ピアノの下に潜って

chopin_2_horowitz.jpg「音浴じかん」では、ピアノの下でピアノの演奏を聴いていただくというコーナーがあるのだが、ピアノという楽器の構造上、実は下から一番良い波動を出しているようで、この体験をしていただいた人たちは皆一様に静かな瞑想状態に落ちてくれる(とても素晴らしい効果を発揮しているのだ)。

今日も、0歳児から2歳児までの4人の赤ちゃんがお母さんと一緒に1時間弱、愛知とし子の奏でる癒しの音楽に浸ってくれた。普通では味わえない新たな感覚・・・。何より不思議だったのは、演奏中でない(つまり音を発していない)ピアノの下でも、赤ちゃんたちが吃驚するほど大人しくすやすやと眠り、まったく乱れのない平穏な空気に満たされていたこと(信じられないような高次波動が発せられているのか?)。

1960年製のベーゼンドルファーだからか、あるいはエルーデ・サロンそのものの場の波動が高いのか、そのあたりは定かでないが、ともかくピアノの下に布団を敷いて寝っ転がると大人でも極めて気持が良いのだから堪らない(ましてや「癒し」の音楽が奏でられているとなるとなおさらだ)。

そういえば、「音浴じかん」が始まってちょうど1年になる。本当に時間の経過は早い。そして、その間の様々な経験から、こういうイベントが進化・深化していく様を目の当たりにして来て、何よりご参加いただくお客様のお陰だと、あらためて感謝したい、そんな思いに駆られた。ただ単に音楽を楽しむというだけでなく、音に包まれることで、「人間力」を鍛えることってできるかも・・・、そう考えると嬉しくなる。

ピアノの話題になったついでに、今年生誕200年という記念の年にあたるショパンを久しぶりに聴いた。ピアノ・ソナタ第2番「葬送」(週末の「講座」で「エロイカ」シンフォニーを採り上げることも考慮に入れつつ)。

ショパン:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調作品35「葬送」
ウラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ)

僕にとって葬送ソナタの模範はこのホロヴィッツ盤である。これはアルゲリッチを聴こうが、ポゴレリッチを聴こうが、あるいはツィマーマンや他の誰かの実演を聴こうが、20世紀を代表する巨匠のこの壮絶な解釈が耳から離れない(もはや日常的にほとんど聴くことはなくなったが)。特に、こういう連日の雨日に、独り静かに聴くショパン(第3楽章中間部の心に染み入る優しき調べ!)は、現実逃避という意味でも、明日への活力という意味でも何物にも代えがたい魅力を発する。

今日という過去を一旦葬り去り、明日に向かって自身を生まれ変わらせようとする意志・・・。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。
すやすや眠る幸せそうな赤ちゃんたちの写真を見て、前回のコメントの続きを・・・。
その昔、まだ二人の我が子が生まれる前の新婚時代、家内と二人で長野の美ヶ原高原に行った時のことです。
やはり両親に連れられた三歳くらいの、男の子が牛の放牧を見て、「牛さん、かわいい、かわいい」と喜んでいたのですが、お父さんから、「この牛さん、○○ちゃんが食べるお肉になるんだよ」と教わった途端に、「かわいそうだよう!、そんなの、いやだ!いやだ!」と大泣き・・・。それを見て、なんてその男の子の心は純真なんだろうと、私達夫婦は感動したものでした。
子供時代のあの優しい心、みんな、どこに忘れて大人になるのでしょう?
ショパンばかりが目立ち、シューマンが霞む、対照的な今年。
あえて岡本さんの推薦盤にシューマンで対抗しましょう(笑)。
シューマン「謝肉祭」 ピアノ 小林五月
http://www7b.biglobe.ne.jp/~satsuki-klavier/schumann02.html
なぜこの話題で「謝肉祭」なのかは、おわかりですよね(笑)。
シューマンのピアノ作品を聴いていると、無邪気な子供時代に、少しだけ戻った気分になれます。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ピアノの下の空間って本当に不思議ですね。
赤ちゃんが即刻見事に眠りに落ちていきました。
>子供時代のあの優しい心、みんな、どこに忘れて大人になるのでしょう?
ですね。慣れ(習慣)っていうのは怖いものです。
確かに今年はショパンばかりが注目されてシューマンはもひとつですよね。小林五月のシューマンは未聴ですが、面白そうですね。シューマン・フリークの雅之さんご推薦盤とあらばなおさらです。
採り上げたホロヴィッツ盤には、ショパンのソナタのほかにシューマンのアラベスクや子どもの情景、トッカータも収録されています。いずれも最高の名演です。昨日久しぶりに何度も繰り返して聴いてしまいました。
>シューマンのピアノ作品を聴いていると、無邪気な子供時代に、少しだけ戻った気分になれます。
同感です。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む