有言実行

bartok_zimerman_concerto_boulez.jpgとある大学の1年生に向けて「キャリア・プランニング」の授業を毎週受け持っていることは以前も書いた。本日も朝から90分の講義をもったのだが、いかに夢を実現させるか、そしてより具体的にリアルに夢や目標を描くことが大切だという話をした。あまりにベタな話で個人的にはあまり好きではないテーマなのだが、先方の要望ということもあり、いくつか事例を紹介しながら熱く語らせていただいた。

昨日のサンケイ・スポーツの1面にワールド・カップの日本代表に選ばれた本田圭祐選手の小学校卒業文集が掲載されていたので、それを学生諸君に紹介した。「将来の夢」と題したその作文は、12歳でこんなにも具体的に目標を書けるのかという驚きの内容である。他にも、メジャー・リーグのイチロー選手やゴルフの石川遼選手の小学校時の作文を紹介したが、いずれも信じられないほど具体的に「夢」が語られており、いわゆる「天才」というのは若くして夢や目標が明確で、しかもそれを具体的に公表しているところが共通点なんだとあらためて思った。まさに有言実行の精神なのである。学生も皆驚いていた(汗)・・・。

成功のポイントは「そう」なりたい姿をできる限り鮮明にしていくことなのだと・・・。

ところで、僕は残念ながらサッカーには詳しくない。大学には講師用の待機する部屋が用意されているのだが、そこでW杯の日本代表について何人かの先生が議論していた。みんなサッカー好きなようだ。異様に詳しい(いや、僕が単に音痴なだけなのかもしれない・・・)。

学生にモノを教える時、あるいは研修の講師などに携わるとき、サッカーから学ぶことは大いにあるらしい。球技音痴の僕でも、小学生の頃下手なりにも何年かサッカー少年団に在籍していた経験もあるからズブの素人でないゆえ、なるほど、そういわれればそうかもしれないと、後学のため少しサッカーのことは勉強をした方がいいかもしれないと考えさせられた(チームワークについてやメンタル面云々がもろにゲームに反映されることなど)。

ここのところ、クラシック以外の音楽に目を向けており、しばらく(といっても4,5日ほどだが)クラシック音楽を聴いていなかった。音楽の幅の広さと底の深さを知れば知るほど、泥沼化する(笑)。聴きたい音楽は五万とある。時間とお金がどれだけあっても足りない。限られた状況の中で、直感的に選んだものを、時間を捻出し、じっくりゆっくりとまずは焦らず聴いていくしかなかろう。

バルトーク:
・ピアノ協奏曲第1番
クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)
シカゴ交響楽団
・ピアノ協奏曲第2番
レイフ・オヴォ・アンスネス(ピアノ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
・ピアノ協奏曲第3番
エレーヌ・グリモー(ピアノ)
ロンドン交響楽団
ピエール・ブーレーズ(指揮)

