人間観察

haydn_92_99_asahina.jpg4月から大学の3ヶ月連続講座を3クラス受け持っていたが、その全てが本日無事終了した。あとは成績評価をしなければならず、もう1日ほど大学に缶詰めにならないといけないが、合計150名ほどの若者と新しい交流が持て、とても楽しく有意義なひとときが過ごせたことに感謝である。

それにしても3クラスがそれぞれ別の個性を持ち、雰囲気だけでなく成績などの傾向に大きな違いがあることに驚かされる。個々のモティベーションの高さがそのままクラス全体のエネルギーに影響を及ぼすとでも言おうか・・・。

例えば、あるクラスは欠席者が少なく、授業中も静か(というより真面目)で、最後のプレゼンテーションなどもレベルが非常に高く、良い感じで終了した。別のクラスは、最初の授業からテンションの高い学生が多く、いわゆる「やんちゃ」で授業中の私語も多く、どちらかというと手を焼いた方だが、出席もきちんとするし、宿題もきちんとやってくる。もちろんプレゼンテーションさせると見事にこなす学生も多い。結局、私語が多いというのはそれだけエネルギーがあり余っており、元気だということ。そういう学生諸君は極めてかわいい。

そして、今日のクラスはというと、残念ながら少々暗い。個々人は話をしてみると決してそうではないのだが、全体としてエネルギーが低い。不思議なことに、教室で着席する時もいつも前半分が空いており、こちらが指示をして席替えをし、前に詰めさせないと動かない。まったく自発性に欠ける。最後にある学生に声をかけたら、「このクラスは飲み会すらしない、盛り上がらないのでつまらない」と嘆いていた。誰かリーダーシップをとる人がいないとやっぱり二進も三進もいかないのだろう。「元気」の元ってやっぱり人と人とのつながりが生み出すものなのかな。

ハイドン:
・交響曲第92番ト長調「オックスフォード」
・交響曲第99番変ホ長調
・朝比奈隆インタビュー(1975.10.24)
朝比奈隆指揮ベルリン・ドイツ交響楽団

これは本当に軸のしっかりした地に足のついた朝比奈らしい重厚な演奏。先生のモーツァルトやベートーヴェンは皆そうだが、彼の音楽に慣らされると、いわゆる一般的な演奏が「軽く」聴こえてしまうのだから不思議なものだ。解説で元シカゴ響のヘンリー・フォーゲル氏が「朝比奈が常に、彼のサウンドをトップダウンではなくボトムアップで組み立てるがゆえに、第92番交響曲の冒頭の第4音から―そこで低音弦楽器が入ってくるのだが―豊穣な響きが繰り広げられる」と記しているが、そこにあの朝比奈サウンドの魅力が集約されていることは間違いない。

