想像から創造へ

vivaldi_chung.jpg所用でオーディオ評論家の江川三郎先生のご自宅に伺った。部屋に通されて最初に見たものは、ソニーの小型携帯スピーカーに少しばかり小細工してCDウォークマンとつなぎ、首から提げて再生されていらっしゃる老先生のお姿。試しに体感させていただいたが、びっくり。あまりの音の良さに(まったく予想していなかったものだから余計に)のけ反る(笑)。それに首から小型スピーカーをぶら下げているわけだから、音は下から聴こえるはずなのだが、目の前で相当な広がり感のある演奏が再生されるので二度驚愕。どういう理屈なのかはよくわからないが、スピーカーというのは人間の身体にくっつけること(人の持つエネルギーというか、肉体って本当にうまくできてるんだとあらためて実感)で音の響きが良くなり、さらに臨場感まで生まれるということだ。
江川先生は長年「レコード芸術」にコラムを連載されているので、帰宅して今月号を早速チェック。何と「江川三郎のオーディオ+1の作法」というコーナーで、「首からぶらさげて極上スピーカー」というタイトルの記事がちょうど掲載されていた。ご自宅で拝聴させていただいた方法は先生が昔から主張されている「ニア・フィールド・リスニング」というものらしい。何でもないようだが、とにかくすごい・・・。

ヴィヴァルディ:「四季」~ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意への試み」作品8
チョン・キョン=ファ(ヴァイオリン)
セント・ルークス室内アンサンブル

バロック音楽、否クラシック音楽入門の入口に位置する超有名曲。もはやこの音楽をゆっくりと楽しむことはなかったが、久しぶりにとりだして聴いてみた。(今日教えていただいた「ニア・フィールド・リスニング」を試してみたいが、うちには首からぶら下げるような細工を施した小型スピーカーがないので諦めた。いずれやってみよう。)
それにしてもチョン・キョン=ファのヴァイオリンの切れ味、勢いは、かつてとり憑かれた巫女のように奔放で激烈な演奏をしていた頃のものに大人の女性の持つ安定感が加味されていて、軸が全くぶれることがない。そういえばこの音盤が発売された頃だったと記憶するが、まさにこの面子を引き連れてのサントリーホールでのコンサートを聴きに行った。素晴らしかった。感動した(その時はJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番も披露されたかな・・・)。
ただ、宣伝が遅れたのかほとんどPRされなかったのか、どういうわけかサントリーホールに珍しく閑古鳥が鳴いており、この世紀の名演奏をもっと多くの方に共有してもらいたかったとその時ふと感じたことを急に思い出した。

この空想との遊びがなければどんな創造的な作品もかつて生まれなかった。想像との遊びからわれわれが受けている恩恵は計りしれない。
カール・ユング

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