ベルティーニ指揮ウィーン響 ブラームス セレナーデ第2番ほか(1982.5録音)

後年の楽想、音調がすでに散見される、いかにもブラームスという作品。
青春の歌とはいえ、ヨハネス・ブラームスは早くもこの時点で完成していたとみる。当時、彼は、作品を尊敬するクララに見せ、意見を求めていた。

私を最も魅了したのは「セレナーデ」です。最初から感じがよく気に入って、音調も美しいと思います。第2モティーフは第1に対して美しい対象をかたちづくり、3、4、5、6の小節と進んでから、私ははじめてよい気持ちになりました。ファゴットとクラリネットが加わるところでは気持ちが温められ、変ニ長調となるまでますますそれが強められ、そこからまったく素晴らしく雅味のある14、15、16頁となり、最後のピアニッシモのイ長調までみごとでございます。
(1858年12月20日付、クララよりヨハネス宛)
ベルトルト・リッツマン編/原田光子編訳「クララ・シューマン×ヨハネス・ブラームス友情の書簡」(みすず書房)P82-83

クララ・シューマンの評はおそらく的確だ。
セレナーデは彼女が言うように、美しくも心を温める音楽だ。

ブラームス:
・セレナーデ第1番ニ長調作品11
・セレナーデ第2番イ長調作品16
ガリー・ベルティーニ指揮ウィーン交響楽団(1982.5.28-30録音)

ほのぼのとした明朗な音調に支配されるセレナーデ。ここには悲しみはなく、どの瞬間も希望に溢れるものだ。第1番ニ長調は、第1楽章アレグロ・モルトからいかにもブラームス的な重厚感と簡潔で明瞭な旋律に溢れる素敵な曲。白眉は、やっぱり第3楽章アダージョ・ノン・トロッポか。ベルティーニ指揮ウィーン交響楽団の堅実で思念こもる演奏が後押しをする。
そして、クララ・シューマンが気に入ったという第2番イ長調の第1楽章アレグロ・モデラートは、まさにファゴットとクラリネットが加わるシーンに愛情を覚える。勢いのある音調が、耳を刺激し、また心が和む。第2楽章スケルツォ(ヴィヴァーチェ)が何て愉快に弾むのだろう。
実際に彼の創造の秘密を知るにつけ、ブラームスは間違いなくミューズとつながっていたようだ。

アマチュア・ヴァイオリニストであり、音楽ジャーナリストでもあったアーサー・エーブルが、最晩年のブラームスと盟友ヨアヒムにインタビューをした「音楽の霊感の源泉」についての鼎談が実に興味深い。インタビューそのものは1896年秋で、まさにブラームスの亡くなる半年ほど前のことだが、書籍の出版は1955年まで待たざるを得なかったという。それは、ブラームスが同時代の関係者への配慮から自身の死後50年間は出版の差し止めを要求したからで、でっち上げ(?)ではないかと思わせるほど内容はスピリチュアル的で(ヨアヒムの語るテニスンの霊魂不滅論が詳細に語られる)、ブラームスやヨアヒムが霊性や悟性についても通じていたことが明らかにされている。
ヨハネス・ブラームスは言う。

ヘッケルは自分の真理の熱心な探究者と呼んでいるが、原因なしにある結果が起きるのを前提としている。我々は創造の驚異の中に、万事にわたってある一つの結果を見る。それは原因なしでは起こり得ず、我々が神と呼ぶあの力を、私は第一の原因と見る。テニスンの創造についての概念は、ヘッケルよりはるかに科学的に思える。偉大なナザレ人は、まさにこの点を際立たせて描写している。
アーサー・M・エーブル著/吉田幸弘訳「大作曲家が語る音楽の創造と霊感」(出版館ブック・クラブ)P54

ブラームスは着想を得て、それをそのまま音符に移し変えることはせず、相当の時間をかけ推敲を重ね、ようやく出版にこぎつけるタイプの音楽家だが、それでも作品の源泉は神との直接的交流にあるというのだから面白い。

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