浪人時代のこと

elgar_bernstein_bbc.jpg浪人時代のことを突然思い出すことがある。僕は駿台京都校(当時は二条城のそば丸太町にあった)に通っていたのだが、夏季講習の時だったか、親戚の家に1ヶ月ほど居候したことがあった。その間の記憶は妙に生々しく、帰宅途中突然夕立に遭い、ずぶ濡れのまま家に戻り、とにかく洗濯機を回したこと。初めて料理したのか、鰻の蒲焼を冷蔵庫から取り出してレンジで温めて食したものの、頭からバリバリと音をさせながら食べたこと。勉強しながらFM大阪を聴いていて(確かクレンペラーの「マタイ受難曲」が流れていたと思う)、ワルター&ウィーンのSP盤復刻ボックスが発売されたばかりで、視聴者プレゼント(1名にボックス・セットが当たる)があったので早速応募したら、何と当選し忘れた頃に自宅に送られてきて狂気乱舞したこと(このセットはいまだに大事に保管している)。

今となっては古き良き思い出たちだが、目標に向かってとにかく頑張っていた、生きていたあの頃が懐かしい。

受験といえば、我々の時代、国語の試験には必ずと言っていいほど、小林秀雄先生の評論がネタに出題された。ティーンエイジャーの頃は、何て難しい人なんだろうという印象しかなかった。ところが、歳を重ねるにつれ少しずつ「言わんとすること」がわかるようになった。小林先生は言う。ある作家のことを知りたいならば全集を読め、と。「なるほど!」と思った。それからは読書にせよ、音楽鑑賞にせよ、気に入った作家、作曲家に関しては全てを享受しようと努力するようになった。

ベートーヴェン、ブラームスに関しては「言いつけ」を守った。いわゆる伝記を読み、出版された作品の全てを聴き、知ったつもりになった。それでも、「世界」は広い。興味のある作曲家、音楽は五万とある。到底生きているうちに聴き尽くすことが不可能なくらい「モノ」は溢れている。それでも、好きな芸術家については全部を知らねばならぬ、という考えは変わらない。ひとたび興味を抱いたら、すべてを知りたくなる。性(サガ)というものだ。

昨日、エルガーの「エニグマ(謎)」を久しぶりに聴いた。聴いて、ますます「彼のこと」を知りたくなった。だから、早速「愛の音楽家エドワード・エルガー」を手に入れた。そして、また「エニグマ(謎)」変奏曲を聴いた。

エルガー:
・自作の主題(「謎」)による変奏曲作品36
・「威風堂々」作品39~第1番ニ長調&第2番イ短調
・ムガール皇帝たちの行進曲~「インドの王冠」作品66
レナード・バーンスタイン指揮BBC交響楽団

80年代の、晩年のバーンスタインの様式を踏襲した「ユックリズム」の極致。人によっては抵抗を覚えるだろうが、やっぱり僕は好き(最高!!)。バーンスタインほど人間らしい音楽家はいまい。ひょっとすると、エルガーもそういう人だったのかもしれない、などと夢想してみる・・・。雅之さんがおっしゃる通り、確かに、この曲にはブラームスが木霊する(例えば第1交響曲)。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>好きな芸術家については全部を知らねばならぬ、という考えは変わらない。ひとたび興味を抱いたら、すべてを知りたくなる。性(サガ)というものだ。
それは大切なことですよね。しかし、こちらもそれなりの人生経験を重ねないと決して深い理解は出来ない作品が、ベートーヴェンにもブラームスにもあります。
>「愛の音楽家エドワード・エルガー」
著者の水越健一さんは、前々回話題にしました、日本エルガー協会公式サイト 「エドワード・エルガー/希望と栄光の国」の管理人さんなんですよね。あのサイトと合わせて読むと、とても勉強になりますね。
・・・・・・ウソでも芝居でもいいから「愛」を感じさせてくれない演奏は全てペケである。これは演奏だけでなく評論にも同じことがいえる。日本では、エルガーに対してリスペクトも愛のカケラも感じられない評論が何と多いことか。
有名な曲になってしまったため、「愛の挨拶」とチェロ協奏曲は、最もカスみたいな演奏が最も多い曲目である。
それらのダメ演奏は、演奏家たちは、ただ「レパートリー」にしているだけ。何の「愛」をも感じさえてくれないものばかり。
だから、聴く方にも真贋を見極める感覚が必要とされる。・・・・・・(同サイトより)
http://washichi.hp.infoseek.co.jp/concert/tokyo2007.html
バーンスタインの「エニグマ」も、確実に「愛」を感じさせてくれますよね(笑)。
>バーンスタインほど人間らしい音楽家はいまい。
同感です。
この前、ウィーンPOとのシベリウスの第1、第2、第5、第7交響曲の演奏をDVDで初めて観ましたが、映像で観ると、彼の晩年のゆっくりとした演奏はCDで音だけ聴くより説得力が格段に増しますね。「エニグマ」も映像、残ってないのでしょうか?
なお、マーラーは生前エルガーのスコアに興味を持ち、ニューヨークで「エニグマ」を演奏したことがあったようですから、その意味でもマーラーのスペシャリストであったバーンスタインの演奏は、興味深いです。
>この曲にはブラームスが木霊する(例えば第1交響曲)。
同感です。
「エニグマ」には、モントゥー、ボールト、バルビローリなどの素晴らしい名演の録音が多々ありますし、デュトワ指揮モントリオール管なども隠れた名盤なのですが、前回ご紹介の盤でのウィーンPO(指揮、ガーディナー)の演奏も、ブラームスとの関係という意味で、とても価値がある演奏ですね。
値段も手頃だし、ブラームスとの比較の意味でもぜひ購入し聴いていただきたい、こちらも隠れた名盤をご紹介いたします。こちらも、確実に「愛」を感じさせてくれます。
ブラームス:ハイドン変奏曲/エルガー:エニグマ変奏曲 オイゲン・ヨッフム指揮ロンドン響
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1466209
岡本さんの「愛すべきメンタリティー」が、エルガーをお好きになられないはずはないと、以前から確信しておりました。独身時代にブラームスにゾッコン惚れこまれたということであれば、ご結婚後はもう、エルガーに向かうしかないでしょう、作曲家の人生に照らし合わせても・・・(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>こちらもそれなりの人生経験を重ねないと決して深い理解は出来ない作品が、ベートーヴェンにもブラームスにもあります。
おっしゃるとおりですね。そういう意味では一生かけて対峙してゆく大事な作曲家です。
ご紹介のサイトの言葉、重みがあります。
>ウィーンPOとのシベリウスの第1、第2、第5、第7交響曲の演奏をDVDで初めて観ましたが、映像で観ると、彼の晩年のゆっくりとした演奏はCDで音だけ聴くより説得力が格段に増しますね。
そうですね。晩年の録音は映像でも残されているものが多く、どれも興味深いですよね。
ご紹介のヨッフム盤は未聴です。「こちらも、確実に「愛」を感じさせてくれます。」ということでしたらぜひ聴いてみたいです。
>独身時代にブラームスにゾッコン惚れこまれたということであれば、ご結婚後はもう、エルガーに向かうしかないでしょう、作曲家の人生に照らし合わせても・・・
なるほど!!(笑)

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