それに、初の大フィル・ヨーロッパ楽旅の際(ちょうどベルリンのSFBゼンダーザールで「エロイカ」が演奏された日だ)に収録された朝比奈のインタビュー、残念ながらドイツ語ゆえ話の詳細は不明だが、ともかくその流暢なドイツ語に吃驚した!いずれ近いうちに妻に訳して解説してもらおうか・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>それにしても3クラスがそれぞれ別の個性を持ち、雰囲気だけでなく成績などの傾向に大きな違いがあることに驚かされる。個々のモティベーションの高さがそのままクラス全体のエネルギーに影響を及ぼすとでも言おうか・・・。
それを、そのまま国レベルに当てはめることもできるでしょうね。日本、中国、韓国といったように・・・。
ただ、私は省エネ作戦も悪くないと思いますよ。守りを固めて、力をため込んで、ため込んで、相手を油断させておいて、一転カウンター攻撃というのも賢い作戦です。
サッカーでも、野球でも、将棋でも、音楽でも、守備重視の手堅い作戦は、その道のうるさ型や玄人筋からは、とかく非難され、嫌われるものです。
※例 将棋「穴熊囲い」・・・盤の端っこに王様を持っていってガチガチに固める、極端な守備重視の戦法・・・、いかにも素人っぽく消極的と、よく非難される戦法です。「穴熊」ばかりやっていたら、将棋は上手くならないと・・・。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%B4%E7%86%8A%E5%9B%B2%E3%81%84
でも「穴熊」は、序盤は守備ばかりの消極的な作戦ですが、ひとたび攻めに転じたら、地に足が付いているぶん、これほど怖いもの知らずの凄まじい破壊力はありません。今はおとなしい若者も、まだ守りに手数をかけている時間であり、攻撃のチャンスをじっと狙っているだけなのかもしれません。エネルギーをコンスタントに放出し続けていては、ここぞという時の爆発力が弱いというのは、火山も、サッカーのストライカーも同じだと思います(笑)。
>朝比奈が常に、彼のサウンドをトップダウンではなくボトムアップで組み立てる
1970年代までの先生は逆だったようですね。昔のトップダウンの先生があったからこそ、晩年のボトムアップの先生の、圧倒的な存在感を示し得たのでしょう。最近は、若きトップダウンの先生も晩年以上に魅力的だと感じることが多々あります。
※ ブルックナー 交響曲第5番 朝比奈隆&大阪フィル(1973)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1911734
ところで、サッカー好きだった先生の、サッカーっぽいエピソードだなあと強烈に印象に残っているものを・・・(当然、岡本さんもよくご存じの話です)。私は、監督とPKを外したエース・ストライカーの話みたいだと思ってるんです。
・・・・・スコアを見ながら氏は、このラヴェルの編曲(展覧会の絵)に特徴的なトランペットのソロについて語ってくれた。
「間違えてもいいから、思い切って吹け、と言ったんですよ。真ん中(《サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ》)に、ミュートを付けた長いソロがあるでしょう。ここは突っかかりやすいんです。ですから奏者が神経質にならないよう、小言をあまり言わないようにして、大丈夫だ、好きなように吹け、とだけ言いました。ドイツのオケでもここはよく吹き損なうんですよ。私がハンブルクで指揮した時、プレイヤーは契約で来たチェコ系の、ヨーロッパ一、二の腕達者と言われた男でしたが、一つでもエラーをやったら辞めると大見得を切っていまして、本当にそういう約束だったんだそうですよ。ところが見事にエラーしちゃったんですな、この箇所で。そうしたら彼、もうガックリして、済んだら楽屋の階段に楽器を抱えたままうずくまって、オレはもう二度とこのホールには来られないって泣いている。オケのマネージャーが、あの約束はあくまで話だ、いまお前に辞められたらこっちも困るんだ、なんて一生懸命慰めてました。つまり、それだけトランペットにとっては難しいけど、聴かせどころなんです」・・・・・・
 ムソルグスキー(ラヴェル編曲)「展覧会の絵」朝比奈隆&大阪フィル(1999 愛知県芸術劇場コンサートホール)CD EXTON KJCL00004 東条碩夫氏によるライナーノーツ「恩師の思い出の曲《展覧会の絵》」より
ご紹介のハイドンは未聴です。同じシリーズの「エロイカ」が、御教示の通り素晴らしかったので、こちらも大いに期待出来ます。聴きます。

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岡本 浩和

雅之様
おはようございます。
>それを、そのまま国レベルに当てはめることもできるでしょうね。日本、中国、韓国といったように・・・。
なるほど、その考え方は面白いですね。
>相手を油断させておいて、一転カウンター攻撃というのも賢い作戦です。
それくらい知恵が働くならいいのですが、今の大学生たちを見ていると、残念ながらそこまでは考えられない、悪い意味での優等生、つまり言われたことしかできない人間になっているように思います(もちろん環境や成育歴にもよるのでステレオタイプ的に考えちゃいけないのですが)。
>今はおとなしい若者も、まだ守りに手数をかけている時間であり、攻撃のチャンスをじっと狙っているだけなのかもしれません。
であれば素晴らしいですね・・・。
>エネルギーをコンスタントに放出し続けていては、ここぞという時の爆発力が弱い
このあたりのバランスは大人でも難しいですよね。
ところで、ご紹介の朝比奈73年のブル5は名演ですね。
つい先日、エルーデ*サロンのオープニングイベントにふみ君が来まして、朝比奈談義で少々盛り上がった時、ちょうどこの音盤について彼がべた褒めしてました。(偶然にも・・・)久々に聴いてみようかと思っていたところだったので驚きです。
ご紹介の東条氏によるエピソードは朝比奈先生らしいですね。
ハイドン、ぜひお聴きください。

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