祈りのフックス

fux_clemencic.jpgそれにしても昨日入籍したカップルは(中国だけでなく)日本でも多いよう。僕の身近な人たちの中だけでも少なくとも4組を数える。
知人が昨日入籍し、今日は銀座でお披露目のパーティーということで、お招ばれした。出席者20名ほどの小さな手作りの宴席であったが、美味しい食事につけ加え、新婦の友人だというヴァイオリニストが遠くベルギー(彼女はブリュッセル・フィルハーモニーでヴァイオリンを弾いている現役の奏者らしい)から駆けつけ、エルガーの「愛の挨拶」を新郎新婦のために披露してくれた。さすがに現役だけあり良い演奏でした。この曲は、エルガーが、子どもが生まれた年に妻に贈ったといわれる愛らしい名曲であり(ということは以前書いた)、愛知とし子も自身の編曲版をファースト・アルバムに収録しているので、たびたび耳にするのだが、いつ聴いても美しい。

ふとカレンダーをのぞくと、今日は8月9日。長崎の原爆の日でもあり、ドミトリー・ショスタコーヴィチの忌日でもある。ショスタコの音楽でも聴きながらじっくりと黙想モードにでも入ろうかと思ったが、少々暑苦しさを感じたので、心静まる涼しいバロック音楽に切り替える(ショスタコーヴィチの音楽は多分にバロック音楽的要素を持ち合わせているが、彼のアイロニカルな側面がやかまし過ぎたり、音楽が暗く深刻過ぎるきらいがあるので、今日のような日にはどうも不向き)。

フックス:皇帝のレクイエム~宗教音楽集
レネー・クレメンチッチ指揮クレメンチッチ・コンソート

J.S.バッハと同時代を生きたオーストリアの作曲家、ヨハン・ヨーゼフ・フックス。
この音盤には彼の作曲した宗教曲(オルガン・ソロあり、室内楽あり、合唱を伴った鎮魂曲あり)がいくつか収められているが、そのいずれもが最高に美しい。当時のオーストリア皇帝カール6世の信任厚く、生涯宮廷楽長を勤め上げた音楽家だけあり、まさに「癒し」の楽曲を数多く残した。
それに、レネー・クレメンチッチ率いるクレメンチッチ・コンソートの演奏も、まるで今この瞬間にフックスにより「音楽」が生み出されているのではないかと錯覚するほど生々しい。ともかく人の声が上から降りて来るかの如く響く様は圧巻。
ちなみに、このCDは輸入盤だと600円ほどで買える。楽曲抜群、演奏完璧、そして録音優秀と3拍子揃ってこの値段は超お得。ともかく騙されたと思って購入してみてください。

変えられないものを受け容れる心の静けさと
変えられるものを変える勇気
そしてその両者を見分ける英知を、私にお与えください
ラインホールド・ニーバー(青山圭秀訳)

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