ザンデルリンク指揮フィルハーモニア管のベートーヴェン第1番(1981.1録音)を聴いて思ふ

重厚、しかし、清廉。
ベートーヴェンの青春の音楽が、大きな未来への希望を乗せて歌われる。

ウィーンのハイドンに師事して音楽の研究を仕上げようと、1792年11月の初め、ベートーヴェンは生まれ故郷を離れ、ついに再び帰ることがなかった。しかしハイドンが忙しさの余り課題中の誤りも見過ごしていたことに気付くと、彼はこっそりヨハン・シェンクの門を叩いた。後にはアルブレヒツベルガーが対位法を、またサリエリが声楽の作曲を彼に教えた。
(ヨーゼフ・シュミット=ゲルク/河野徹訳「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンその生涯と作品」)
~「音楽の手帖 ベートーヴェン」(青土社)P280

若きベートーヴェンは何人もの先達の方法を吸収し、そこに自身の革新を埋め込み、常に全身全霊で新しい音楽を創造し続けたのだろう。29歳のときの、交響曲第1番は、ハイドンの影響を受けながら、明らかにベートーヴェン独自の色合いをも秘める傑作だ。簡潔な手法の中に潜む音楽の真実は、人々の魂を鼓舞する。

交響曲第1番ハ長調第1楽章序奏アダージョ・モルトの意味深さ。そして、終楽章序奏アダージョの強烈な個性!

ハイドンの作品では、初期のある交響曲で第1楽章と最終楽章の主題を結びつけたり、またその後になるとソナタ形式のなかで、独立した第2主題の代りに第1主題からとった動機を用いるというふうに画一性への懸命な努力が特色となっており、ベートーヴェンも、先師の努力をさらに発展させている。
~同上書P282

学んだものを消化し、昇華する術に長けたベートーヴェンの天才。
そういう方法を武器にして、彼は年を追うごとに巨大な存在となっていくのである。

ベートーヴェン:
・交響曲第1番ハ長調作品21(1981.1.4-7録音)
・交響曲第2番ニ長調作品36(1981.1.8-10&12-17録音)
クルト・ザンデルリンク指揮フィルハーモニア管弦楽団

ザンデルリンクの指揮は、濃厚な浪漫性を湛えつつも、先進的な即物性を兼ね備え、いかにも楽譜に忠実な正統派の演奏のようでいて、見事に遊びのある名技である。
同時に、第2番ニ長調の崇高なまでの自然の息吹感じる美しさ。堂々たる第1楽章序奏アダージョ・モルトから雄渾な主部アレグロ・コン・ブリオの魔法。それより何より、優雅な第2楽章ラルゲットは、冒頭から美しさの極み。
豪快な終楽章アレグロ・モルトがうねる。

精密であり、また心があり、実に完成度の高いベートーヴェン。

 

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