吉松版「タルカス」とオーケストラ版「トミー」

tommy_lso.jpgついに吉松版「タルカス」を聴いた。
いやこれは真っ向から挑んだ素晴らしい名編曲で、3月のオペラシティでの初演の場に立ち会えなかったことが悔しくて、その情報を知らなかった自分に無性に腹が立った。
先日たまたま新宿のタワーレコードに寄ったとき、このCDは店頭になかった。代わりに、8月5日に入荷しますとの札。どれくらい評判が高いのかは不明だが、少なくとも普段クラシックを聴かない連中、純粋なロック・ファン、プログレ・ファンも手を伸ばしているのだろうことが容易に想像できる。それにしてもこの実況録音を聴いていて、当日の聴衆の興奮ぶりも手に取るようにわかるし、ライナーノーツに書いてある通り、EL&Pファンも当然詰め掛けていたようだから、いわゆる通常のクラシック・コンサートとは随分違った雰囲気だったのだろう。嗚呼、できれば近いうちに再演してもらえないだろうか、この音盤を聴きながらそんな想いがこみ上げてきた。

ただし、音を聴き始めてしばらくは、正直ヴォーカルが入っていないことに少しだけ違和感と残念さを覚えた。しかしながら、吉松先生のアレンジ能力の賜物だろう、そんなことはあっという間に気にならなくなる・・・。
それと、ひょっとするとこういう音楽は音盤で繰り返し何度も聴くものではなく、コンサート会場で聴いたその時の衝撃を大事にとっておく、そんなニュアンスを持ったものなのではないかとも考えた。というのも、繰り返し聴くにつれ、編曲の素晴らしさ以上に原曲のアレンジの凄さ-やっぱり「タルカス」はロック音楽なんだということをあらためて感じたという何とも皮肉な結果が僕の中で起こったから。

そんなことを考えながら、そういえばロックの名曲名盤をオーケストラ化したものがかつてもあったなぁと思い出し、久しぶりに聴いてみた。

TOMMY as performed by the London Symphony Orchestra & chamber choir with guest soloists

Pete Townshend
Sandy Denny
Steve Winwood
Roger Daltry
Richie Havens
Ringo Starr
Rod Stewart…..etc.

tarkus_yoshimatsu.jpgロック・オペラ「トミー」はThe Who、というよりPete Townshendが生み出した屈指の傑作である。10数年前ミュージカル化された時も、その舞台をロンドンで観たが、それはそれは本当に素晴らしいもので、何より音楽の持つエネルギーに圧倒された(作曲当時、Peteはインドの聖者であるミーハ・ババの教えに傾倒していたようで、例えば「全ての物は、創造された後、進化し、やがてそれは生まれ変わり、退化するが、そこでやっと悟りを得る」という言葉にインスパイアされ、「トミー」を創出したのだと)。

ところで、この物語の内容は実にとんでもないものである。あまりにシリアスで、映画化された当時、日本では不人気で、あっという間に打ち切られたと聞くが、21世紀の今だったら意外にもっと受け入れられるかもしれない(天才といわれる芸術家は皆そうだが、Pete Townshendもやはり未来を見据えて創造していただろう)。

ちなみに、このオーケストラ版「トミー」を聴いても、やっぱり原曲のロック版がいかにすごいかがわかってしまう。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。
吉松版「タルカス」、聴かれましたか!!
オーケストラの通常のレパートリーに、充分に定着し得ますよね。あらゆる機会にコンサートの曲目で活用できそうな名編曲だと思います。ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、シカゴSO、ニューヨーク・フィルなどでも、ぜひ演奏していただきたいです。例えば、前半「タルカス」、後半「春の祭典」といったプログラムでも、集客は大いに望めそうです。
いや、岡本さんの「早わかりクラシック音楽」でもぜひ採りあげてください(直近のエルガーの会のロスタイムにでもいいです、吉松版「タルカス」、受講生にぜひ聴かせてあげてください!!)。私からの、強いリクエスト及び企画提案とさせていただきます。
前にも一度コメントしましたが、The Who「トミー」のストーリーは、村上春樹ワールドを想起させるところがあります。いや、村上春樹のほうが影響受けているんですかね。
>10数年前ミュージカル化された時も、その舞台をロンドンで観たが、
羨ましいご体験ですね!!
>21世紀の今だったら意外にもっと受け入れられるかもしれない(天才といわれる芸術家は皆そうだが、Pete Townshendもやはり未来を見据えて創造していただろう)。
まったく同感です。
ところで、吉松版「タルカス」のジャケットに使用されているフィギア、私も思わず欲しくなったのですが、ああいうものを当日コンサート会場でCDとともに販売したら、商売になると思いますがどうでしょう?
あっ!いいこと思いつきました!! 愛知とし子さん編曲による、2台のピアノ版「タルカス」など、どうでしょう!!
名演として名高い「春の祭典」の再演とともにいかがでしょう?(もちろん、岡本さんによる名解説付)

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
聴きました!いいですねぇ。おっしゃるとおり、通常のレパートリーとして十分耐えうる内容だと僕も思います。
>例えば、前半「タルカス」、後半「春の祭典」といったプログラムでも、集客は大いに望めそうです。
それは素晴らしい!!最高のプログラムです。あと、クラシック講座で「タルカス」を採り上げるのも名案ですね。(もっと聴き込まないといけませんが)
>ジャケットに使用されているフィギア、私も思わず欲しくなったのですが、ああいうものを当日コンサート会場でCDとともに販売したら、商売になると思いますがどうでしょう?
確かに!吉松先生のブログにも書かれていましたが、先日の渋谷タワーレコードのインストアライブの際、このフィギュアもすごい人気だったらしいですね。
>愛知とし子さん編曲による、2台のピアノ版「タルカス」など、どうでしょう!!
それは素晴らしい!ただ、彼女のアレンジ能力がなぁ・・・。できるのだろうか??

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愛知とし子

私の編曲より
ここは、雅之さんの編曲というのはいかがでしょう?

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