アンサンブル・ルベルのルベル「トリオ・ソナタ全集」を聴いて思ふ

rebel_tombeau_ensamble_rebel194優雅で壮麗なフランス・バロック音楽。
僕たちはその心地良さだけを求め、いかにも心に癒しを与えてくれるような崇高な旋律に身を委ねる。しかしながら、17世紀当時の、しばしば疫病が荒れ狂った危機的な時代において、民衆に限らず王侯貴族も、深層においては大変な不安との闘いを強いられた。そんな中で生み出された数多の音楽作品が、「心地良さ」だけの軽いものではないことは確か。

17世紀のヨーロッパを覆っていた黒雲は、金箔につつまれた寝室に身を横たえる宮廷人の心にさえ、実存への不安を呼び起こさずにはいられなかったに違いない。バロック音楽が調和と均衡に飽きたらず、対照と運動の中に自己を解放しようとつとめたことは、存在のこうした不安を解消したいという願いの、無意識のあらわれであったのかもしれない。
礒山雅著「バロック音楽―豊かなる生のドラマ」(NHKブックス)P45

世界は破壊と創造を繰り返す。否、創造と破壊はいわば同義。
新しいことをするたびに、そこでは必ず破壊が起こる。創造的なバロック音楽にこそ大いなる「破壊」が垣間見える。

ヴェルサイユの栄光とは裏腹に、当時の民衆の生活は、悲惨なものであった。宮廷の豪奢な生活やヴェルサイユ宮殿造営の費用に加え、領土拡大のために続けられる戦争の費用が、重税となって民衆、ことに農民の上にのしかかったからである。
~同上書P100

いまだ信仰と理性の調和があった時代の音楽たち。
ジャン=バティスト・リュリに師事したジャン=フェリ・ルベルの作品は、悦びに溢れ、その一方で真に哀しい。

ルベル:トンボー(墓碑)―トリオ・ソナタ全集「12のソナタ」
・「フローレ」イ長調
・「ジュノン」ホ短調
・「ヴィーナス」ヘ長調
・「リュリ氏のトンボー(墓碑)」ハ短調
・「パラス・アテナ」ニ長調
・「神々」ト短調
・「アポロン」変ロ長調
アンサンブル・ルベル
イェルク=ミヒャエル・シュヴァルツ(ヴァイオリン)
カレン・マリー・マーマー(ヴァイオリン)
ゴール・アン・シュローダー(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ピーター・ディルクセン(ハープシコード、オルガン)(1996録音)

特に、師への哀悼曲である「リュリ氏へのトンボー(墓碑)」の、悲哀の裏にある愉悦と、時折現れる情感豊かな明朗さの内に感じられる悲しみに、生と死が一体であり、死こそが生の始まりであることを暗に伝えるメッセージを僕は感じた。実に素敵な音楽。

 

ブログ・ランキングに参加しています。下のバナーを1クリック応援よろしくお願いいたします。


日記・雑談(50歳代) ブログランキングへ


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください