ツィマーマン バーンスタイン指揮ウィーン・フィル ブラームス ピアノ協奏曲第2番(1984.10Live)

録音から40年近く経過するが、この組み合わせの録音は最高の名演奏の一つに数えられると僕は思う。

何より若きクリスティアン・ツィマーマンのフレッシュな感性がブラームスの堅牢で真面目な精神を的確に捉え、何と軽快に、そして明朗に表現された演奏であることか。そして、その音楽を余裕と慈しみ(?)によって大らかに包み込む晩年のバーンスタインの指揮がこれまた重厚でありながら推進力に富み、素晴らしいのである。

・ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品83
クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)
レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1984.10Live)

ウィーンは楽友協会大ホールでのライヴ録音。
映像でもリリースされているが、あえて聴覚にのみ訴えかけ、音に集中して聴くのが僕は好む。第1楽章アレグロ・ノン・トロッポから堂々たる男性的なピアノに対して、ウィーン・フィルの紡ぎ出す音は何と女性的なのだろう。万物生成を見事に顕した壮年のブラームスの大傑作をこれほどまでに生き生きと、そして(男色的)官能を完璧に伝えられる事例はなかなかないのではないか。そんなことをつい思う演奏なのである。

ハイネに「沈む日」という詩がある。

沈む日のひかりは麗し。
されど更にうるわしきは、君が眼のかがやき。
夕映えの紅らみと君が眼と
そは愁わしきわが心に照り入る。

片山敏彦訳「ハイネ詩集」(新潮文庫)P187

目に見る大自然の風景と内なる自身の心象との対比をこれほどまでに巧みに表現した例がほかにあろうか。ブラームスの音楽の特性もそういうところにあるのではないかとふと思った。そして、ツィマーマンもバーンスタインも同様のセンスを持っているのではなかろうか。三者の得も言われぬ相乗効果の粋。

第2楽章アレグロ・アパッショナートの鬱積(?)は、ツィマーマンによって見事に解決され、澄んで美しい。あるいは、第3楽章アンダンテの懐かしさは、音楽に二人の思念が大いにこもっていることを表すものだろう(とにかくツィマーマンの独奏が美しい!)。
終楽章アレグレット・グラツィオーソの圧倒的大団円も聴きもの。

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