アルゲリッチ&フレイレのバルトーク2台ピアノと打楽器ソナタほか(1993.2録音)を聴いて思ふ

打楽器の官能。
プリミティブな音が、人間の魂を刺激する。
真のコミュニケーションに言葉は不要。原始、原点に戻るべきだろう。生きとし生けるものの鼓動を感じるのだ。つながりは掛け算。音楽においても、アンサンブルは驚異的な熱量を帯びる。互いの音を聴き合って、新しいものを創造する感動。人は人でしか磨けず、また、人は人に癒されるのである。

ストラヴィンスキーはすでに「ペトルーシュカ」において、より頻繁には「春の祭典」において、非常に短い八分音符単位の非対称な拍子を用いている。拍子の交替によって彼はしばしば、対称的な拍子と非対称的な拍子とを混ぜ合わせる。そこでは拍子の単位はもはや四分音符ではなくかなり速い八分音符であり、メトロノームで1分あたりおよそ200から250に相当する速度を伴っていた。
「いわゆるブルガリアン・リズム」
ベーラ・バルトーク/伊東信宏・太田峰夫訳「バルトーク音楽論選」(ちくま学芸文庫)P113

音楽はうねる。音楽はまた、変化する。

・バルトーク:2台のピアノと打楽器のためのソナタSz110
・ラヴェル:マ・メール・ロワ(ザードロ編)
・ラヴェル:スペイン狂詩曲(ザードロ編)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
ネルソン・フレイレ(ピアノ)
ペーター・ザードロ(打楽器)
エドガー・ガッジーズ(打楽器)(1993.2録音)

変幻自在の音色に感無量。
ピアノは咆え、打楽器が轟く。バルトークの、耳について離れない圧倒的リズム。あるいは、有機的な響き。どの瞬間も、奏者の力の入りようは格別。

ペーター・ザードロの編曲によるラヴェルの「マ・メール・ロワ」の信じがたい美しさ。第1曲「眠れる森の美女のパヴァーヌ」は、繊細で可憐な音を誇るピアノと、重心の低い、野獣のような打楽器の対比が見事。第2曲「親指小僧」は、何て虚ろな、鏡のような透明感を持つのだろう(途中に現れる鳥たちの歌の神秘)。そして、第3曲「パゴダの女王レドロネット」の、ピアノ版にも管弦楽版にもない原初の響きの陶酔と、第4曲「美女と野獣の対話」の、ジャズ的な音響。ここでのアルゲリッチの脱力のピアノが聴くものを刺激し、また癒す。終曲「妖精の園」の完全美。小さく囁くピアノが、だんだんと音量を増し、最後のピアノによるグリッサンドと打楽器との饗宴に涙がこぼれる思い。

同じくザードロの編曲による「スペイン狂詩曲」のオリエンタリズム。
複雑な響きの内側にある色香と知性。アルゲリッチとフレイレが感応する様に、聴く者は酔う。四半世紀前の録音だが、音楽は生き生きとし、新しい。

 

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