“Foreigner” (1977)

あくまで独断だけれど、イアン・マクドナルドはいつも何か中途半端な(?)、覚悟が決まらない生き方を選択しているような気がしてならない。運が悪いのだといえばそれまでだが、自己主張を後押しするだけのリーダーシップに欠けているのかどうなのか、あるいは優し過ぎるのかどうなのか、はたまた器用貧乏なのかどうなのか。

かつて「レッド」発表後、正式にキング・クリムゾンに再加入することになっていたにもかかわらず、ロバート・フリップの突然の解散宣言により、その話もあえなく潰えたわけだが、その件に関して彼は次のように語っている。

僕はアルバム「レッド」で何曲かに参加している。ジョン・ウェットンとビル・ブラッフォードは僕の演奏をとても気に入り、彼らがもう一度僕をバンドに入れたいと考えたんじゃないかな。全米ツアーの時にいてほしい、と。そして彼らの意見がロバートを説き伏せて、僕は再参加することになった。それでロバートから電話がかかってきてUSツアーに来たいか、と聞かれ、僕は一瞬、間を置いた後“ああいいよ”と何も考えずに答えていた。しかしその次に聞いたニュースはロバートがクリムゾンを再び解散させた、というものだった。ジョンとビルはとても落胆したと思う。バンドはちょうど再出発してアメリカや世界で成功する手前にいた、と思うから。僕は、ロバートが当時あのように解散した理由がわからないし、彼の代わりにコメントすることはできないよ。「レッド」は今聴き返しても、とても優れたアルバムだしね。新しいタイプの音を引っさげてバンドが再出発するという気概に溢れていると思う。僕もバンドにまた参加できることを楽しみにしていたけど、実現しなかった。
「ストレンジ・デイズ」2004年3月号(ストレンジ・デイズ)P71-72

「何も考えずに答えていた」というのが彼らしい。
そういえば、ジャイルズ&マクドナルドも、構成力抜群で、かつイアンのマルチ・プレイヤーとしての天才ぶりが光る素敵なアルバムを1枚残しただけでいつの間にか有耶無耶のまま自然消滅(?)した。

ちなみにイアン・マクドナルドは、1976年に結成されたフォリナーのオリジナル・メンバーでもある。ミック・ジョーンズは当時を振り返って次のように言う。

私が真剣にソングライティングに取り組むようになったのはこの時期で、プログレッシヴなアプローチを身につけたんだ。私はジェネシスからも影響を受けてきたし、イアン・マクドナルドは初期フォリナーに実験的な要素を持ち込んできたんだ。
【インタビュー】フォリナー「少しばかり歳は取ったけど、まだ進み続ける」

イアンは、既成のものに新しい息吹を持ち込む立場にあったようだ。それこそが彼の才能であり、数多のメジャー・バンドを形成するための起爆剤的天才だったのだろうと思う。

・Foreigner (1977)

Personnel
Lou Gramm (lead vocals, percussion)
Mick Jones (lead guitar, backing vocals, lead vocals, keyboards)
Ian McDonald (guitar, backing vocals, saxophone, keyboards, flute)
Al Greenwood (keyboards, synthesizer)
Ed Gagliardi (bass guitar, backing vocals)
Dennis Elliott (drums, backing vocals)

珍しくミック・ジョーンズがリード・ヴォーカルをとる”Starrider”、”Woman Oh Woman”が僕好み。当時は産業ロックと揶揄されていたけれど、50余年を経てもフォリナーの音楽は実に輝きを失わない。特に初期フォリナーの魅力は、言葉では言い表せないイアンの実験精神から生まれた、随所に見え隠れするプログレッシブ・サウンドだろう。名盤。

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