「原子心母」でヒーリング

atom_heart_mother.jpgいかにもイギリス的な幻想的で鬱蒼とした音像の中から微かな光の差し込む瞬間の感動がたまらない。少なくとも「Wish You Were Here」の頃までのPink Floydは完璧なバンドであった。Roger Watersがエゴに走り、ほとんどソロ・アルバム的なニュアンスでレコーディングをした「The Wall」などは糞くらえだと思う。ましてや「The Final Cut」はもはやPink Floydの作品とはいえぬくらい「陰」に傾いてしまっている。
バランスを取り戻す、そして本来の自分自身に戻る。Pink Floydが「The Dark Side Of The Moon」という化け物アルバムを残せたのは、Roger Waters, Dave Gilmour, Nick Mason, Rick Wrightという誰一人として欠けてはならない4人が一つになったからであり、The Beatlesが「Abbey Road」や「Sgt. Pepper’s」 という傑作を残したことと全く同じ理由からなのである。こんなことは別に僕が語るまでもなく当然の事実なのだが。

「紳竜の研究」というDVDを観て、紳助のすごさに度肝を抜かれたことは先ほど書いた。付録でついていた1980年頃の「花王名人劇場」や「The MANZAI」でのステージを観ていて、島田紳助だけではあの奇跡は起こりえなかったのではとも感じた。もちろん時代が彼らの後押しをしたことは間違いない。それは紳助自身ももちろんわかっていたことだろうし、何も今更あらためて言及することでもない。
ともかく世に残るもの、認められるものはどんなものでも才能に長けていることとあわせて、バランスが良い。プラスでもなくマイナスでもなく「中庸」。

Pink Floyd:Atom Heart Mother

「原子心母」。一体何のことかと最初は思った。ましてやアルバム・カバーは乳牛である。
しかし、一聴、クラシック音楽一辺倒であった僕の心を鷲掴みにした。当時のLPではA面すべてを使って収められていたタイトル曲。23分である!クラシック音楽ならいざ知らず、ロック音楽なのである。しかもオーケストラをバックに4人が電気音をかき鳴らし、だれることなく聴かせるのである。もちろん40年近くを経た今も十分通用する(「狂気」に比べてやや普遍性に欠けるのは確か・・・。よって少々古びた感はあります)。

ところで、もはやあまり顧みられない楽曲群だと思うが、「原子心母」のB面は何気に佳曲揃いである。Roger Watersの「If」、Rick Wrightの「Summer ’68」、Dave Gilmourの「Fat Old Sun」など全てがアンニュイな雰囲気を持ち、「力まず力を抜いてがんばろう!」という気持ちにさせてくれる。これは「癒し」の音楽。

※現在手持ちのCDの音質は決して良くない。1989年の夏休みにジュネーヴを訪れた際、TorreというCDショップで購入したことがわかる。どうやら27スイスフランだったらしい。日本円にしていくらだったのだろうか?

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アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » 神秘

[…] リック・ライト作”See-Saw”の牧歌的な調べが意外に好き。 ラストのシド・バレット作”Jugband Blues”は名曲だけれど、僕の感覚でもアルバム中異質。これを聴くとシド・バレットが抜けたお蔭で以降のフロイドの方向性が決定づけられ、「原子心母」も「おせっかい」も、そして「狂気」も世に出ることになったということが理解できる。何とも何がどうなってどうなるのか、歴史というのはわからないもの。 とはいえ、こういう人生の分岐点で主人公が別の道を選んでいたら(フロイドの場合はシドが病気にならず辞めずに残っていたら)どうなっていたのかというのはナンセンスな問い。どっちを選んでもフロイドはフロイドだったろうから。その証拠に、シドがグループを去った後初めてのヨーロッパ公演で、初期のフロイド・ファンたちは、完全にグループに背を向けたそう(シド・バレットというのは相当なカリスマ性のある人間だったよう)。 […]

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