、未来への不安というものも決して無意味なものではないといえまいか。原動力が正であれ負であれ、動くこと、生み出すことが大切だ。

原点回帰し、炸裂するエネルギーにひれ伏す思い。
“Sympathy For The Devil”はローリング・ストーンズ一世一代の名作だ。
ミックの詩が深い。曲も永遠の革新を保つ。あの、第三世界的リズムに乗るシンプルなコーラスの反復は麻薬のようであり、そしてそれを劈くキースの鋭利で暴力的なギター・ソロが魂までも切り裂くよう。

Pleased to meet you
Hope you guess my name
But what’s puzzling you
Is the nature of my game

「悪魔」とは一体誰(何)なのか?

・The Rolling Stones:Beggars Banquet (1968)

Personnel
Mick Jagger (lead vocals, backing vocals, maracas, harmonica)
Keith Richards (acoustic guitars, electric guitars, bass guitar, backing vocals, co-lead vocals)
Brian Jones (harmonica, slide guitar, backing vocals, sitar, tambura, Mellotron)
Bill Wyman (bass guitar, backing vocals, shekere, double bass, synthesizer)
Charlie Watts (drums, backing vocals, claves, tambourine, tabla)

アルノルト・シェーンベルクが、ついに自分のスタイルを確立する、ちょうどその頃の傑作こそ、1909年のモノドラマ「期待」。台本を依頼したマリー・パッペンハイムのオリジナル・テキストは、死体となった恋人を殺したのは本人だったというオチがあったが、シェーンベルクはそのあまりの現実感を嫌い、あくまで事件は「悪夢」であったこととし、テキストを大幅に改訂したといわれる。「悪魔」は幻でなければならないのである。

やがて女は恍惚とし、死体となった男を確実に手に入れた虚しい喜びのなかで、「おお、あなたがそこにいる・・・」と叫び、最後の言葉「私探していたの・・・」とつぶやく。
石田一志著「シェーンベルクの旅路」(春秋社)P150

ブーレーズ指揮BBC交響楽団の先鋭的でありながら、虚ろで空想感溢れる夢のような音楽作りに膝を打つ。

鬱蒼とした、暗い雰囲気の恐怖の森に入るべきか否か、女は思案するが、実体のない不安をよそ目に、ついに決意し森に入る。女の心の機微を見事に歌うジャニス・マーティンの巧みな表現力に舌を巻く。

ピエール・ブーレーズ・コンダクツ・シェーンベルク
・モノドラマ「期待」作品17
ジャニス・マーティン(ソプラノ)
BBC交響楽団(1977.4.14&15録音)
・月に憑かれたピエロ作品21
イヴォンヌ・ミントン(シュプレヒシュティンメ)
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
ピンカス・ズッカーマン(ヴァイオリン)
リン・ハレル(チェロ)
ミシェル・デボスト(フルート)
アンソニー・ペイ(クラリネット)(1977.6.20&21録音)
・山鳩の歌~「グレの歌」
ジェシー・ノーマン(ソプラノ)
アンサンブル・アンテルコンタンポラン(1979.9.15録音)

私は一人きりでどうしたらいいの・・・朝は私たちを別れさせてしまう。

マーティンの驚愕の歌唱が、シェーンベルクの恐怖の音楽が僕たちの魂を射る。

I stuck around St. Petersburg
When I saw it was a time for a change
Killed the Czar and his ministers
Anastasia screamed in vain

なるほど、「悪魔」とは、ロシア革命下、ニコライ2世一家を処刑したヤコヴ・ユロフスキーなのか?

I shouted out,
“Who killed the Kennedys?”
When after all
It was you and me

あるいは、ケネディ大統領の暗殺は、「悪魔」である自分を含む世界そのものによったものだというのか?
ミックは歌う。

Just as every cop is a criminal
And all the sinners saints
As heads is tails
Just call me Lucifer
‘Cause I’m in need of some restraint

職業の貴賤を問わず、誰の内にも天使があり悪魔があるということだろう。
世界は二元の中にある。不安という幻すら恐れず、包み込むべし。
ちなみに、アルバムA面1曲目のこの曲は、B面最初の”Street Fighting Man”に呼応する(シングル盤は両曲がカップリングだった)。

Hey! think the time is right
For a palace revolution
But where I live the game to play
Is compromise solution

後にこの作品をミックは否定するが、僕は永遠の名曲であると今でも思っている。
何事も「ヤル」なら今なのである。

ところで・・・、ブーレーズによる、クリスティーネ・シェーファーとの「月に憑かれたピエロ」は素晴らしかった。ただし、バレンボイムやズッカーマン、ハレルとの「ピエロ」も、狂気の洗練レベルが一層高く、捨て難い。よって、この録音についてはいつかまた書くことにする。
そして、「山鳩の歌」での、ジェシー・ノーマンの絶唱は文字通り言語を絶し、肺腑を抉り、聴く者に哀惜を見事に喚起する。

 

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