グールドのバッハ 小プレリュードと小フーガ集(1979&80録音)を聴いて思ふ

子どものための、教育のための作品とは思えない、めくるめく官能を呼ぶバッハの小さなプレリュードと小さなフーガたち。グレン・グールドの全身全霊のパフォーマンスが、小さな楽曲を敬虔な大曲に変貌させる。

雷鳴轟く自然の中で聴くヨハン・セバスティアン・バッハ。
静寂の中に浮かび上がるのは、グールドのいつもの鼻歌と、機械仕掛けのようだが極めてアナログなピアノの音。ぽつぽつとフレーズを切り、ポリフォニーを意識した究極の音楽作りに感応する。

信仰を頼りにせよという声が聴こえる。
途轍もない集中力で、音楽が凝縮する様。
グレン・グールドのバッハへの献身は本物だ。
この後、わずか2,3年で命が潰えるとは本人は思ってもみなかったことだろう。それほどに生命力満ち、躍動感のある音楽が繰り返されるのである。

J.S.バッハ:小プレリュードと小フーガ集
・6つの小プレリュードBWV933-938(1979.10.10録音)
・プレリュードとフゲッタニ短調BWV899(1979.10.10録音)
・プレリュードト長調BWV902/1(1979.10.10録音)
・プレリュードト長調BWV902/1a(1979.10.10録音)
・フゲッタト長調BWV902/2(1979.10.10録音)
・9つの小プレリュードよりBWV924-928, 930(1980.1.10-11&2.2録音)
・フーガハ長調BWV952(1980.1.10-11&2.2録音)
・フゲッタハ短調BWV961(1980.1.10-11&2.2録音)
・フーガハ長調BWV953(1980.1.10-11&2.2録音)
・プレリュードとフーガイ短調BWV895(1980.1.10-11&2.2録音)
・プレリュードとフゲッタホ短調BWV900(1980.1.10-11&2.2録音)
グレン・グールド(ピアノ)

ジャケットをよく見てみると、そこには大きなオーブが浮かぶ。
あの場所はどこなのだろう?人気のない、床がむき出しの建物の中で、悲しげに、そして意味深に佇むグールドの姿にある冷たい威厳。ここでグールドは一体何を見つめるのか?たぶん、自身の内側だ。バッハの音楽を通じて彼は自らの心を読み解こうとした。しかし、残念ながら道半ばにし、彼は生涯を終えた。さぞ心残りだったであろう。

自然には不思議な魅力がある。くだらない、上辺だけの上昇志向を嫌でも忘れさせてくれる。都会だと、上昇指向に左右される。だからこそ、私には都会の水が合わないのかもしれない。
(グレン・グールド)

山があり、谷がある。表があり、また裏がある。右肩上がりなど糞食らえ、自然に学べとグールドは言いたいのだろうか。首肯。グールドの、特に晩年のバッハは格別だ。

 

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