「人間一生ハ誠に纔(わずか)の事なり 好いた事をして暮らすべき也」
(葉隠 三島由紀夫)
先日、相方がある会合でいただいてきた三島直筆の複製にある言葉。彼の人間性までもが垣間見えるような達筆で記されたこの言葉に、芸術家であり右翼活動家でもあった三島由紀夫という人間の生き様が見事に表現されている。
ここのところ、セミナー中に繰り返しお話しすることは、どんなことでもいいから自分が「できること」を生業にするべきだということ。誰もが「やりたいこと」を探し、その「やりたいこと」が見つからず、迷いに迷う。知識や情報もなく、自分の方向性もママならない状態で、「やりたいこと」が見つからなくて当然なのだが、どうしてもそういう観点で自分探しをするよう人はアドバイスを受ける。未来が「今」の積み重ねであるとするなら、今できることを、ベストを尽くしてやり、世の中に貢献することを考えた方が賢明である。
それは取るに足らない趣味でも良い。「オタク」といわれる世界の話でも良い。どんなものでも10年も継続したことはその人自身の知識となり、力となり、必ずや他人を説得するだけの力を持つことになるのだから。要は、好きこそものの上手なれ、なのである。ともかく何でも良いので好きなことを続けましょう!
LP時代に話題になったものの、廃盤になって久しい音盤の数々がタワーレコードとレコード会社各社がコラボレートし、廉価CDで復刻されている。いわゆる「Tower Records Vintage Collection」と称するシリーズから珍しい楽曲が収められた愉しい1枚。
音楽時計のための作品集-モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン
ウィーン管楽合奏団
中でも、かつてハイドン作とされたディベルティメント「聖アントニウス」は、この楽曲の数少ない録音の一つであろうし、何よりも第2楽章が、ブラームスの例の有名な変奏曲の主題に使われたものだということで、ずっと聴いてみたいと思っていたもの。近頃ようやく再発され、手元に置くことができた代物である。
ご多聞にもれず、ウィーン・フィルの主流メンバーによるウィーン風の柔らかい音の響きと余裕のある音楽作りが嬉しい。そして、今日は続けざまにそのブラームスの作品を繰り返し聴く。どの音盤にするか迷いに迷って取り出したのは・・・、
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲作品56a
クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団
いわずとしれたザンデルリンク屈指の名盤、ブラームス交響曲全集からの1曲。難産の大作第1交響曲を世に問う前に、ブラームスが得意の変奏曲という形式に則って、最初の管弦楽による自信作として世に送り出した傑作。よくもまぁこういう主題を見つけ出したものだ。
石橋を叩いて渡る性格のブラームスは、ベートーヴェンのプレッシャーという苦悩と闘いながらも、できることを追求し、そして好きなことを継続した秀才型天才であった・・・と僕は思う。
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