独り静かに・・・

byrde_gibbons_gould.jpg
急遽予定が空いた。
ここのところインタビューやらカウンセリングやらで夜も外に出ることが多かったので一安心。妻も出張中で不在ゆえ、たまには独りゆっくり音楽でも聴きながら過ごすことにするか・・・。外出時のお供に、ここのところ先日雅之さんからいただいた書籍を携えているが、ようやく読み始めたところにもかかわらず冒頭から衝撃的な面白さ。音楽的専門知識に疎い僕にとってこういう講義が欲しかったという内容。「憂鬱と官能を教えた学校」~【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史―調律、調性および旋律・和声(菊地成孔+大谷能生)

図解を交えて、音楽史を明快に簡潔に、かつ具体的に語った講座をそのまま書籍にしたものだが、クラシック音楽あり、ジャズあり、ロックありというジャンルの差別ない姿勢がまずもって好感が持てる。何より音を数値化しているという「バークリー・メソッド」が軸になっているところが、そのあたりに不案内な僕にとって都合好し。

第1講では、調律についての話題が続き、1722年にバッハによって平均率が確立されたことを、実際にグレン・グールドの音盤を受講生に聴かせながら進めてゆくところでは、そのあまりの素晴らしさに止まらなくなっているところがなぜか可愛い(笑)。グールドのバッハについては基本的にどれでも最高だと太鼓判を押せる僕だが、こと「平均率クラヴィーア曲集」に関してはどちらかというとリヒテルなどの演奏を好み、彼の他の曲集ほど評価をしていない。どうも機械的で恣意的な、作られた偽物感が前面に出過ぎていて僕の性に合わないのである。この本を読んでいて、そういえばグールドが録音したルネッサンス期の曲集があったことを思い出し、取り出して繰り返し聴いてみた。

バード&ギボンズ作品集
グレン・グールド(ピアノ)

こういう古の、誰も知らないような音楽を、現代のピアノで演らせたらグールドの右に出る者はいまい。オーランド・ギボンズというイギリス・チューダー朝の作曲家の名前などほとんどの人が聞いたことがないだろう。これがまた意外に素晴らしいのだが、グールドをもってしてバッハ以前の最高の音楽家だと言わしめるのだからその生涯や作品についてより詳しく知りたくなる。
1曲目のウィリアム・バードによる「パヴァーヌとガヤルド第1番」は、明らかにバッハにつながる精神性の高い音楽だ。3曲目、ギボンズによる「アルマンド(イタリア風グラウンド)」の突き抜けるような「無垢」は一体どこから来るのか?

陰陽が包含された、涙がこぼれるほど美しい音楽たち。昔の人々はすべてを包含していたということがこの1枚でよくわかる。自然に還れ!


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。
「憂鬱と官能を教えた学校」は全編↓
http://www.geocities.jp/television2nd/t-special.htm
ってな空気の充満した本ですが、こういう音楽への切り口は他では得難く、岡本さんや私が追い求めているテーマにも何かと密接に関係があり、ご参考になるかと感じおススメした次第です。楽しいでいただけて嬉しいです。
あっ、ご紹介のグールドの盤、久しぶりに思い出しましたがいいですね。作曲家については不勉強でよく知りませんけれど・・・。
私の数少ない知識でグールドに対抗させたい盤は、前にもご紹介しましたけれどこれかな?(笑)
「グリーンスリーヴス~シェークスピアの時代の音楽」村治佳織
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%B9%EF%BD%9E%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E9%9F%B3%E6%A5%BD-%E6%9D%91%E6%B2%BB%E4%BD%B3%E7%B9%94/dp/B00005GVKV/ref=sr_1_19?s=music&ie=UTF8&qid=1286403125&sr=1-19
しかし、大好きな佳織さんをグールドと対決させるなんて危険過ぎるなあ(爆)。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
本当にありがとうございます。まだまだ読み始めたばかりですが、素晴らしい本だと思います。
「グリーンスリーヴス~シェークスピアの時代の音楽」村治佳織に関しては現時点未聴です。
こうなったら聴いてみないと、ですね。
ありがとうございます。

返信する
アレグロ・コン・ブリオ~第3章 » Blog Archive » 無理をせず

[…] セルヴァンテスが「ドン・キホーテ」第2部を執筆し、シェイクスピアが「テンペスト」の構想を練っていた1610年。ビクトリアが世を去る1年前、そしてバードやダウランド、ギボンズらイギリスの作曲家たちが隆盛を誇っていたという時代。日本では、徳川幕府がキリスト教信仰を禁止する2年前であり、豊臣家滅亡(大阪夏の陣)の5年前。見ることも、感じることも不可能な過去を追体験する。音楽とはタイムマシンのようなものなり。 […]

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む