シューリヒト指揮ウィーン・フィルのモーツァルト「ジュピター」(1960.8Live)ほかを聴いて思ふ

知覚の扉澄みたれば、人の眼に
ものみなすべて永遠の実相を顕わさん

ウィリアム・ブレイク(1757-1827)はかく語る。
果たしてどうか?

ジム・モリスンはブレイクにインスピレーションを受け、バンドの名前をザ・ドアーズとした。

「知覚の扉」ならぬ「感覚の扉」を開けとのメッセージを天から受け取った。
文字通り”Break On Through (To The Other Side)”だ。

You know the day destroys the night
Night divides the day
Tried to run
Tried to hide
Break on through to the other side

この世界のすべては対。対立するものでありながら切っても切れない「つがい」なのである。ならば、学ぶべきことは「許す」こと。思考や感情に凝り固まることなかれと、ジムは訴える。感覚を研ぎ澄ませと彼は言うのである。

・The Doors:The Singles (2017)

Personnel
Jim Morrison (vocals)
Ray Manzarek (organ, piano, bass, vocals)
Robby Krieger (guitar, vocals)
John Densmore (drums)

“People Are Strange”。世界は鏡なんだとジム・モリスンは叫ぶ。
答は内にあるものだ。

最晩年の”Riders On The Storm”では、その詩の精彩を欠くようになってしまった(ジムの歌も)。あるいは”Changeling”も。そんな風に感じるのは僕だけか。
さらに、ジム・モリスン亡き後の詩は、あまりに現実的なものに成り下がってしまった。

But you’re all alone
Like a Rolling Stone
Like Brian Jones
On a Tightrope ride

トリオ編成となったドアーズの歌は、残念ながら中途半端だ。
ジム・モリスンあってのザ・ドアーズだとやっぱり断言できる。

ちなみに、ウィリアム・ブレイクはその初期においてエマヌエル・スウェーデンボルグ(1688-1772)の影響を受けたと言われる。

さて、私は霊の世界とこの世に同時に生きることを許された者であってみれば、私は自分の良心に照らしてこれらのことを人々に知らせるのが自分の義務と考える。もし、一人の人間が知っていることを他人にも知らせるようにしないとするなら、知識にどんな意味があろうか?
サイン・トクスヴィグ著/今村光一訳「巨人・スウェデンボルグ伝—科学から霊的世界までを見てきた男」(徳間書店)P486

分かち合えと。スウェーデンボルグの言葉は重い。

ところで・・・、霊感の赴くままにモーツァルトは、自身の芸術を分かち合おうとしたのではないのか。少なくとも父レオポルトが亡くなってからの彼の創造行為は、人類への奉仕であったように僕は思う。ただ、当時の公衆がそのことについていけなかっただけだろう。

1960年は、ザルツブルク音楽祭の記録。カール・シューリヒトの棒が閃光を放つ。
「プラハ」交響曲の沈潜し行く第2楽章アンダンテが美しい。続く終楽章プレストは、いかにもシューリヒトらしい、軽快さの中に確固たる自信を垣間見せる熟練の技。
そして、ボスコフスキーを独奏に迎えた第3協奏曲の、野暮ったいくらいの方言に何だか心が揺さぶられる。これこそモーツァルトの響き!

モーツァルト:
・交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」
・ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216
・交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」
ウィリー・ボスコフスキー(ヴァイオリン)
カール・シューリヒト指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1960.8.14Live)

白眉は「ジュピター」。颯爽としたテンポで流れるように奏される第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェの芯のある生命力に感応。続く、(想いを込める)哀愁の第2楽章アンダンテ・カンタービレと、堂々たる第3楽章メヌエットに思わずひれ伏し、終楽章のフーガに涙する。実演はさぞかしだったのだろう。

シューリヒトがモーツァルトを、これほど完璧に簡素に自然に、しかし驚くような密度で称えるのを見るのは、それだけでひとつの出来事である。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団からの愛と献身によって支えられたシューリヒトは、交響曲第38番「プラハ」を、またそれ以上に交響曲第41番「ジュピター」を、明瞭に的を射るがごとき快活さで輝かせた。モーツァルトの音楽におけるこの発想と演奏との理想的な融合に人々はひざまずくであろう。
(1960年8月17日付、ウィーナー・クーリエ紙)
ミシェル・シェヴィ著/扇田慎平・塚本由理子・佐藤正樹訳「大指揮者カール・シューリヒト―生涯と芸術」(アルファベータ)P323

驚くべき記録、人類の至宝。

 

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