人間にしかできないこと

elgar_pieces_for_small_orchestra.jpgどんなに技術が発達しても人間にしかできないことがある。「人を感動させること」である。オーディオ・システムがどれだけ高価なものでも、生音には決して敵わない。それもアマであろうとプロであろうと一生懸命に奏された音楽にはどうしても心を動かされる。昨日、中津川の校長先生が即興で「亡き王女のパヴァーヌ」をフルートで弾かれたのを聴き、心底良かった。目前で生み出される音の連なりは、とにかく腹の底にまで響き渡る。多少の技術的な疵は何のその、とにかく誰かを想って演奏された音楽は力強い。

瑞浪から午後帰宅し、メールの確認や溜まっている事務作業をこなし、気分転換に品川あたりに散歩に出ようかと家を出た。いつもとは違うルートで新宿駅に着くと、山手線ホームで偶然既知の知人にあった。営業に関しては右に出る者はいないとされる方で、前職で学生向けに研修を提供している時、随分お世話になった。もうかれこれ20年以上のつきあいである。ちょうど「営業研修」、それもこれまでにない必ず成果に結びつく画期的な研修をプログラミングしたいと考えており、そういえばと彼のことを思い出していた時だったから、これは決して偶然ではないと直感した。目黒のオフィスに戻るところだということだったので、品川行きを目黒行きに変更し、1時間半ほどお茶をしながら近況を語った。

どんな時代になっても「人の心を動かして物を売る」スタイルは絶対変わらないという信念を彼はもつ。彼の講義を聴いた人は、学生だろうと社会人だろうと皆涙する、それくらいに心を打つ泥臭い研修なのである。その想いの根底には人と人とのつながり、すなわちコミュニケーション力がやっぱりある。確実にコラボレートできそうだ。

ところで、音楽をするという行為もコミュニケーションである。「音」によって癒され、つながることができるのは音も人間も「波動」だから。良い音楽は同じく人の心を動かす。

とはいえ、あまりに洗練され過ぎた音楽、演奏は飽きる。技術ばかりを磨くことに意識が向いたプレイは味気ない。そう、ミスタッチの一切ないライブなど信じられないのだ。演奏者が一個人として聴衆に本気で対峙することで、いわゆる録音では絶対に得ることのできない感動の瞬間が創出される。

エルガー:小オーケストラのための作品集
・弦楽のためのセレナードホ短調作品20
・序奏とアレグロ作品47
・ため息作品70
・弦楽のためのエレジー作品58(パーシー・ヤング編)
・『スペインの貴婦人』組曲からブルレスコ、サラバンド、ブーレ
・ロマンスニ短調作品62
・2つの小品作品15~朝の歌、夜の歌
・『セヴァン川』組曲作品87
サー・ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
クラウス・トゥーネマン(ファゴット)
イ・サロニスティ
エルガー・ハワース指揮グライムソープ・コリアリー・バンド

エルガーの音楽の聴きどころは、貴族趣味でありながらどこか泥臭い、庶民的な響きをもつところにあるように思う。晦渋な中に、信じられないような美しい、誰もがふと口ずさめる旋律が顔を出すところにあるのだ。エルガー生誕150年の2007年にリリースされたシリーズの中から、この室内オーケストラのための作品集などは最たるもの。蒸し暑い初夏に相応しい、暑気払いにもってこいの涼しげな音楽でいっぱい。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>どんなに技術が発達しても人間にしかできないことがある。
>「人を感動させること」である。
>音楽をするという行為もコミュニケーションである。「音」によって癒され、つながることができるのは音も人間も「波動」だから。良い音楽は同じく人の心を動かす。
岡本さん、もう何度か申し上げて参りましたが、そろそろ御自分でも楽器をカジリましょうよ!!(あっ、ビーバーやリスになれってことじゃないですよ・・・笑)
岡本さんほどの音楽に造詣の深い方が、御自分で何も演奏されないなんて、何だか寂しすぎます。タグ・ラグビーをお始めになって、楽器をカジれないはずはないです。音楽の内側に主体的に入ってみて初めてわかることは多いと思います。
宇野功芳さんがあれだけエゴ丸出しの評論をしても、それなりに世間から認められているのは、やはり御自分の指揮や合唱の経験に裏打ちされているからだと思いますし、吉田秀和さんも、昔から御自分で楽譜をピアノで弾いてみたりされておられるのが、その自論の説得力を大きくしています。
野球やサッカーも、コアなファンは、下手でも草野球や草サッカー?で、御自分でのプレー経験がある人が多いです(逆に、プレー経験がないほど、何言っても主張に説得力がない)。将棋や囲碁を自分でやらずにプロの対局や棋譜だけ眺めていても、ちっとも面白くないです。他人がやるチベット体操やヨガを眺めているだけで楽しいですか? 園芸の趣味は、花を愛でるだけでなく、自分で栽培するものです。
音楽も、そこまでお詳しいのならば、そこまで深く入り込まれたのなら、御自分でも何かの楽器に、絶対に触るべきです。あくまでも、ほんの片手間で結構なので・・・。
昨日思いました。岡本さんが演奏されて一番かっこいいというか、サマになる楽器は、ずばりフルートです。ここぞという時にフルートという得意技を披露する岡本さんを想像すると、それはそれはかっこいいです。一生奥様と音楽で共演することも出来ます。スポーツでも、老後夫婦で楽しめるものは最高です。こんなに素晴らしいことはないじゃないですか岡本さん! たとえ御自分は下手でも、音楽への真摯な姿勢で人を充分感動させられるじゃないですか、ゴンザレス三上さんが言われるみたいに!!
岡本さんはピアノじゃなくてフルートが似合う、もう絶対といっていいくらい!! 
岡本さん、そろそろ楽器をカジりましょうよ!(※リピート ビーバーやリスになれってことじゃないですよ・・・笑)
↓岡本さんとフルートの取合せが想像できるCD
『夢のあとに』 パユ(フルート)テラソン(ピアノ)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2575244
※参考資料
http://www2.yamaha.co.jp/u/naruhodo/07flute/flute1.html
御紹介のエルガーの盤、最高です。この記念年は、同じシリーズで、マッケラス指揮の交響曲1番・2番なども買い、こちらもよかったです。
なお、昨日の堀明子さんの詩集連絡先の件、及びレスピーギとロドリーゴについての御教示、感謝しております。ありがとうございました。
 

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
何度もアドバイスいただき恐縮です。
やっぱり楽器演奏ですか・・・。
確かに説得力ないですよね・・・。
>岡本さんが演奏されて一番かっこいいというか、サマになる楽器は、ずばりフルートです。
えー、そうなんですか!!(笑)
しかし、ご紹介のページで構造などみてみると難しそうだなぁ。
まあ、やってみなきゃわかりませんけどね。
しかも「夢のあとに」!!こんなのが弾けたら最高ですね。
>マッケラス指揮の交響曲1番・2番
この音盤は未聴です。良さそうですね。
聴いてみたいと思います。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む