1725年、アムステルダムのル・セーヌ社から出版された協奏曲集「和声と創意への試み」作品8。その劈頭を飾るのが「四季」と名のつく有名な協奏曲集だ。もうすぐ300年!!
春がきた。
小鳥たちは嬉しそうに歌い、春に挨拶する。
西風の優しい息吹きに誘われ、泉は優しくつぶやきながら流れはじめる。
すると空が暗くなり、春雷がとどろき、稲妻が光る。
嵐が通りすぎると、小鳥たちは再び美しい調べを楽しそうに歌い出す。
~作曲家別名曲解説ライブラリー21「ヴィヴァルディ」(音楽之友社)P85
楽譜に書き込まれた「春」第1楽章アレグロのソネットの抒情。言葉で補足せずともヴィヴァルディの音楽そのものが僕たちの本来の心の豊かさを表現する。第2楽章ラルゴの安息、そして、第3楽章「田園舞曲」の愉悦は、あらゆるすべての楽曲を凌駕するほどだ。
伝家の宝刀、アーヨを独奏に据えたイ・ムジチの遺産。
重厚な響きは古き良き欧州の薫香漂う、平和な世界の象徴だろう。
そして、気怠い夏の日常を表現する「夏」第1楽章アレグロ・ノン・モルト—アレグロの力強さ。また、第2楽章のアダージョに挟まれたプレスト、第3楽章プレストの宇宙の鳴動のごとくの音響が時空を超えるようで素晴らしい。
宇宙時間でとらえると、収穫の時期となる今はまさに「秋」。「秋」第1楽章の楽譜に書き込まれたソネットは以下の通り。
村人たちは踊りと歌で、
豊かな収穫を喜び、祝う。
バッカスの酒のおかげで座は沸きに沸き、
ついにはみんな眠りこけてしまう。
~同上書P90
何と優しい、美しい旋律の宝庫。
第2楽章アダージョ・モルトの安寧は、心の静けさを喚起する。また第3楽章アレグロの活発さは、勇気を出して行動を起こすことの大切さを教えてくれる。
ちなみに、イ・ムジチ合奏団2度目の録音の白眉は、第4番「冬」だと僕は思う。大地にとってはもちろん、人々にとっても時に猛威を振るう自然現象の必然、大切さを、音楽を通して教えてくれるのだ。第2楽章ラルゴの満ち足りた心の顕現。アーヨのヴァイオリンの醸す潤いは、何という癒しをもたらしてくれるのだろう。録音から60余年を経てもいまだに色褪せない名盤。