三宅麻美のショスタコーヴィチ

shostakovich_24prelude_mami_miyake.jpg拙ブログ「アレグロ・コン・ブリオ~第2章」はスタートからまもなくまる2年が経過することになるが、過去を振り返ってみて、ほとんど雅之さんとの漫才のようなやりとりに終始する、「AからBへの手紙」のような、奇妙な(笑)ブログと化しているのが特長である。始めた当初は予想しなかった展開だが、このやりとりが我ながら実に面白い。もちろん、ただ自分だけが楽しいのなら単なるマスターベーションに過ぎないのだが、見ようによっては、我々のことを知らない第三者にとっても刺激的で興味深いブログなのではないかと少々横柄だが思うのである。自分ですら過去の記事を読むことで新たな発見があったり、その時とはまた違った考えが湧き出てくることに素直に驚く。進化か退化か、それは不明だが、いずれにせよ思考を練磨するのにもってこいの習慣になっていることが今となってはありがたい。

それにしても、毎日書く僕の浅薄な本文はひとつの「きっかけ」に過ぎず、このブログの醍醐味は、本文にほぼ毎日投稿していただける雅之さんの博識の上に成り立っていると言っても言い過ぎでない。初めてブログにコメントいただいたのが2008年4月11日。そしてその2週間後に「早わかりクラシック音楽講座」にご参加いただいた。直後、名古屋に戻られた故、頻繁に会うことはないものの(ついでにワークショップZEROにまでご参加いただいた)、年に何回かは東京や名古屋でお会いする機会をもてることがとても嬉しい。ありがとうございます。感謝いたします。

そして、時折お会いする時には貴重な音盤をいつも貸してくださる。

先日の成城での「恋物語」の時にお借りしたCDを聴いてみた。1枚はラデク・バボラークによるホルンのためのエチュード他を収録したもの、そしてもうひとつが三宅麻美によるショスタコーヴィチの「24の前奏曲とフーガ」作品87。

最近リリースされたバボラークの音盤は気になってはいたものの、後回しにして、結局耳にしていなかったもの。所詮オーケストラ・スタディでしょ、という先入観があったから一聴その超絶技巧に唖然。それに、これも雅之さんから教わった聴き方だが、オーケストラ曲をそれぞれの楽器に注目して聴いてみると面白いということで、大変興味深く聴かせていただいた。ありがとうございます。

とはいえ、より驚かされたのはショスタコの方。

ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ作品87
三宅麻美(ピアノ)

このピアニストの音に触れたのはこれが初めて。実演に接することなく芸風を云々するのは憚られるが、少なくともこのスタジオ録音盤を聴く限りにおいて、ショスタコーヴィチの「静けさ」と「皮肉」と「躍動感」がブレンドされて、見事な表現として着地しているところが素晴らしい。これはぜひ彼女のショスタコ生演奏に触れてみたいものだ、とつくづく感じる。

CD3枚にも及ぶこの曲集を、連続で聴くには相応の根気と体力がいると思うが、「ながら」とはいえあっという間にその「時」が過ぎ去ってゆく。本当にバッハに優るとも劣らない大傑作だと痛感する。

以前採り上げたニコラーエワのものとはまた違った印象・・・。地にどっしり足がついていて、しかもより垢抜けているとでも表現できようか。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
いつも岡本さんのブログで莫大な勉強をさせていただきながら、ご恩を仇で返し、大変なご迷惑をおかけしております、「お騒がせ男」雅之です(爆)。何だかブログの居候か寄生虫みたいになってしまい、どなたが読んでもけしからん奴ですよね、私は(笑)。しかし、ここでの岡本さんとのやり取りでの、予測不可能なお互いの「化学反応」が面白くて堪らず、すっかり病み付きになってしまいました。心よりお詫び申し上げますm(_ _)m 
>進化か退化か、それは不明だが、
何かを得るということは、何かを失っているということでもあるので、やはりそれは、功罪の両面があると思いますね。例えば、バンドを結成するなんてこともメンバー相互の科学反応を誘発して傑作が生まれたりするんでしょうけれど、意外に化学反応初期の作品でのピュアさが、反応が進みきった後期作品より良かったりしますよね。ベートーヴェンの後期作品のに惚れ込んだら、逆に「運命」に純粋に感動していたころが懐かしいみたいな・・・。でも、あえて退化したって構わないから、限られた人生、森羅万象、できるだけ人類の多様な価値観に触れて共感してみたいというのが、今の率直な心境です。ガイア理論(地球生命体説)とでもいうか・・・。いつもそのきっかけを与えていただいている岡本さんには、感謝の極みなのです。少なくとも私のほうは、岡本さんのブログにコメントを書き込むようになってから、人間的に何倍も成長したと実感できています。
バボラークの最近リリースされたCDは、ブラームスやR・シュトラウスの父親との関係を考察する上でも参考資料になるかもしれないと思い、お貸ししました(下のショスタコの盤とともに、差し上げても構いません)。
三宅麻美さんの弾くショスタコ「24の前奏曲とフーガ」、共感していただいて嬉しいです。彼女の3回にわけた全曲公開演奏会、私は前半の2回の実演を聴きましたが、やはり最高に素晴らしかったです。彼女独自の解釈をはっきり打ち出していながら、あの落ち着き、深い精神性を感じさせるのは、只者ではないと思います。最近リリースされ話題のMelnikov演奏によるCD
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3910583
と聴き比べてみられることも、ぜひお薦めしたいです(こちらも最高!)。三宅さんのCDでは、彼女自身による曲目解説(秀逸!)と渡辺和彦さんによるライナーノーツも勉強になりますよね。
ニコラーエワといい、ムストネンといい、アシュケナージといい、キース・ジャレットといい、
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4476
ピアニストによってまるで異なる世界が拡がるところは、その作品の持つ懐の深さからも、まさにバッハ作品に匹敵し、「24の前奏曲とフーガ作品87」こそ、ショスタコーヴィチの最高傑作なのではないかという思いは深くなるばかりです。私の現時点での一番のお気に入りは三宅盤ですが、愛知とし子さんの実演が聴けたら(全曲でなくても、ほんの一、ニ曲でもいいです!)、また新しい感動、発見ができそうなので、リクエストをしたいです!
※明日から2日間、東京に滞在しますが、仕事の予定がビッシリで、お会いすることもコンサートに行くこともできず非常に残念です。コメントも中断すると思われますが、何卒ご容赦を・・・。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>予測不可能なお互いの「化学反応」が面白くて堪らず、すっかり病み付きになってしまいました。
全く僕も同感です。すっかりコメントに返事をすることが習慣になっておりますので、今後ともよろしくお願いします。
>下のショスタコの盤とともに、差し上げても構いません
いやいや、滅相もございません。していただいてばかりいると罰があたりますので(苦笑)。少しの間じっくりと聴かせていただいた上できっちりお返しいたします(今もバボラークを聴きながら書いております)。
ところで、やっぱり雅之さんは三宅さんの実演を聴かれているんですね。さぞかし素晴らしかったことと想像いたします。
>ピアニストによってまるで異なる世界が拡がるところは、その作品の持つ懐の深さからも、まさにバッハ作品に匹敵し、「24の前奏曲とフーガ作品87」こそ、ショスタコーヴィチの最高傑作なのではないかという思いは深くなるばかりです。
おっしゃるとおりですね。これはショスタコがバッハにインスピレーションを受け、ニコラーエワの協力を得ながら生み出した作品ですから、まさに「化学反応」が起きているということですね。僕もつくづくそう感じます。
>愛知とし子さんの実演が聴けたら
これは本人にもリクエストしておきます。雅之さんの推薦曲は必ずと言って良いほど彼女のツボにはまりますから。
>明日から2日間、東京に滞在しますが、仕事の予定がビッシリで、お会いすることもコンサートに行くこともできず
あ、そうなんですね!残念ですがまたの機会に!!

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