Thelonious Monk Septet “Monk’s Music” (1957)

冒頭の(たった4本のホーンだけで奏される)聖歌からモンクの世界に引きずり込まれる。わずか1分にも満たない聖なる祈りの音楽よ。

ブルーム モンクのやつを覚えてるだろ? アルバムのどの曲か忘れたけど、君が(コールマン・)ホーキンスなんかとやったやつだ。
コルトレーン あれか。
ブルーム 君がソロに入るのを忘れて、モンクが「コルトレーン、コルトレーン!」って叫ぶんだ。
コルトレーン (笑)そうだった。
ブルーム 私にとってはそういったものが、偉大な音楽を生み出すっていうか。ミスが生まれる瞬間があるからこそ、素晴らしい瞬間が生まれるんだ。あのホーキンスだって、あの曲ではミスをしてた。
コルトレーン そうだな、まあ(笑)、ああいうのを毎回やるのはお勧めできないけど。頻繁にはやらないほうがいい。
ブルーム もちろん。けど、あれは一例というかさ。
コルトレーン あれは確かに自然発生的だよ、兄弟(笑)。
ブルーム 思うに、君はモンクのプレイに意識を集中してたんじゃないかな。
コルトレーン そうだな。それについて言うと、あれが起きたのは最初の頃だ。彼とはプレイ経験も浅かったから、本当に面食らったよ。(レコーディング中)何度も慌てふためいた。まだ彼のことが分かっていなくて、コード進行とかそういったことに慣れていなかったんだ。ただ、時間とともに慣れていった。慣れたら慣れたで、モンクは本当に得体のしれないことをやってくる。彼とプレイするときは、一瞬たりとも気が抜けない。彼はそういうのが好きなんだ。神経を常に“ビリビリ”尖らせておくのがさ(ブルームが笑う)。モンクとしばらくやっていると、そういうのがだんだん楽しくなってくる。ただ、最初は怖かったな。

(オーガスト・ブルーム ジョン・コルトレーンへのインタヴュー1958年6月15日)
クリス・デヴィート編/小川公貴、金成有希共訳「ジョン・コルトレーン インタヴューズ」(シンコーミュージック)P49-50

ここで言及されるコルトレーンのモンクとのプレイは、”Well, You Needn’t”だ。11分半近くに及ぶ、メンバーそれぞれの長尺のソロをフィーチャーしたいかにもモンクならではの楽曲であり、ハプニングの有様は横に置くとして、実に刺激的なセッションが繰り広げられる。ブルームの言う「ミスが生まれる瞬間があるからこそ、素晴らしい瞬間が生まれる」ということだ。

ちなみに、人・事・物すべての縁を生かせることこそが覚醒の第一歩となるが、ジョン・コルトレーンにおいても偉大なセロニアス・モンクとの出逢いがミュージシャンとしての彼の悟りの第一歩になった。
それにしても後年、コルトレーンはモンク同様「得体のしれないことをやるように」なった。周囲が一瞬たりとも気を抜けないプレイこそが神がかり的な音楽の瞬間を創造するのだろうと思う。

・Thelonious Monk Septet:Monk’s Music (1957)

Personnel
Thelonious Monk (piano)
Ray Copeland (trumpet)
Gigi Gryce (alto saxophone and arrangements)
Coleman Hawkins (tenor saxophone)
John Coltrane (tenor saxophone)
Wilbur Ware (double bass)
Art Blakey (drums)

“Off Minor”におけるコールマン・ホーキンスのテナー独奏が哀愁的で美しい。あるいは”Epistrophy”におけるメンバーのソロ(コルトレーン、コープランド、グライス、ウェア、ブレイキー、ホーキンス、モンク)もさることながら、7人の華麗なる連携が時間とともに熱を帯び、実に音楽的で素晴らしいのだ。

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