グレン・グールド シェーンベルク 3つのピアノ曲作品11(1958.6&7録音)ほかを聴いて思ふ

昔、昔、あるところに。
冒頭からその音楽はタイムスリップするかのように懐かしい響きを醸す。
しかも、グレン・グールドの、いつものようにポツポツと、一つ一つの音を丁寧に、思いを込めて奏する方法により、音楽は一層立体的で、また見通しの良いものに昇華されているのがミソ。

あらゆる感情、思念の表象。一聴、音楽はどこに向かっているのか見当もつかない難解な作品たちだが、グールドの手にかかるとアーノルト・シェーンベルクの音楽がどれほど身近なものに感じられることか。「完璧」という言葉はいかにも使い古されたものだが、グールドのシェーンベルクを評するにはそれが最も相応しい。

僕はグールドのシェーンベルクを聴いて、アーノルト・シェーンベルクに開眼した。
もう何十年も前のことだ。

シェーンベルク:
・3つのピアノ曲作品11(1958.6.30&7.1録音)
・5つのピアノ曲作品23(1965.9.28&29, 11.16&18録音)
・6つのピアノ小品作品19(1964.6.29&1965.9.29録音)
・ピアノ組曲作品25(1964.1.2&9録音)
・2つのピアノ小品作品33a&b(1965.11.16&18録音)
グレン・グールド(ピアノ)

ただただ音の流れに身を浸すこと。
そして、心の赴くままに感じること。否、意識的にそんなことをする必要はないかも。難しくとらえることなどないのだ。

昔話を聞くようでいて、不思議にそこには未来の音が聞こえるというのもグールドならでは。この「普遍性」はいったいどこから来るのだろうか?グレン・グールドの魔法は偉大だと心底思う。

お互いの演奏を聴くのをやめなさい。とにかく何よりもまず、特定の楽譜あるいは一揃いの楽譜を決めて、自分がこうしたいと考えているものを達成しようと努力したらいい。それが実現し、この種の音楽の弾き方はこれだとはっきりわかったあとであれば、個人の楽しみや驚きのためならかまわない。仲間や、先輩格の人などの演奏に耳を傾ければいい。けれども自分なりの考えがまとまらないうちは決して聴いてはいけないし、信奉するべき解釈上の伝統とおぼしきものに基づいて考えをまとめてもいけない。
グレン・グールド、ジョン・P.L.ロバーツ/宮澤淳一訳「グレン・グールド発言集」(みすず書房)

自分の言葉を自ら推敲に推敲を重ねて持てと彼は言う。
グレン・グールドの演奏にはいちいち発見がある。納得だ。

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