月末の「早わかりクラシック音楽講座」の準備をそろそろ始めねばと思い、いくつかメンデルスゾーンに関する文献を読み漁った。彼の音楽は、存命当時非常に高い評価を受け、ヨーロッパ中で愛好されていたようだが、死とともに年々評価が下がり、最悪時は誹謗中傷までされ作品そのものが闇に葬られることもあった。
音楽好きの中でも、一般的にはメンデルスゾーンというと「裕福な家庭に育ったため苦悩の経験がなく、芸術としての深みに欠ける」とレッテルが貼られることも多く、今回伝記などを具体的に読むまでは彼の人生が山あり谷ありであることを僕も知らなかった。
極めつけは、死後3年目に(すなわち1850年)、リヒャルト・ワーグナーにより『音楽におけるユダヤ人』という論文で徹底的に中傷され-ユダヤ人には良い音楽など創れない、メンデルスゾーンの作品も人まねで何の感動も与えない、など-、20世紀には「退廃音楽」としてナチスによって12年間葬り去られるという憂き目にもあっていることだ。
このブログにもこれまで何度か書いているように、僕はワグネリアンとまではいかないまでもワーグナー音楽が好きである。「トリスタン」、「マイスタージンガー」、「指環」、「パルジファル」などどれをとってみても、一日中でも聴き浸っていたいと思う瞬間が時折あるほど「毒性(?)」のある音楽ばかりなのだ。
しかしながら、上記のような事実を知ると、ワーグナーの人間性に関しては理解できないばかりか腹立たしくもなってくる。晩年には菜食主義者になり、「共苦、共生」という概念にまで到達したというが、人としての器量の小ささをどうしても感じてしまう。まぁ、音楽が素晴らしいならいいじゃないかといってしまえばそれまでだが・・・。つい最近も「バイロイトのお家騒動」が話題になっていたが、ワーグナー家というのは「自己中心的な我の強い」人々の集まりなのだろうか?親族同士でトラブルのも仕方ないか・・・。
ところで、メンデルスゾーンといえば圧倒的にヴァイオリン協奏曲が有名だが、少年時代からモーツァルトの再来とか神童とか讃えられていただけあり、実は数々の名曲を残している。
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番ニ短調作品49
チョン・キョン=ファ(ヴァイオリン)
アンドレ・プレヴィン(ピアノ)
ポール・トルトゥリエ(チェロ)
1978年、ちょうど30年前、チョン・キョン=ファ30歳の頃の録音。若きチョンが、巨匠トルトゥリエ、ジャンルを越えた多才なプレヴィンと組んだ奇跡のアルバム。メンデルスゾーンのピアノ・トリオというとマイナーな作品と思われがちだが、作曲当時、ロベルト・シューマンが「ベートーヴェン以来の傑作」と評しているように、一聴引き込まれる旋律美に富んだ魅力的な楽曲である。
※今日は満月だ。捨てるべし。朝は久しぶりに若松河田の某集会室でHoliday Breakfast Meeting。人と人の出逢いは不思議だ。やっぱりつながっていた。
⇒旧ブログへ
[…] ところで、付録の第1番トリオ。僕はこの作品を愛好しており、チョン、トルトゥリエ&プレヴィン盤を第1に推してきたが、本盤も人後に落ちない名演奏。傑作なり。(ヴァイオリン・ソナタの方は聴き込みが足りず言及不能。いずれまた。) ちなみに、週末の墨田区の講座はテーマがメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。本盤に収められるDVDを中心に鑑賞いただく予定。 […]