Led Zeppelin “Physical Graffiti” Companion Audio (2015)

フライト中、無料のシャンペンでどうしようもなく酔っぱらったボンゾはそのまま眠りに落ち、目を覚ますと寝小便をもらしていた。ファースト・クラスの座席は小便まみれになり、じきにはっきりと悪臭を放ちはじめた。エコノミー席にいたパーソナル・ローディーのミック・ヒントンを呼び寄せたボンゾは、彼のアシスタントがこうした緊急事態に備えて用意していた別のズボンにはき替えた。そしてびしょびしょになったファースト・クラスの席にヒントンを座らせ、自分はローディーのエコノミー席に移った。
クリス・セイルヴィッチ/奥田祐士訳「ジミー・ペイジの真実」(ハーパー・コリンズ)P365

放蕩の限りを尽くしたレッド・ツェッペリンの数々の逸話。
中でもボンゾの悪態は目に余るものがあるが、ここまで俗物でなければ、あれほどの熱量を誇る音楽を生み出せなかったともいえる。ある意味「道の極み」。

(レコーディングで)あそこに行く前からあった。ずっと手をつけていた曲があって、最後にあのリフがついていたんだ。そしたら「待てよ、ぼくが本当にやりたいのはこっちなんじゃないか?」となってね。ぼくは一刻も早くジョン・ボーナムとヘッドリィ・グランジに入って、この曲をやってみたかった。
~同上書P341

傑作「カシミール」は、ボンゾの苛烈で(?)重みのあるドラミングあっての奇蹟だった。

原題を〈ドライヴィング・トゥ・カシミール(Driving to Kashmir)〉というこの曲—ペイジもプラントも、一度も“カシミール”を訪ねたことはなかった—は、ペイジがしばらく前から手をつけていた別の曲を発展させてできた曲だった。
~同上書P341

4人の絆が、阿吽の呼吸が創り出した現代の魔法「カシミール」。ラフ・オーケストラ・ミックスには、もはやこれが永遠の名曲であることをあらためて知らしめる力強さがある。

Led Zeppelin:Physical Graffiti Companion Audio (2015)
-Brandy & Coke (Trampled Under Foot) (Initial Rough Mix)
-Sick Again (Early Version)
-In My Time of Dying (Initial Rough Mix)
-Houses Of The Holy (Rough Mix With Overdubs)
-Everybody Makes It Through (In The Light) (Early Version/In Transit)
-Boogie With Stu (Sunset Sound Mix)
-Driving Through Kashmir (Kashmir) (Rough Orchestra Mix)

Personnel
Robert Plant (vocals, harmonica)
Jimmy Page (electric, acoustic, lap steel and slide guitars, production)
John Paul Jones (bass guitar, mandolin, acoustic guitar, keyboards)
John Bonham (drums, percussion)
Ian Stewart (piano)

アルバム収録諸曲のラフ・ミックスや初期バージョンは、オリジナル盤とは異なる印象、特に荒削りで(?)、新鮮な印象を与えてくれる。リリースから40年を経てペイジがリリースを決断したのは単にお金儲けだけでなく、かつての幻想をもう一度現実に引き戻したかったからではなかったか。フリークたちは、いつもツェッペリンの再結成を望んでいるが、プラントの中にその言葉はもはやない限り永遠にそのときは来ない。

舞台裏におけるペイジとプラントの苦悩や、悪い空気の噂など知ったことではない。そもそもレッド・ツェッペリン時代から、このふたりの仲はさほどうまくいっていなかった。
~同上書P535

うまくいっていなかったからこその、予定調和でない、アウフヘーベンこそがレッド・ツェッペリンの奇蹟だったということだ。

“In The Light”の初期バージョンは、これぞ第一念と言わんばかりの生気に溢れ、新鮮かつマジェスティックな響きに満ちている。

LED ZEPPELINには2つの世界がある。1つはスタジオ・レコーディングの世界、そして、もう1つがライヴ・コンサートの世界だ。最近ではライヴ音源のリリースがあったので、総てのスタジオ・アルバムにコンパニオン・オーディオを追加して世に出せば、スタジオの世界の情報をさらに提供出来ると判っていた。そして、それこそが求められている音なんだ。
(ジミー・ペイジ)
~WPCR-16367/9ライナーノーツ

どんなケースであっても最初の稿には高度なインスピレーションが宿る。ジミー・ペイジ万歳!!

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