ムター カラヤン指揮ベルリン・フィル ブラームス ヴァイオリン協奏曲(1981.9録音)

いつからブックレットに記載されるようになったのかわからないが、昔は録音データが明確に記載されていなかった。とても不思議だ。

ブラームスのヴァイオリン協奏曲については音盤でも実演でもたくさんの演奏を聴いてきたけれど、僕の中で随一はいまだに若きムターがカラヤン指揮ベルリン・フィルと共演した40年前のものだ。何よりムターが自己を主張し過ぎず、音楽的解釈をおそらくカラヤンに全面的に委ね、楽譜に忠実に(恣意なく)伸び伸びと音楽を奏する様子が可憐でありながら堂々としており、実に素晴らしいのである。10代のムターが何と瑞々しい音楽を、喜びに溢れる音楽を奏でることだろう!

手元にあるのは西独プレスの初期盤。残念ながら、擦り切れるほど聴いたアナログ・レコード(初発国内盤)は随分前に手放してしまった。

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1981.9録音)

何より第1楽章アレグロ・ノン・トロッポの雄渾な音楽に言葉がない。特に、ヨアヒムのカデンツァにおける男性的な響き、そこへ、コーダでのオーケストラの女性的な音響がぶつかり一つになる瞬間のカタルシス。この部分を聴くだけで観も心も震えるほどの感動を得られるのだから素敵だ。続く、第2楽章アダージョは巨匠カラヤンの棒の真骨頂。こんなに哀愁を感じさせながら同時に幸福感を覚えさせてくれる演奏は他にない。
そして、終楽章アレグロ・ジョコーソ,マ・ノン・トロッポ・ヴィヴァーチェ—ポコ・ピウ・プレストの外へと開放される交響的音響の妙味。どこをどう切り取っても老練の解釈に舌を巻く。

私の《ヴァイオリン協奏曲》も協奏曲というよりは交響曲だ。

ブラームスは、ヨアヒムにそう語ったそうだが、それに対してヨアヒムはブラームスの主題に関する創意の素晴らしさについて絶賛した。彼の音楽には心から人を感動させる力があるのだと。

ところで、1982年のムター2度目の来日時、僕は大阪フェスティバルホールで彼女の実演を聴いた。外山雄三指揮大阪フィルをバックに、彼女の弾くブラームスに僕は心底感激した。その光景を今も忘れない。

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