“The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery”(1960)を聴いて思ふ

地球上のいかなる時代のあらゆる国民のなかでも、アメリカ人たちは、たぶんもっとも充実した詩的性質をもっている。合衆国は、それ自身で本質的にもっとも偉大な詩となっている。
(詩集「草の葉」序文)
木島始編「対訳ホイットマン詩集 アメリカ詩人選2」(岩波文庫)P5

ニューヨークでの録音からまる59年。
歓喜の疾駆”Airegin”。
ウエスの超絶ギターと、3人のリズム隊の絶妙なアンサンブルに感応する。かつて初めて耳にしたとき、僕は痺れた。

あるいは、空ろな表情の”Polka Dots And Moonbeams”は、濃密な逢瀬のバックグラウンド音楽の如し。ウエスのギターの色気に涙し、トミーのピアノの静かな祈りに感服。

ちなみに、最高に僕の感性をくすぐるナンバーは、”Four On Six”。まずは、パーシーのベースのうねりにノックアウト。愉悦のリズムに乗り、ウエスが快感のギターをうねらせる。途中のトミーのソロも抜群の解放感に満ち、音楽はひたすら前のめりに動く(何というセンス!)

ウエスはこの分野でとてつもなく偉大な革新者だった。そのことは、彼がA&Mに移る以前のヴァーヴ時代に吹き込んだアルバムを耳にすればわかる。彼の演奏はストレートなジャズにもイージー・リスニング的なバックグラウンドを持った音楽にもフィットする。それは、デビューしたときからの個性だ。
小川隆夫「ジャズジャイアンツ・インタヴューズ」(小学館)P188

革新的でありながらすべてを網羅し、人々に決して迎合することなく、しかし人々の心を容易につかむ術。ジョージ・ベンソンのこの言葉が、ウエス・モンゴメリーのすべて。

・The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery (1960.1.26&28録音)

Personnel
Wes Montgomery (guitar)
Tommy Flanagan (piano)
Percy Heath (bass)
Albert Heath (drums)

デイヴ・ブルーベックの”In Your Own Sweet Way”での、ウエスのオクターヴ奏法を駆使しての熱いメロディと、トミーの可憐なピアノ・ソロの対話のあまりの美しさに言葉がない。

円熟のラスト・ナンバー”Gone With The Wind”。
ウエスの軽快かつ余裕のギターが、僕たちの魂を癒す。

最大の詩人は、道徳の説法もしなければ、教訓の当てはめをすることもない・・・彼は、魂を知っている。
~同上書P5

名文句。
冷たい夜に、ただ無心に音楽に触れること。

 

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