カラヤン指揮ウィーン・フィルの「ツァラトゥストラはかく語りき」(1959.3録音)ほかを聴いて思ふ

And through the window in the wall, comes streaming in on sunlight wings
A million bright ambassadors of morning
“Echoes”

ピンク・フロイドの音楽には光がある。
23分を超える「エコーズ」の神秘。目に見えない音の波動の喜び。取っつきやすさと前衛性の混合。インストゥルメンタル部の恍惚と、ギルモアとライトによるハーモニーのあまりの美しさ。陰陽の対比の中で生み出された傑作は、発表から50年近くを経ても相変わらず斬新で心地良い。

事前には何も作曲せず、フロイドは1971年1月の1ヶ月間アビーロードを借り切り、「誰でも何時でも何らかのアイディアが浮かび次第、それを書き留めた」。間もなくインスピレーションが浮かびはじめ、結局、「36種類のフレーズが浮かび、それらの中には互いに関連しているものも、していないものもあった。「エコーズ」はそこから生まれた。
ニコラス・シャッフナー著/今井幹晴訳「ピンク・フロイド―神秘」(宝島社)P167

ほとんど即興的な創造物だったという事実に驚愕。

・Pink Floyd:Meddle (1971)

Personnel
David Gilmour (guitar, lead vocals, harmony vocals, bass, harmonica)
Roger Waters (bass, acoustic guitar and lead vocals)
Nick Mason (drums, percussion, vocal phrase)
Rick Wright (piano, organ, co-lead vocals, EMS VCS 3)

美しい。

汝、偉大なる星よ。汝が光をあたえるものをもたなければ、汝の幸福とはなんであったろう。

何も持たず、ただ与え続けることのできる存在。そして、朝焼けがあり黄昏があろうと、常にそれは孤独に在り続けるもの。もしも人間が太陽の如くの存在になり得るのなら、それこそを「超人」とニーチェは称したのかもしれない。

ツァラトゥストラはまるで釈迦のようだ。

この世のものならぬ寂光のうちに、何時間か何秒か、私はまさしく身を置いていた。平家納経は装飾的といわれる。たしかにそうに違いないが、それだけに限定するのは、こういう景色を見たことがない人だ。彼らはある日ある時の落日を、忠実に写しているにすぎない。その上に構わず法華経を書いたのは、おのずから神仏混淆の世界を表徴しているように見える。
それは一瞬の夢にすぎなかった。が、日想観とか水想観というものが現実にあるとしたら、あのような体験をいうのだろう。もし私が信じているならば、今もあのとおりの景色が目前に現われるに違いない。
白洲正子「近江山河抄」(講談社文芸文庫)P92-93

太陽の光と熱によって焼かれ、冷たい月の霊力によって流される様。
俗人リヒャルト・シュトラウスがニーチェに触発され、創造した交響詩は、燦然と光り輝く灼熱の音楽と暗闇に沈思黙考する音楽の対比によって日月を模したものでなかったか。

スタンリー・キューブリック監督が「2001年宇宙の旅」のメイン・タイトル曲に使用したカラヤン指揮ウィーン・フィルの演奏は、60年近くの時を経ても明るさに陰りが見えない究極のマスターピース。また、「ティル・オイレンシュピーゲル」の剽軽さとアイロニカルな表情は、生真面目なカラヤンをして濃密で色香溢れるものに転化される。そして、楽劇「サロメ」から「7つのヴェールの踊り」の、煌びやかな色彩感満ちる音はまさにカラヤン・マジック。

リヒャルト・シュトラウス:
・交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30(1959.3録音)
・交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28(1960.6録音)
・楽劇「サロメ」作品54~「7つのヴェールの踊り」(1960.9録音)
・交響詩「ドン・ファン」作品20(1960.6録音)
ヴィリー・ボスコフスキー(ヴァイオリン独奏)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

全盛期のカラヤンの棒は美しい。
「ドン・ファン」の余裕綽綽たる響きに思わず涙。

ところで、今夜の月は、265年に1度のスーパー・ブルー・ブラッド・ムーンらしい。
その上、まもなく皆既月食が始まる。宇宙の生業の奇蹟。

Us, and them
And after all we’re only ordinary men
Me, and you
God only knows it’s not what we would choose to do
Forward he cried from the rear
And the front rank died
“Us And Them”

同じくギルモアのリードにライトの極めつけのハーモニーが見事。

・Pink Floyd:The Dark Side Of The Moon (1973) (2003 Digital Remaster)

Personnel
David Gilmour (vocals, guitars, Synthi AKS)
Nick Mason (drums, percussion, tape effects)
Richard Wright (keyboards, vocals, VCS 3, Synthi AKS)
Roger Waters (bass guitar, vocals, VCS 3, tape effects)

もはや僕が何かを語るのもおこがましいロック史上最大の名盤。
無言になれ。

 

ブログ・ランキングに参加しています。下のバナーを1クリック応援よろしくお願いいたします。


音楽(全般) ブログランキングへ

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村


1 COMMENT

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください