ムラヴィンスキー指揮レン・フィルのショスタコーヴィチ第5番(1938-39録音)を聴いて思ふ

強靭な意志と推進力の勝利。
エフゲニー・ムラヴィンスキーははじめからムラヴィンスキーそのものだった。
初演したばかりのショスタコーヴィチの交響曲の、燃え盛る怒涛の演奏は、80年という時を経てすら神々しい。怒っているのか、さもなくば泣いているのか、これほどの感情吐露は、鉄仮面のような冷徹な演奏を本懐とする彼にあって実に珍しい。

エヴゲニー・ムラヴィンスキーはオーケストラの各セクションのリーダーたちの抵抗に遭った。多くの者は、彼の若さと、首席指揮者の仕事の経験のなさと、そしてキーロフ・バレエに在職していたことを軽蔑し、完全に懐疑の念を抱いていた。厳しい規律体制を取り入れようとするムラヴィンスキーの当初の試みは、頑強な抵抗に遭った。
グレゴール・タシー著/天羽健三訳「ムラヴィンスキー高貴なる指揮者」(アルファベータ)P111

どんなに抵抗に遭おうと信念を貫き通したことが、ムラヴィンスキーの凄さ。

才能あるこの指揮者は、この日(1938年10月18日)のプログラム(ショスタコーヴィチの交響曲第5番、ハチャトゥリアンのピアノ協奏曲、モーツァルトの「劇場支配人」序曲、ムソルグスキーの「モスクワ河の夜明け」序曲)の演奏でついに完全な勝利の頂点に達して大きく成長した。昨シーズンにムラヴィンスキーは、作曲家の思想を解明することで指揮能力を深めることのできる洗練された音楽家として際立った才能を発揮していた。最近ではムラヴィンスキーの才能は完全に開花し、表現豊かで流れるような様式の推進力を持ち、思慮深くて、芸術的に完成された巨匠となった。
(ミハイル・ドルスキン)
~同上書P110

初演間もない現代の作品が、これほどまでの熱波をもって表現されるのは、当時の世界情勢の影響もあるのかどうなのか。ショスタコーヴィチの音楽が見事に指揮者の手中にあることがわかる。強烈だ。偉大だ。

・ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(1938暮~39初頭録音)
・ワーグナー:ワルキューレの騎行~楽劇「ワルキューレ」
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮モスクワ放送交響楽団(1939録音)

若々しいという表現が正しいのかどうかはわからないが、ショスタコーヴィチについては後年のムラヴィンスキーのものとはまた違ったパッションに満ちるもの。来るべき悲劇を髣髴とさせる祈りの静寂と落ち着いた風情から突如頂点に昇り詰める第3楽章ラルゴに感応。そして、戦いを挑み、勝利を迎える終楽章アレグロ・ノン・トロッポ—アレグロの狂気。

自家薬籠中の「ワルキューレの騎行」の刺激は相変わらず。猛烈なスピードと割れんばかりの咆哮に感涙。

 

ブログ・ランキングに参加しています。下のバナーを1クリック応援よろしくお願いいたします。


音楽(全般) ブログランキングへ


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください