ロストロの弾くショスタコーヴィチの記憶

beethoven_rostropovich_richter.jpg重厚長大かつ難解で初心者にはハードルが高いといわれるマーラーの交響曲の中で、第1番はメロディも美しく構成も単純で比較的わかりやすい。今日の講座ではブルーノ・ワルターの指揮した最晩年の名録音を中心にじっくりと彼の音楽を聴き込んだのだが、参加者のほとんどが女性だったからかどうか、終了後におまけで聴いていただいた第9番のフィナーレ(冒頭と終結のそれぞれ5分ずつ)の方が好きだという人が多かったのに少々意外でびっくりした。おそらく弦楽合奏中心の響きが女の子たちのハートを揺さぶったのだろうが、それにしても第5交響曲のアダージェット然り、マーラーは音楽で女性の心を射止める術を知っていたのではないかと思わせるほど、弦の使い方が上手い(というより弦中心の音楽のつくりが絶妙というのか)。
エドガー・ケイシーによると、弦楽器はそもそも憂鬱な時や気分が落ち込んだりした時に聴くと良いらしい。悲観と楽観の間の溝を埋めてくれるのだと。

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番イ長調作品69
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)

チェロの音色は優しい。ベートーヴェンの中期、いわゆる「傑作の森」時代に生み出された室内楽の傑作を、旧ソビエトを代表する二人の巨匠ががっぷり四つになって繰り広げた天下の名盤である。第5交響曲や第5ピアノ協奏曲「皇帝」とほぼ同時期に作曲されたこの曲は、楽聖の「静的」な面と「動的」な面がバランス良く注入されており、(おそらくチェロという楽器自体が「母性的」な響きをもつからだと思うのだが)心と頭の両方に見事に訴えかけ、いつ聴いても感動的だ。チェロとピアノの完璧な調和。

以前、ロストロポーヴィチが来日した際に確かサントリーホールでだったと記憶するが、ベートーヴェンのソナタを演奏したのではなかったかと思い、棚の奥にしまってあるプログラムを引っ張り出して調べてみた。記憶違い・・・。

1990年4月4日
ブラームス:チェロ・ソナタ第2番ヘ長調作品99
バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV.1009
ラフマニノフ:ヴォカリーズ
ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタニ短調作品40

あぁ、そういえば・・・。沸々と記憶が蘇る。後にも先にもロストロの実演を聴いたのはこの1回だけ。完璧なプログラム構成。特にバッハとショスタコーヴィチは素晴らしかった。

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