愛することは薔薇の棘

respighi_toscanini.jpg「愛さらるるは薔薇の花、愛することは薔薇の棘」
堀口大學の詩の一節らしいが、何と言い得た表現であることか。
人は誰もが愛されたいと願っている。しかし、愛することを躊躇する人も多い。無条件に愛することはリスキーだから・・・。

少しの雨の後の夕方、滅法寒い。気温は10℃近くまで下がっている。何だか冬に逆戻りという感じ。こういう日は聴くだけで気持ちが温かくなる南国の音楽でもBGMにかけてのんびりするのが良いのだろうが、生憎お昼前から所用があり、結局夕方近くまでバタバタと時間が潰れてしまった。
ところで、ヨーロッパ諸国の冬の厳しさはこんなものではなく、半端じゃないらしい。僕も何度も訪欧しているが、真冬にあたったことがないので体感としては知らない。ヨーロッパ人、特にドイツや北欧の人々の避寒地はかつてより南欧方面であったという。中でもイタリアはチャイコフスキーやメンデルスゾーンなど著名な作曲家が、訪問に触発されて楽曲を作った温暖な魅惑の土地として有名である。もう15年ほども前になるかと思うが、僕もかつて一度だけ訪れたことがある。ローマとフィレンツェ。特に、ローマなどはどこに足を運んでも場末のような雰囲気の中世的な印象を与える混沌とした街であったと記憶する(それでも流石に本場のイタリア料理、パスタは格別な美味しさで、毎日食べても飽きない魅力があり、いつか将来イタリア各地を再訪問したいと思っている)。

レスピーギ:交響詩「ローマの松・噴水・祭り」
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団

これまでのクラシック音楽愛好人生の中でトスカニーニにのめりこんだ経験は残念ながら一度もない。ベートーヴェンを聴いてもブラームスを聴いても、ヴェルディを聴いても、どうも録音のせいかその真価がいまひとつ伝わってこない。ましてや若い頃の耳では、残響の少ない乾いた色気のない音にはピンと来ず、ほぼ何十年も無視し続けてきた指揮者の一人である。とはいえ、名演だといわれる音盤のいくつかは当然所持しており、何度かは聴いた。世間でいわれるほどの感動はその時点では感じられなかった。

しかしながら、人間の耳の成長というか、感度というのは年を経るにつれて変化するものである。どうやら不惑を越えて、やっと彼の良さがわかりかけてきたような気がする。ただし本当は実演に触れるからこそ感動できる指揮者なんだと思う。とてもマイクに入りきらないのだ。そんなトスカニーニの数多ある録音の中でこのレスピーギは世紀の名盤と謳われているだけあり、素晴らしい。イタリア人のもつ躁的な気質を喚起する明るく元気な演奏であり、かつ楽曲である。モノラル録音でありながら、色でいえば虹の7色が明滅するような刺激的で楽しい音楽。それでいて、風景描写が巧みで、目の前にローマの街々のシーンが現れるかのごとくである。あぁ、気持ちよい。

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