コリングウッド指揮ロイヤル・フィルのエルガー「夢の中の子どもたち」(1964録音)ほかを聴いて思ふ

シングルになった「ピープル・ゲット・レディ」のビデオ・クリップがいい。このレコードを手にしている貴方だから当然目にしていると思うが、あれこそジェフ・ベックである。旧友ロッド・スチュアートがベックに手紙を出して呼びよせるという設定が限りなく白々しくておかしいが、それに応えてベックが貨物列車に乗って来るのが最高である。まるであれでは豚か牛だ。しかし、それがベックの場合、何故かしっくりときてしまう。
(渋谷陽一)

当時、ジェフ・ベックの5年ぶりのアルバムということで、盟友ロッド・スチュアートらが参加した”Flash”は、全世界に期待と希望をもって迎えられたと記憶する。全編ベックのうねるギター・サウンドに満ちる傑作、中でも、カーティス・メイフィールド作”People Get Ready”の、懐かしさと新しさの入り混じった何とも表現し難い音調は、今でもまったく色褪せない色香溢れるもの。渋谷さんの言葉通り、あのビデオ・クリップはとても印象に残っている。

So people get ready
For The train a comin’
You don’t need no baggage
You just get on board
All you need is faith
To hear the diesels humming
Don’t need to ticket
You just, you just thank the lord

2018年戊戌の年頭にこそ相応しい音楽。あるのはただ神への感謝のみ、何も持たずに進めば良いということだ。

・Jeff Beck:Flash (1985)

Personnel
Jeff Beck (lead vocals, guitar, production)
Jimmy Hall (lead vocals, background vocals)
Rod Stewart (lead vocals)
Karen Lawrence (lead vocals)
Jan Hammer (Fairlight CMI)
Tony Hymas (keyboard, production)
Duane Hitchings (keyboard)
Robert Sabino (keyboard)
Carmine Appice (drums)
Jay Burnett (drums)
Jimmy Bralower (drums)
Barry DeSouza (drums)
Tony “Thunder” Smith (drums)
Doug Wimbish (bass)

激しくうなるギター・サウンドでありながら、どこか優しく静かな音色は、英国紳士らしい品格がある。おそらくその「品」こそが、ベックの人気の鍵なのだろうと思う。

ところで、ドイツ音楽を定石にしながら、独自路線を編み出し、かつ高踏的英国紳士の象徴を示すのがサー・エドワード・エルガーの作品群。真冬の夜半に忍び寄る、愛撫の如くの柔和な音楽の内側にある暗澹さが何よりの魔性。

エルガー:
・メヌエット~「伊達男ブランメル」
・夢の中の子どもたち~小管弦楽のための2つの小品作品43
・愛のあいさつ作品12
ローレンス・コリングウッド指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1964録音)
・メヌエット作品21
・5月の歌
・ローズマリー
サー・ネヴィル・マリナー指揮ノーザン・シンフォニア管弦楽団(1970録音)
・ロマンス(バスーンと管弦楽のための)作品62
マイケル・チャップマン(バスーン)
サー・ネヴィル・マリナー指揮ノーザン・シンフォニア管弦楽団(1970録音)
・セヴィラーナ作品7(1970録音)
・抒情的なセレナード(1970録音)
・3つの性格的小品作品10(1970録音)
・カリッシマ
・ミーナ
サー・ネヴィル・マリナー指揮ノーザン・シンフォニア管弦楽団(1970録音)

踊る、踊る、エルガーは踊る。
音楽は終始悲しみを包含し、そして喜びに満ちるのだ。

そして、ベックのギターを伴わない(その代わりロン・ウッドの控えめなギターを伴う)、オーケストラを伴奏にロッドが歌う”People Get Ready”の相変わらずの透明感。想いのこもった壮絶な音楽は、聴く者を見事にぶちのめす。

・Rod Stewart:Unplugged… And Seated (1993)

Personnel
Rod Stewart (lead vocals, banjo)
Ronnie Wood (guitar)
Jeff Golub (guitar)
Jim Cregan (guitar)
Don Teschner (guitar, mandolin, violin)
Carmine Rojas (bass guitar)
Charles Kentiss III (piano, organ)
Kevin Savigar (piano, organ, accordion)
Phil Parlapiano (accordion, mandolin)
Dorian Holley, Darryl Phinnessee, Fred White (backing vocals)
Strings arranged and conducted by Jeremy Lubbock

芸術が負の美学であることを証明するようなありのままの音楽。
何とも妖しい、色気のあるロッドの声質は、年齢を重ねるごとに深みを増す。
同時に、コラボレーションの妙。

人は、人との関係によってその状態が自ずと決定されるのだという。
仲間があって、そしてその関係が円満であることが大事なのだという。
良い音楽は、人を幸福にする。

 

ブログ・ランキングに参加しています。下のバナーを1クリック応援よろしくお願いいたします。


音楽(全般) ブログランキングへ

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む