ブーレーズが、ピアニストとオケをそれぞれ選別し録音したバルトークのピアノ協奏曲全集。第2番が一押しの名曲。同じ作曲家の名作「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」を彷彿とさせるピアノの打楽器的な響きと、そういう「前衛性」の中にいかにもと思わせる「調和」が融合しているところがバルトークの良さ。個々の才能を最高に活かしながら、かつ全体のバランスに優れているところがバルトークのかっこよささのだ・・・。遺作の第3番も捨てがたい(アダージョの心に染み入る哀しみと静けさはいかばかりか)。ピアニストそれぞれの個性、そしてオーケストラの個性が比較試聴できるこの音盤の価値は絶大だ。ブーレーズの指揮にもう少し「遊び」の部分が見られればなお良かっただろうに。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。
人間、「心技体」のバランスがとても大切ですね。「人と人との心のつながりの大切さ」は、スポーツの団体競技の部活などで体感させるのが、最も手っ取り早く確実な教育だと思います。そういうことって、理屈で覚えることではないですから・・・。
イチロー選手やゴルフの石川遼選手のお話は、一流演奏家でも共通の真理ですが、芸事では、ある分野に特化した英才教育がいかに重要か、ということですね。しかし、そういう天才を育てることが出来る親も、子供のために費やした時間や金銭面といった物理的な先行投資を含め、大したものだと尊敬します。一つ間違えれば、「○○バカ人間」を作り兼ねず、ハイリスク・ハイリターンな教育方法なので、親にも余程の信念と覚悟が必要なのだと思います。「言うは易く行うは難し」です、親の側も(笑)。
サッカーについて。
サッカーとオーケストラが似ている件は、以前にも何回かコメントしました。ショスタコ、朝比奈先生、チェリビダッケと、サッカーの関わりについても・・・。
>後学のため少しサッカーのことは勉強をした方がいいかもしれないと考えさせられた(チームワークについてやメンタル面云々がもろにゲームに反映されることなど)。
そうだと思いますよ(笑)。因みに私は、会社組織に置き換えれば、営業は点を取るのが仕事のフォワード、総務は最終ラインを守るディフェンス、だと思っています。
ところで、私がいつも愛読しているnikkei BPnetより、5月11日付時評コラム、≪猪瀬直樹の「眼からウロコ」≫〈日本と外国の若者の差がどんどん開く 「“ひとり”が怖い」と「ハーバード白熱教室」を観て〉に、サッカーと野球の話題があります。岡本さんのお仕事にも関係があると思われる内容なので、ぜひご一読ください。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100510/224871/?P=1
猪瀬氏が最後のほうでおっしゃっていた、「日本人は受け身のコミュニケーションだから、自分の分身をつくっていくだけになりがちだ。他者をかかえこんで、コミュニケーションをとっていくことができない。同質のチームワークには強いけれども、異質のチームワークには弱いのである」という言葉、私は、クラシックファンはもっといろんなジャンルの音楽を聴いて、違うジャンルの音楽ファンともよく会話して勉強しろ、という意味にも翻訳しました(笑)。
ご紹介の盤のご感想、同感です。あるいはブーレーズの指揮が、昔みたいにトンガっていても、もっと良かったかもです。事なかれ主義に傾き過ぎ・・・。その意味では、曲と演奏の適性で、グリモー、ロンドン響との3番の出来が、一番いいかなと感じています。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>一つ間違えれば、「○○バカ人間」を作り兼ねず、ハイリスク・ハイリターンな教育方法なので、親にも余程の信念と覚悟が必要なのだと思います。「言うは易く行うは難し」です、親の側も(笑)。
確かにそうなんでしょうね。親に勇気と覚悟が要りますよね。
サッカーについては勉強いたします。雅之さんからは前々からお薦めいただいてましたものね。素直に謙虚にですね(笑)。
猪瀬さんのコラム、ありがとうございます。非常に興味深いですね。「ハーバード白熱授業」については、残念ながら僕は観れなかったのですが、その日偶然妻は観たらしく、普段テレビなど観ない癖にその時ばかりは引き込まれて最後まで観てしまったという話を聴いておりました。
ただし、猪瀬さんの論調はどうなのかな?と思う部分も少なからずあります。まだ政治の世界に足を突っ込む前の彼の著作はほとんど読んでおり、多少右寄りの傾向を感じさせながらもあくまでニュートラルな思想に好感が持てました。
「日本人は受け身のコミュニケーションだから、自分の分身をつくっていくだけになりがちだ。他者をかかえこんで、コミュニケーションをとっていくことができない。同質のチームワークには強いけれども、異質のチームワークには弱いのである」
という言葉も、少し違和感を感じます。日本人の本来の姿は、他者を抱え込んで阿吽の呼吸でコミュニケーションができることだと思うんですよね。それが戦後、アメリカの影響で「あるべき姿」を忘れてしまったのではないかと。結局、今の若者を作りだしたのは、戦後生まれの親や戦後の教育によるわけですから、今の日米の状況を単純に表層的に比べても、正しい答は出ないように思うんです。
偶然同じ日にNHKで2つの番組が放送されたのかもしれませんが、実は計算されているようにも思いますし・・・。
猪瀬さんは、昔はもう少しまともだった(真の意味でとんがっていた)と思っているのは僕だけでしょうか・・・。それこそ昔のブーレーズのように。

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雅之

猪瀬さんの件、おっしゃるとおりですね。ここにも現在の日本の保守層が抱える迷いが感じられますが、今回は深入りいたしません。
ところで、こういうコメント書いても無意識のうちに私生活が反映してしまうものだなあと思いました。我が愚息は(勉強だけをやれ!)という父親の反対を押し切って(笑)、この春に高校に進学してからもサッカー部に入部。土日もサッカー部三昧(まあ、今のところ勉強が疎かになっているわけでもないのですが・・・、少し心配なのです)。
その息子に、様々な連絡等に必要不可欠という理由でこの春から携帯を持たせたのですが、家族とリビングでくつろいでいる時も、友達とひっきりなしにメール交換しているので、先日、ちょいとばかり叱ったのです。
お前ら、そんなに寂しいのかよ!情けねーなー!
体裁を気にしてトイレで弁当食べる女々しい(女性のかた、失礼)人間だけにはなるなよな!
というのが、オヤジの「老婆心」からくる、コメントの深層心理でした。だから我が家の教育方針上、猪瀬さんに拍手・・・なのです(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
お疲れさまです。
>というのが、オヤジの「老婆心」からくる、コメントの深層心理でした。だから我が家の教育方針上、猪瀬さんに拍手・・・なのです(笑)。
なるほど、そういう真意があったのですね。失礼いたしました。
世の中便利になった分、問題も出てきて、特に子どもの教育となると大変なこととお察しします。
しかし、ひっきりなしのメール交換というのも困ったものですね。直接会って深くコミュニケーションするというその真髄を教えなきゃいけませんね(笑)。

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