アレクサンドル・ラザレフ指揮日本フィルハーモニー交響楽団 第715回東京定期演奏会

衝撃。
物語が見えるバレエのないバレエ音楽に金縛り。
時に爆発的音響を轟かせるも、多くは弱音で奏される繊細な音のドラマは、実演であれこそ堪能できるというもの。奏者一人一人の力量もさることながら、オーケストラを統べてドライヴするアレクサンドル・ラザレフの情熱的かつ精妙な指揮に俄然僕は心動かされた。

1910年6月25日、パリはオペラ座での初演。
イーゴリ・ストラヴィンスキーの革新的天才の炸裂。(もちろん想像だが)そのときの革新派の受けた感動を再現したかのようなリアルな音像と興奮。カーテンコールの最中、指揮者が木管群や金管群を指し、大手を振るって賞賛する様、あるいは、聴衆の大歓声に応えて作品の素晴らしさを掲示する様に、ラザレフの謙虚な姿勢と、音楽に対する類まれな愛情を想った。バレエ音楽「火の鳥」とは傑作だと痛感した。

音楽の細かい動きと、一糸乱れぬアンサンブルの妙、それに日本フィルハーモニーの分厚くも見通しの良い音響の成せる創造物。バンダの3つのトランペットが2階客席3方に分かれ、劇的なサラウンド効果を示し、客席は熱気に包まれ、僕は恍惚とした。

これは完璧なファンタジーだ。不気味なざわめきの表情も子守唄の安寧も音でこれほどまでに巧みに描ける様に驚嘆。光と翳の二極の対比。畳み掛ける最後の壮絶な大団円に鳥肌が立った。

日本フィルハーモニー交響楽団
第715回東京定期演奏会【ラザレフが刻むロシアの魂Season IVグラズノフ5】
2019年11月1日(金)19時開演
サントリーホール
扇谷泰朋(コンサートマスター)
辻本玲(ソロ・チェロ)
アレクサンドル・ラザレフ指揮日本フィルハーモニー交響楽団
・グラズノフ:交響曲第6番ハ短調作品58
休憩
・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」全曲(1910年版)

前半はロシア的浪漫の色合い残す、渾身のグラズノフ。
第1楽章序奏アダージョの柔和な音、また、主部アレグロ・パッショナートの美しい音楽に冒頭から惚れ惚れした。第2楽章変奏曲に内在する「歌」、そして、短い第3楽章間奏曲の喜び。一層劇的で素晴らしかったのが終楽章アンダンテ・マエストーソだ。
その並大抵でない熱量は、個の奏者の力とつながりから生まれるシナジーの成せる業。終演後に、グラズノフのスコアを指して作品の素晴らしさをアピールその姿に、指揮者の謙虚さと慈しみの心を想像した。

いまだ震えが止まらぬほどの感激。
音楽を体感する喜びを味わう最高の時間だった。
「ラザレフが刻むロシアの魂」は今後も見逃せまい。

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