フェスタサマーミューザKAWASAKI 2019 ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団オープニングコンサート

ミューザ川崎シンフォニーホールの音響は素晴らしい。
演奏者との距離感も程よく、どの席からも音が直接に届く。


フェスタサマーミューザ2019のオープニングコンサートは、とても挑戦的なプログラム。何よりベートーヴェンの最初の交響曲がこれほど革新的に響いた例があっただろうか。

バリー・グレイによる「サンダーバード」オリジナル・サウンドトラックからのジョナサン・ノットによるセレクションは、指揮者の言葉通りオープニング・テーマからとてもワクワクする演奏で、懐かしい映像が飛び出してくるかと思えるほどの臨場感。ただ、残念ながら僕自身、幼少の頃、彼の番組に胸躍らせるということがなかったので、思い入れそのものはほとんどない。それでも指揮者の思念が見事に音化する実に明朗快活で圧倒的な演奏であったことは手に取るようにわかった。
続くジェルジ・リゲティのピアノ協奏曲。
この、5つの楽章を持つ室内楽的な協奏曲は、ジャズ的要素が強いと思いきやバルトーク風の哲学的な音楽を呈し、聴く者に不安を喚起するなど、音調が都度変化するリゲティ特有の前衛音楽であるものの、想像以上に耳には優しく、素敵な作品だ。もちろん今日の演奏の主役は、タマラ・ステファノヴィッチの縦横に変化を創出するピアノ演奏であるのだが、特筆すべきは、4本の譜面台を駆使して、パーカッショニスト綱川淳美さんのパフォーマンス!全楽章を通じて多様なリズムが潜むこの音楽にあって、鉄壁のパーカッションが良い味を出していた。それに、ノットの現代音楽のレパートリーの礎となったという作品であるゆえか、指揮にも随分余裕があり、とてもリラックスした表情で音楽が進行していった様子が何とも興味深い。

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2019
東京交響楽団 オープニングコンサート
2019年7月27日(土)15時開演
ミューザ川崎シンフォニーホール
タマラ・ステファノヴィッチ(ピアノ)
水谷晃(コンサートマスター)
ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団
・バリー・グレイ:「ザ・ベスト・オブ・サンダーバード」~ジョナサン・ノット・スペシャル・セレクション(オリジナル・サウンドトラックより)
・リゲティ:ピアノ協奏曲
休憩
・ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調作品21

20分の休憩後の後半は、ベートーヴェンの交響曲第1番。
今日の僕のお目当てはこの作品だったのだが、(モーツァルトのダ・ポンテ3部作の時に魅せたような)ノット節全開の、予想通りの、否、予想以上の演奏で、ベートーヴェンの青春の調べが、小気味良く鮮烈に表出されていた。それにしてもあの律動とパッション、特に終楽章アダージョ—アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェの爽快でエネルギッシュな音楽に、後のベートーヴェンにある天才的革新の源流を垣間見て、僕は密かに感動に震えた。
それに、第1楽章序奏アダージョ・モルトの、不安定な浮遊感も絶品。

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